【東京五輪後の地方経済を読み解く】(02) 「利鞘縮小の地方銀行、ドミノ再編はいつ始まるのか」――津田倫男氏(『フレイムワークマネジメント』代表)インタビュー

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――2016年2月、長崎県内トップの『十八銀行』が、『ふくおかフィナンシャルグループ』傘下で県内2位の『親和銀行』と2018年4月にも合併するというニュースが、金融業界を揺るがしました。
「これは驚きましたね。十八銀行と親和銀行は、長らくライバルとして長崎県内で凌ぎを削っていた間柄ですから。私は、九州の地銀再編のスピードが一番早いと思います。ただ、この合併が実現すると1行の県内シェアが大きくなり過ぎる為、公正取引委員会が独占禁止法違反の観点から審査しています。公取委が合併を認めるかどうかで、今後の地銀再編がドミノ倒しになるか、流れが大きく変わると言っても過言ではありません。何故なら、他県でも『十八銀行と親和銀行が大丈夫なら当行もできるかも…』と考える地銀が沢山あるからです。県内合併ありとなれば、1位と2位、乃至3位辺りの合併が幾つも起こってくるでしょう。『同じ政府内で金融庁が再編の旗を振っているのに、公取委が合併を認めないのはおかしい』という声もありますし、当然、認める方向でしょう。ただ、公取委の本来の立場から言えば、『独禁法の観点から合併は認められない』と主張するのが筋だと思います。その為、仮に合併が認められても一定の条件を付ける可能性があります。例えば、『県内の店舗が多くなり過ぎるから、幾つか閉鎖しなさい』といったものです。それで、他県の地銀もクリア条件が見えてきます。その意味でも再編に先鞭をつけます。九州では、トップのふくおかFGに追随する西日本シティ銀行を核とした西日本フィナンシャルホールディングス(※2007年4月設立)、積年のライバルであった肥後銀行と鹿児島銀行の合併で誕生した九州フィナンシャルグループ(※2015年10月設立)、山口県1位の山口銀行を核として福岡に北九州銀行を置く山口フィナンシャルグループ(※2006年10月設立)、そして大分銀行その他独立系の5つに勢力が集約されると予想しています」

――2016年9月に発刊した『地方銀行消滅』(朝日新聞出版)では、再編予測をされています。
「初稿を書いたのが5月で、半年経って見立てが少し変わった部分もあります。『地銀・第2地銀の計105行、大手信金も合わせると140ほどある金融機関が、5年後には20~30に再編・統合される』と考えていましたが、地銀全体の動きがとても鈍いので、『5年ではできないかも…』と思い始めました。金融庁も、これまでは持ち株会社の傘下に入れば再編として認める姿勢に見えましたが、2015年7月に金融庁長官となった森信親氏は、厳しい姿勢で地銀再編に臨んでおり、それを看過しないでしょう。今後、持ち株会社の傘下で嵐をやり過ごすのは難しいですし、やはり地銀の数は絞られてくると思います。逸早く動いたのが、東京都民銀行・八千代銀行・新銀行東京を傘下に持つ東京TYフィナンシャルグループ(※2014年10月設立)です。2018年5月に3行を経営統合して東京きらぼしフイナンシャルグループを設立し、銀行名をきらぼし銀行に統一すると2016年8月に発表しました。四国の徳島銀行と香川銀行の持ち株会社であるトモニホールディングス(※2010年4月設立)も、2016年4月に大阪の大正銀行と経営統合し、3行の合併に関して2019年3月末までに判断を下すとしています。一方で、動きが止まって見えるところもあります。例えば、山形県の荘内銀行と秋田県の北都銀行の持ち株会社であるフィデアホールディングス(※2009年10月設立)では、ブランドを統一する話は未だ出ていません。彼らにしてみれば、『“荘内”と“北都”の名前を残すのは、地域にブランドが根付いているからであり、名前が変わると顧客の取引が減るから』という理由のようです。しかし、秋田の人は荘内を、山形の人は北都をよく知っていますし、別の名前になったからといって顧客には何も不便はありませんから、殆どの人が取引を止めるという事態にはならないと思います。また、小さな第2地銀が頑張って、再編に参加しない未来も考えられます。何故なら、“公的資金を受けた銀行が2年赤字続きだと頭取がクビになる”という暗黙のルールがありますが、逆に言えば公的資金を受けていなければクビにならないからです。第2地銀は公的資金を受けていないところもある為、其々が過去の蓄えを吐き出しながら経営すれば、何年かは延命するかもしれません。何より、再編・統合に消極的な銀行の本音は、『ポストが減るから嫌』なのです。私は昔、都市銀行に勤めていましたが、メガバンクの再編でもそれが何度も言われました。3つの銀行が1つになれば当然、頭取も部長も課長も支店長の数も3分の1になります。銀行マンはポストが非常に大事ですから、それが足枷となっている面は否めません」

