【オトナの形を語ろう】(27) 男と女は、つながるように生まれついている

先週号で、飯を一緒に食べる女性、即ち、そんな女もいない男たちに、「当たって砕けろ、手当たり次第に向かって行けばいい」と話した。とはいえ、「その当たって砕ける相手にもどうやって出逢えばいいのかわからない」という読者もいるだろうから、先ずは男と女の出逢いの基本について話そう。男と女が出逢うことは基本もクソも無いのだが、男が女と繋がろうとしている願望は、女が男と繋がりたいという願望と、全くその理由も欲求も同じということだ。春になれば、鳥でも動物でも繋がろうとして、見事に繋がっているだろう? あの繋がり方を見ていると、彼らに何か特別なテクニックがある訳じゃない。私たちが足を交互に前に出せば、自然と歩き出していることと同じで、頭の中で何かを思う以前に、オスとメスは繋がっている。そう、つまり特別なものなど、彼らが繋がることにはありはしないんだ。俗に言う、本能がそうさせているらしい(※“らしい”と書いたのは、本能というものの正体を私は一度も見たことがないし、「本能がそうさせた」と言えばそれで全てが解決するからね。嫌な言葉だ)。オスとメス、男と女は繋がるように生まれついて、身体も精神も作られているということだ。それを前提にして考えれば、繋がらないほうが、おかしいオス・メス・男女ということになる。

それじゃ、これまで一度もそういうことが無かった君が異常で、おかしいということになる。それが結論? な、訳がある筈がない。経験していないことで彼らの全てが異常だと言うなら、イイ歳をして童貞なのは全員おかしいということになる。そうじゃない。童貞のまま死んだ輩は昔から大勢いたし、今もいるんだ。少し話が逸れるが、昔、私の友人にも、30歳を過ぎて女性経験が未だに無い友人がいた。童貞くらいで私たちは友をバカにもしないし、からかうことも無かったが、ある時、その友から打ち明けられた。「実は、俺は未だ女性経験が無いんだ…」「そうなのか?」「別に女性が怖いとか、嫌いな訳じゃない。俺には、自分の童貞を捧げると決めた相手がいるんだ」「ほう、そりゃ中々だナ。それでどうしたんだ?」「その相手が先月、結婚した。俺はもう、ショックで暫く寝込んでしまった。『なら、もう一生童貞でも構わん』とも思ったが、『それも何かつまらないんじゃないか?』と思った。そこで相談だが…。その結婚した相手に『俺の童貞だけ貰っちゃくれまいか?』と打ち明けようと思うんだが、そういうのはおかしいか?」。私は友の顔を見返し、笑った。「やはりおかしいことか?」「いや、それで笑ったんじゃない。そこまで童貞でいて、『お前もやるナ』と思って笑ったんだ」「じゃ、賛成してくれるか?」「勿論だ。やってみろよ」。そうして友は、新婚旅行を終え、スイートホームで暮らしている相手に連絡を入れた。

――で、どうなったかって? 細かい経緯はわからぬが、結論から言うと、その2人は結婚し、今は普通に暮らしている。世の中ではよくあることだ。このエピソードで私がイイナと思うのは、友がその女と出逢ったことを大事にして、ずっとそれを抱えて生きていたことだ。そういう出逢いもあるってことだナ。話が逸れたので戻す。「男と女が出逢うには、ただ外を歩いていればイイ」というのが、私の考えだ。そうして、「この相手には何かがある」と感じたら、その気持ちをぶつけてみなさい。――何故、そんなに簡単に言うかって? それは先週から話しているように、女も繋がることを願望しているからだ。私に言わせると、「女のほうが繋がりたい願望が男より強いんじゃないか?」と思うことがある。「でもそうやってみましたが、皆、ボクを小バカにしたように見て、鼻にも引っかけてくれませんでしたし、その後に感じた屈辱感は半端じゃありませんでした…」。屈辱感だって? 男と女のことで、そんなものを感じるお前さんがおかしいんだよ。男と女のことは日常の出来事と考えなきゃ。断られた時が×なんて思うからだ。△くらいに考えて、「わかっちゃいないな、あの女は。そんな純感な女だったんなら繋がらなくて良かった」くらいに思わないと。×××…と並べる発想より、△△△…軈て○と思ったほうが愉快だし、軈てやって来る○の光がぼんやり見える筈だ。男も女も、繋がるのを望んでいる。それは太古の時代からある、幾つかの絶対の法則なんだから…。 【続く】


伊集院静(いじゅういん・しずか) 本名は西山忠来。作家・作詞家・在日コリアン2世。1950年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業後、『電通』に入社。CMディレクター等を経て、1981年に作家デビュー。『愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない』(集英社)・『大人の男の遊び方』(双葉社)・『無頼のススメ』(新潮新書)等著書多数。近著に『旅人よ どの街で死ぬか。 男の美眺』(集英社)。


キャプチャ  2017年6月12日号掲載




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