【天下の暴論2017】(06) 非核三原則を捨て、北朝鮮との国交回復を

20170606 01
北朝鮮の暴走が止まりません。スパイ映画宛らの金正男氏の暗殺に続き、3月6日には日本の排他的経済水域に向けて弾道ミサイルを複数発射しました。発表された映像からは、所謂コールドローンチ方式という射出後に点火するタイプで、移動式発射台や潜水艦搭載に合わせた技術であることがわかります。昨年秋に実施された5回目の核実験等と合わせて解釈すると、北朝鮮は秘匿性の高い核の運搬能力を得たということであり、核抑止の世界でいうところの第二撃能力を部分的に手にしたということです。第二撃能力とは、(アメリカ等の)核攻撃の後にも核兵器を温存し、報復攻撃を行い得る能力のことを言います。この能力があると、“核保有国は核保有国を攻撃できない”という核抑止が働くということになります。最早、北朝鮮には手出しできなくなるということです。北朝鮮は遂に閾値を超えてしまったのですが、日本ではそうした意識が希薄です。国際社会の反応も日本の反応も、実に緩慢と言わざるを得ません。制裁措置が漸く纏まったものの、中国が提供する“抜け穴”によって効果が上がらないことはわかり切っています。各国政府から厳しい言葉が発せられることはあっても、北朝鮮の暴走を止め得るような実効性を伴う措置は見られません。日本政府は過去15年近くの間、“対話と圧力”を繰り返していますが、最早、意味の無い呪文になってしまっています。日本国民も、北朝鮮の挑発には慣れっこになってしまっているようです。当たり前ですが、対話が無ければ圧力に意味はありません。そして、圧力が無ければ対話の意味も無いのです。現在は対話も圧力も効いていません。日本は、硬軟両面において“極論”に踏み込まなければならない状況にあると思っています。

北朝鮮問題がここまで悪化してしまった理由を探ると、米中の無策に行きつきます。米中が無策であるツケを、北朝鮮リスクの高まりという形で、東アジアの中規模国である日韓が払わされている状況なのです。先ずアメリカについて。2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領が、アメリカ議会で有名な“悪の枢軸”演説をした時、イラク・イラン・北朝鮮が国際社会に与える危険性は比較し得る水準にありました。その後、ブッシュ政権はイラク戦争を戦い、バラク・オバマ政権はイランとの歴史的な核合意を結びました。イラク戦争は泥沼化して大失敗し、イラン合意についても批判が多いのは事実です。ここでは、これらの政策の是非を論じることが主眼ではありませんが、アメリカが事態の改善に注力したことは間違いありません。それに対して、北朝鮮問題は“戦略的忍耐”の名の下に捨て置かれるままでした。政府も国民も、東アジアへの関心が相対的に低いというのがアメリカの現実です。アメリカの同盟国の内、特に韓国がアメリカの強硬策を嫌ってきたという事情はあるにせよ、アメリカの消極姿勢は際立っています。対する中国も、北朝鮮の現状に利益を見出しています。勿論、中国も北朝鮮に手を焼いていない訳ではありません。中国は、何より北朝鮮の崩壊を懸念しています。北朝鮮の崩壊が、大量の難民を生み、アメリカ軍が中朝国境まで迫る事態を招来しかねないからです。他方で、強かな中国は、アメリカに対しては勿論、日本にも韓国にも「中国だけが北朝鮮をコントロールできる」というカードを最大限利用してきました。2002年時点と比較すると一目瞭然です。核問題は開発疑惑に過ぎなかったのに、今では20発程度の弾頭を保有し、第二撃能力を有する歴とした校保有国です。拉致問題については取り合うことさえせず、曲がりなりにも存在した国際的な協議の枠組みも崩壊しています。事態は悪化の一途を辿っており、“時の利益”は北朝鮮側にあると見ざるを得ない状況です。では、どうするか? 硬軟両面で踏み込むとはどういうことか? 基本的には、軍拡と融和を共に進めるということです。現代の日本においては、双方共に大変に不人気な政策となるでしょう。先ず、強硬策の軍拡について見ていくと、敵基地攻撃能力の増強等もありますが、最も重要な点は、蓄積していく危機に対して当事者性を回復することです。日本自身が、核抑止を成立させる為のテーブルに着くということであり、核保有に向けて踏み出すということです。これまでの日本の議論では、この時点で殆ど思考停止してしまうのだけれど、もう少し具体的に検討を進めるべき時にきています。核保有と一言で言っても、色んな形態があります。私が重要であると思うのは、日米同盟と整合的であり、『核拡散防止条約(NPT)』とも整合し得るような方法を取ること。国際的には“核共有”と言われる形態であり、嘗てのイギリスやカナダ、現在のドイツやイタリア等が採用している方法です。核の管理や戦時に使用する際の手順等に一定のバリエーションがあり、歴史的な蓄積があります。日本国内で言えば、“持たず・作らず・持ち込ませず”の非核三原則の内、“持ち込ませず”を撤廃するということです。核兵器の使用に際しては、日本政府の意思を反映させる仕組みを設けることとなります。憲法との整合性は、第9条第2項の“戦力”の解釈論となりますから、整理は必要です。私は「交戦権の否定を規定する憲法第9条第2項は削除すべき」と思っていますから、併せて改正するほうが筋はいいでしょう。