「また、知見が不足しているという点もあります。どこも同じような町おこしに取り組み、どこか1ヵ所で少しでも成功すれば直ぐに真似したがる自治体と同様に、成功事例を真似ます。例えば、それは経営計画を見れば直ぐにわかります。銀行名を伏せて並べれば、似たような計画が立てられており、どの銀行か見分けがつかないほどです。彼らの言い分は『地域貢献を金融庁から言われて、計画に盛り込まないといけない。とはいえ、できることは限られているから、突飛な計画はできない』というものですが、もっとやれることはある筈です。特に地銀は地元偏重で、基本的には地元の人の意見しか聞きません。私も地銀に対してアドバイスする機会がありますが、『余所者の話は聞かない』という態度を取られることもしばしば。そうした排他性に加えて、例えば『中央の大手の広告や旅行の代理店のような所に意見を聞けば答えが出てくる』という勘違いに走る地銀が多いのも事実です。地元か中央大手かの両極端で、中間層の意見を全く聞かない。実は、そこに面白いアイデアが沢山詰まっていますが、それを掘り起こそうともしません。地元の名士の意見は一応聞きますが、地元で未だ成功していない、でもやる気のある人の話というのは聞きません。我々のような元バンカーの中小コンサルタントも沢山おり、全国の失敗事例も知っていますが、『当行も知っています』という態度です。では何故、今のような体たらくなのか?――それを地銀の人間に問うと、やれ『金利が低い』だの『政策が悪い』だの、遂には『顧客が悪い』という銀行員まで出る始末です。『当行は付加価値のあるサービスを提供しようとしているのに、顧客から“低金利なら何でもいい”と言われる』と。 言い訳もここまでくると、『この人たち、マーケティングを知らないのか?』と思います。更に、議員定数の問題もあります。先日、判決で『3倍程度であれば著しく不公平とは言えない』と下されました。これによれば、都市部の議員1枠に対し、地方は3枠有している訳です。これは民主主義の根幹にも関わりますが、地方が必要以上に力を持っており、地銀も『最後は政治家の先生に言えば守ってくれる』と思っています。こうした問題がある為、5年経っても状況が大きく変わらない可能性があります」

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――再編が進むかどうかは、結局はトップ次第ということでしょうか?
「長崎県の十八銀行でも、役員会で反対意見が凄く出た筈ですが、森拓二郎頭取の力があったからできたのでしょう。早々と見切った点で、とても深い戦略的決断だと思います。肥後銀行と鹿児島銀行の統合にしても、明治維新から150年来のライバルが手を組んだ訳ですから、やはり甲斐隆博・上村基宏両頭取の決断が大きいと思います。地銀だけでなく、信用金庫も早くどこかのグループに入るなりして、旗幟鮮明にしたほうがいいですね。『じっと待って最後に動くのが賢明だ』と考える頭取や理事長もいるでしょうが、拙速でも早い決断をしたほうが勝つと思います。『今の金融機関トップの仕事は合併相手を探すこと』と言っても過言ではありませんし、そのほうが歴史に名を残せると思います。一方で、例えば静岡銀行の中西勝則頭取のように、『うちはどことも合併しない』と方針を鮮明にするのも良いことです。静岡銀行は単体でも十分生き残るでしょうから。他にも合併に否定的な銀行はありますが、ブレない姿勢は良いとしても、どう見ても弱い銀行が単体で行こうとする姿を見ると、本当に5年後しっかり残っているのか疑問です」

――信金再編はどうでしょうか?
「近畿・東海で、例えば京都信金等が京都中央信金と合わせれば、地域の銀行の幾つかより規模が大きくなります。ただ、信金は金融庁(本体)の検査が入らない等、チェックが緩い面があります。検査は財務省地方財務局の管轄になりますが、地方財務局はスタッフも少なく、現場経験も不足していますので、金融庁のようにぎりぎりと切り込むことはしてこないでしょう。勿論、人材交流はありますが、嘗てほど幹部が行き来している訳でもなさそうですから。目下、信金再編の可能性があるとすれば東海地方です。ここは群雄割拠で、岡崎・岐阜等有力な信金が沢山ある一方、名古屋には第2地銀だけで地銀がありません。東海は先ず、第2地銀の愛知銀行・名古屋銀行・中京銀行の3行がどこと手を組むか、或いは組まないのかで流れが変わります。ただ、3行合併は99%ありません。支店が隣接しているところもありますし、大きなリストラが発生して痛みが尋常ではありませんから。何れにせよ、東海財務局の管下で必ず再編が起こりますから、それは地方財務局長の手柄になる筈ですが、今のところ積極的に動く感じはしません」

――インターネット銀行等、新興勢力も出ていますが、影響はあるのでしょうか?
「既存の銀行は、インターネット銀行のインパクトはほぼゼロと見ています。唯一怖いのはゆうちょ銀行です。セブン銀行等は融資まで手を出す気がありませんし、決済に関しても、例えばATMは地銀等が自分たちではコストが嵩んで出せない分をセブン銀行と提携して補完している面もあり、文句は言えない筈です。若し、ゆうちょ銀行に融資業務が認められれば地銀の数十倍規模になりますから、これは脅威です。今でも潜在的に怖い為、銀行は『民業圧迫だ』と声を上げて業務拡大を阻止していますが、金融庁は何れ認めるでしょう。金融庁からすれば、ある意味、ショック療法の面もあります。ゆうちょ銀行に融資を解禁すれば、第2地銀や信用金庫と市場がもろにバッティングする筈で、金融庁の中にはこれを奇貨として、『危機感を持って地域金融機関は改革すればいい』と思っている人が必ずいる筈です。ただ、やり過ぎると全てゆうちょ銀行に持っていかれますから、彼らも今はその匙加減を計っている最中だと思います。 (聞き手/『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 大根田康介)


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