【ここがヘンだよ日本の薬局】(04) 病院前に乱立する薬局…調剤バブル終焉で淘汰の時代へ

大病院の前に軒を連ねている調剤薬局。医薬分業の恩恵を受け、調剤薬局はバブル景気に沸いていた。しかし、今後は閉店に追い込まれる調剤薬局が相次ぐことが予想されている。国の政策で増え続けた薬局は、今後は国の政策で削減されようとしている――。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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2015年4月1日の参議院予算委員会において、安倍晋三首相は「病院の近隣に乱立する調剤薬局の現状に問題意識を持っている」と答弁した。安倍首相が言うように、病院の近くに沢山の薬局が立ち並ぶ風景は、日本中どこでもよく見られる。現在、日本全国に展開する薬局の数は凡そ5万7000軒。その上、薬局以外の医薬品販売業(※ドラッグストアを含む)が2万2000店舗もあり、その市場規模は7兆円に上ると言われている。日本には、コンビニよりも多くの薬局があるのだ。首相の答弁は、こういった乱立する薬局の中で、特に大手調剤薬局チェーンが病院の近隣に矢鱈と店舗を開設して患者を混乱させている現状に、憂慮を示したものだった。しかし何故、このような“門前薬局”が多数出現したのだろうか? 患者の言察と薬の処方を医師が行い、医師の書いた処方箋に基づいて独立した薬剤師が、調剤・薬歴管理・服薬指導を行うことを医薬分業と言う。我が国には元々、医業と薬業とが未分化だった歴史がある。江戸時代の漢方医は“薬師”とも呼ばれ、本草学に基づいた漢方薬を処方するのが主な仕事だった。医者が薬を処方するだけでなく、調剤も行っていたのだ。対して西洋では、歴史的に早い時期から医薬分業が確立していた。これは、「国王等の権力者が医師に毒殺されることを恐れたからだった」と言われている。西洋社会の医薬分業は、12世紀の神聖ローマ皇帝・フリードリヒⅡ世が、病気を診察するか死亡診断書を書く者(医師)と、薬を厳しく管理する者(薬剤師)とを分けたことに由来している。勿論、日本でも、“医”と“薬”を切り離して効率的で適正な薬物療法を進める必要性は、早くから叫ばれていた。しかし、医薬分業以前は、薬を処方することがそのまま医療機関の収入になっていた。『日本医師会』の強硬な反対もあって、我が国では医薬分業が中々進まなかった背景がある。

しかし、流石に医薬分業の必要性は痛感していたようで、1973年に日本医師会は漸く重い腰を上げた。この年に開かれた理事会で、次の2点を決定している。

①技術中心の診療報酬体系への転換。
②再診料を5年以内に100点(1000円)にし、その段階で医薬分業を完全に行う。

こうして、日本医師会が分業容認へと舵を切ったことを受け、厚生省(※現在の厚生労働省)も動き出した。当時は病院内で薬を処方するスタイルが一般的だったのだが、一部の医療機関が薬価差益を出す為に大量に薬を処方する“薬漬け医療”が社会問題化していた。そこで厚生省は、薬価の改定によって差益を引き下げる一方、院外の薬局には調剤報酬を手厚く加算することにしたのだ。1971年に開かれた『中央社会保険医療協議会』は、診療報酬改定で、医師が院外処方箋を発行した際の処方箋料をそれまでの5倍の50点(500円)に、薬局が処方箋を受け取った際の調剤基本料を倍の20点(200円)に引き上げている。利益誘導によって医薬分業を推進させようとしたのである。こうして、“薬剤師100年の悲願”とまで言われていた医薬分業が、法的には実現した。1974年が日本における医薬分業元年と言われる所以だ。患者を診察する医師と、薬を処方する薬剤師の役割が分担されたのは、画期的な出来事だった。医薬分業の実現により、処方される薬がダブルチェックされることによって、医療の安全性が担保されると共に、医療費の抑制が期待された。だが、調剤報酬が引き上げられたことをビジネスチャンスと捉えた多くの企業や個人経営者が参入した。結果、大病院の周りに店舗を構える門前薬局が多数現れたのである。門前薬局は、処方元である医療機関とのコミュニケーションを取り易く、医師の処方傾向を汲み取り易いというメリットがある。処方箋の受け入れという点では極めて効率的だ。しかし、医療機関が発行した処方箋を受託するという業務の性質上、独自サービスやビジネスモデルが見え難い傾向がある。一般に、“ただ薬を出すだけ”が薬剤師の仕事だと捉えられている節がある。業界関係者の中には、「人気のある病院の近くに出店するだけで儲かる。パチンコの景品交換所と同じだ」と言う人もいるほどだ。薬剤師の重要な業務の1つに、“疑義照会”がある。医師から出された処方箋に疑問を感じた場合、薬剤師がその医師に問い合わせて確認することだ。だが、東京理科大学薬学部が2013年に実施した調査によれば、同年に疑義照会が行われた件数は僅か2.75%に過ぎなかった。薬剤師は医師と比べて、弱い立場に立たされることが少なくない。

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「処方箋の内容について問い合わせると、不快感を露わにする医師もいる」という声も未だに根強いし、「下手に医師の機嫌を損ねると、処方箋を貰えなくなるのではないか?」と危惧する向きもある。本来、医師と薬剤師は、共に独立した専門職として患者の薬物療法内容を相互確認し、医療の安全性と質の向上を図るべきなのだが、そうなっていない実情があるのだ。医師・医学博士の狭間研至氏は、「薬剤師が仕事にやり甲斐を感じられない現状にも問題がある」と指摘する。「薬剤師が専門知識を生かした説明をしようとしても、兎に角、薬を受け取って早く帰りたがる患者が多い」とも言うのだ。残念ながら、現状の薬局は、薬剤師が持っているスキルを十全に生かせる環境とは言い難いのである。2016年度の調剤報酬改定によって、病院の近隣にある門前薬局や街中の中小調剤薬局が大きな影響を受けることになった。同年4月からスタートした“かかりつけ薬剤師・薬局制度”(※前回参照)により、国はかかりつけ機能を果たさない病院前の門前薬局の報酬は減らす方針だ。中小調剤薬局には、更なる逆風が吹いている。例えば、大病院の処方箋ばかりを受け付けている門前薬局は、国からの評価が引き下げられている。2014年の調剤報酬改定後、門前薬局によっては処方箋1枚あたりの技術料が400円も下げられているのだ。「1ヵ月の処方箋が2500枚とすると、年間で1200万円も減収することになります。薬剤師2人分の人件費に相当しますので、今後、人手不足や経営が成り立たなくなる薬局が相次ぐでしょうね」(東京都内の薬剤師)。更に、国は“健康サポート薬局構想”を検討しており、2025年までに薬局の数が半減する可能性もある。「国が本腰を入れて薬局の再編に乗り出した」と見ていいだろう。右肩上がりで増え続けた調剤薬局は、まさしく淘汰の時代を迎えようとしているのだ。「国は医療費の効率化を急いでいるので、それに対応できる薬局しか生き残ることはできないでしょうね。これまで“儲け過ぎ”の批判を受けながら、何の改革もしてこなかったツケが回ってきたのかもしれません」(同)。何れにしても、今、全国に乱立している調剤薬局の多くが、重大な岐路に立たされていることは間違いない。


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