【動くかトランプ税制】(上) “3%成長”綱渡り

アメリカのドナルド・トランプ政権は、初の予算教書を議会に提出し、約30年ぶりの大型税制改革の審議が本格化する。目指すのは「持続的な3%の経済成長」(合衆国行政管理予算局のミック・マルバニー局長)。ただ、巨額の連邦政府債務を抱えながら、大幅に成長率を引き上げる大規模減税を実現できるのか? “ロシア疑惑”を巡る混乱にも見舞われるトランプ税制を点検する。

20170606 05
「予算案には、トランプ政権の経済政策の全てが詰まっている」――。予算教書を提出した今月23日、マルバニー局長はそう力説した。焦点の大型減税は、①個人所得税の税率を10%・25%・35%の3段階(※現在は7段階、最高税率は39.6%)に簡素化②連邦法人税率は35%から15%に下げ③中小企業の税率も15%――とした。予算教書では、税制改革を軸に、4年後の2021会計年度(2020年10月~2021年9月)以降は安定的に3%成長に導く。アメリカ経済は景気拡大局面が8年近くに達するが、平均成長率は約2%と、戦後の回復局面では最も低い。「3%成長は、嘗ては当たり前だった」。マルバニー局長が言う通り、1980年代・1990年代とも平均成長率は3%を超えた。アメリカの税制は国際的な税率引き下げ競争に出遅れ、企業の海外流出が後を絶たない。トランプ政権は、30年ぶりの大減税で企業の国内投資を後押しし、「偉大なアメリカを取り戻す」(トランプ大統領)考えだ。尤も、成長鈍化の要因は、アメリカ経済の巡航速度である潜在成長率そのものが低下している為だ。アメリカ議会予算局(CBO)は、アメリカの潜在成長率を1.8%とみる。伸びの内訳は、労働力が0.5%、生産性が1.3%。アメリカは人口高齢化で労働力の大幅な伸びは期待できない。3%成長の成否は、生産性の伸びを2.5%超に高められるかにかかっている。

税制で生産性を高めるルートは幾つかある。法人税率の引き下げは企業の国内投資を後押しし、最新技術を用いた設備の普及を期待できる。旧来産業の既得権益となる租税特別措置の整理には、起業や新規参入を増やす効果を見込める。2000年前後のITバブル前は、実際に生産性の伸びが3%近くあった。ただ、金融危機後の生産性の低下は「確たる理由ははっきりわからない」(国際通貨基金の前チーフエコノミストであるオリビエ・ブランシャール氏)。世界貿易の減速等が複雑に絡み合い、インターネットが爆発的に普及した1990年代後半のような生産性の伸びは、簡単には実現できない。その為、民間シンクタンクも3%成長の実現を疑問視する。『タックスポリシーセンター』は、「トランプ氏が選挙戦中に公約した税制改革を実現すれば、初年度は成長率が1.7%上振れする」とみる。ただ、減税効果は徐々に薄まり、6年目以降の成長押し上げ効果はゼロ。減税で投資や消費は一時的に積み上がるが、需要の前倒しに終わるリスクを指摘する。『MUFGユニオンバンク』チーフフィナンシャルエコノミストのクリス・ラプキー氏は、「2018年までに国内総生産(GDP)で2.5%の成長を達成するのは不可能ではないが、企業は既に必要分の設備投資を終えている。更に0.5%上積みするのは、税制改革を以てしても容易でない」と指摘する。別の市場関係者は、「成長率3%の実現には、技術革新が労働者を全て置き換えるぐらいの生産性向上がいる」と悲観的だ。3%成長が続かなければ、トランプ税制は机上の空論で終わる。予算教書では「10年で財政収支が黒字転換する」としたが、高成長で2兆ドルもの税収増を見込んだ為だ。「高成長が不発なら、税収不足で、債務残高は想定の1.5倍のペースで悪化する」との試算もある。トランプ氏は元々、「4%成長を目指す」と公約したが、ひっそりと下方修正した。「現実路線に近付いた」と言えるが、“バラ色”の予測との指摘は尚も絶えない。


⦿日本経済新聞 2017年5月31日付掲載⦿
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