具体的な安保政策として重要なのは、今後、必要となってくるアメリカの核戦力更新についても、日本が当事者性を確保することです。更新費用は1兆ドル(約114兆円)以上とも言われています。核の傘提供の一環として、同盟国のコスト分担を求めてくる場合に、カネだけ出させられるのは回避すべきです。戦後日本の国是と言ってもいい政策を変更する以上、国内外からの妨害について覚悟する必要があるでしょう。隣国が妨害し、或いはアメリカが明示的に反対するようであれば、より自立的な形態の核武装についても模索せざるを得ないからです。私は、これまでもテレビや雑誌で核共有論を展開してきましたが、保守を自任し、国防重視の筈の自民党の代議士までもが一目散に逃げてしまう。それはもう、サーッと引いて行く感じです。問題は、その判断が安全保障の要請に基づくのではなく、国内政治上の経緯に基づくこと。安全保障とは、あらゆる事態を想定し、準備を行うことです。野党を平和ボケと非難し、政権担当能力を云々するならば、自らもあらゆる甘えや思考停止を排さなければいけない筈です。ただ、強硬策一辺倒では問題の解決には繋がらないでしょう。北朝鮮が欲しいのは体制の保証であり、外交の世界においては、それは国交正常化を意味します。勿論、本質的に北朝鮮が恐れているのはアメリカのみですから、日本からの体制保証にどれだけ意味があるかはわからないけれど、アメリカの地域政策は長期的には地域の同盟国の影響を強く受けるものです。日朝の国交正常化の暁には、法的な整理は難しいですが、第2次世界大戦の清算を兼ねた経済協力を行うことになるでしょう。韓国の例を現代に引き直せば、兆円規模になる大きな判断です。北朝鮮は想像を絶するほどの非道な国家です。世界中に麻薬・武器・偽札を振りまき、国内では人権蹂躙の限りを尽くしています。罪無き日本の同胞を、“スパイを養成する為”に拉致し、何十年にも亘って監禁するような国です。経済協力とは、そのような国に日本国民の税金を原資とするカネを渡すことです。果たして、日本国民はそれに耐えられるのか? 左右両方から寄せられる非難に、政権は耐えられるか? 経済協力の前提として、全ての拉致被害者について完全に満足のいく調査と返還が条件となるでしょうが、入り口論に終始するようでは結果は覚束無い。交渉の文脈によっては拉致被害者に被害が及ぶこともあるだろうし、北朝鮮は当然、そういう脅しをかけてくるでしょう。相手はテロ国家なのだから、被害者の身の安全に値段を付けるようなこともしてくる筈です。その時、「毅然と対応します」と言うだけでは、これまでと変わらないし、役に立たないのです。外交とは、時に悪人との取引を要求する後ろ暗い営みです。交渉者は、大きな善の為に悪に加担することを迫られるでしょう。果たして、日本国民は現実主義の交渉をサポートすることができるか? 国是であるところの非核三原則を放棄し、最悪の人権蹂躙国家にカネを渡すという、今の日本にとっては極論でしかない提案を何故に行うのか? その大義は何か? それは、とてもシンプルであり、全面戦争をしない為です。核時代の戦争とは、以上に提案した事態の何倍もの悲劇を生むものです。現在の北朝鮮を巡る事態は、それほどの危機感を持つべきと思っています。「米中が上手く手打ちをしてくれて何とかなる」とは思いません。ドナルド・トランプ政権は国内重視で、世界の問題に対する関心を急速に低下させています。拉致問題への強硬姿勢で国民の信頼を勝ちえ、“戦後”を終わらせることに歴史的意義を見出す政権であればこそ、踏み出すべき時ではないでしょうか? (国際政治学者 三浦瑠麗)


キャプチャ  2017年4月号掲載



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

北朝鮮・軍と政治 新装/塚本勝一【1000円以上送料無料】
価格:1944円(税込、送料無料) (2017/6/5時点)


スポンサーサイト

テーマ : 北朝鮮問題
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR