赤字覚悟で8K推進も…新生シャープの中期経営計画、強気ににじむ鴻海の焦り

20170606 11
「現状の実力を考えると、かなり挑戦的な目標だ」――。先月26日、台湾の『鴻海精密工業』の傘下に入って初となる中期経営計画を発表した『シャープ』。同社のある管理職社員は、計画のハードルの高さに驚きを隠さない。無理もない。最終年度の2020年3月期の目標は、売上高で3兆2500億円、営業利益は1500億円。今年3月期に比べ、其々1.6倍、2.4倍の“高み”を狙う。金額ベースで見ても、売上高は過去最高だった2008年3月期(3兆4177億円)、営業利益は2007年3月期(1865億円)並みの水準だ。「有言実行で必ずV字回復する」。シャープの戴正呉社長は会見で、目標達成に自信を見せた。シャープ関係者によると、今回の計画は鴻海主導で策定された模様だ。成長領域と位置付けるのが、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoTとAI(人工知能)を組み合わせた“AIoT”、そして超高精細映像の“8K”の2分野だ。事業を“スマートホーム”・“スマートビジネスソリューション”・“アドバンスディスプレイシステム”・“IoTエレクトロデバイス”の4分野に再編し、AIoTと8Kは其々、事業部門とは別に戦略推進室を設けて、全社横断で事業を拡大していく考えだ。2020年3月期における部門別の売上高目標では、白物家電や太陽電池等のスマートホーム分野が1兆円以上、センサー等のIoTエレクトロデバイス分野が8000億円以上と、共に今年3月期比の約2倍に高める計画だ。「トップダウンで明確なビジョンを掲げて計画実行を目指すのは、鴻海を率いる郭台銘(テリー・ゴウ)董事長の腹心だった戴社長ならでは」(シャープ関係者)と言える。だが、複数の事業領域を抱えるシャープが迅速に各事業を回すには、自社の強みを生かしつつ、競合他社を圧倒する明確な戦略が必要。問題は、その戦略が心許無いところにある。『シティグループ証券』の江沢厚太氏は、「(部材の)調達力等で鴻海流は発揮されているが、シャープとしての自立した成長は未だ描けていない」と手厳しい。例えば、スマートホーム分野。シャープは、オーブンレンジ『ヘルシオ』等独自性のある白物家電を軸に、音声や画像解析等のAIを駆使して、家電とクラウドを連携させるスマート家電を普及させる計画だ。統括する長谷川祥典専務は、「機器だけでなく、サービスやプラットフォームを加えた三位一体でのビジネスを目指す」と話す。

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スマート家電分野の競争は既に始まっている。AIを搭載した音声認識機器は、『Amazon.com』や『Google』等IT大手がスマートフォンの“次”として注力している分野だ。シャープも昨年秋、人の好みを学習しながらエアコン等の家電を操作する家庭用ロボット『ホームアシスタント』を発表した。今年中に発売する計画だが、「世界的に見てシャープに存在感は無いのが現実だ」(国内の電機関連のアナリスト)。シャープがプラットフォームを握れず、彼らの“土俵”の上でインターネット対応家電を提供するだけなら、「下請けに成り下がったパソコンやスマートフォン(スマホ)の二の舞になりかねない」(同)。「鴻海傘下になった早い段階でディスプレーの武器として決めた」(シャープの液晶幹部)8K分野も心許無い。現行のフルハイビジョンの16倍、普及が始まったばかりの4Kの4倍となる解像度が特徴の8K。中計の発表会場では、シャープ製8K液晶パネルと競合他社の4K有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルを並べて、液晶画面が映し出す8K映像の美しさをアピールしてみせた。但し、8K映像は『NHK』が中心となって実用化に向けた実証実験を進めている段階で、国内で本放送が始まるのは来年に入ってから。映像配信でも、『NETFLIX』等大手が打ち出すのは4K止まりだ。シャープは、8Kカメラや映像データ配信のインフラ機器等を通じて、“仲間作り”を先行する考えを示す。「8Kカメラは赤字でも売る」と戴社長は覚悟を示すが、この最先端の映像表示技術がシャープの利益に貢献するのは未だ先であることには変わりない。シャープの8K推進の裏に、“液晶事業の延命策”を感じ取る向きもある。テレビ分野では、足元で4K映像に対応した有機ELテレビが主戦場となりつつあるが、「液晶事業を抱えるシャープが4K有機ELパネルを外部調達するのは難しい」(業界関係者)からだ。強気の目標ばかりが目立つ、具体策に乏しい新生シャープの中計。滲むのは、鴻海の焦りかもしれない。鴻海は、昨年12月期は1991年に上場して以来、初の減収。電子機器の組み立て生産を受託する事業モデルは、中国等新興国の人件費上昇で限界が見えている。だからこそ、鴻海は液晶パネルを抱え、アジアを中心に一定のブランド力があるシャープを、4000億円近い資金を注ぎ込んで傘下に収めた。シャープが成長してくれなければ、鴻海の“次”は無い。だからといって、ビジョンだけでは前進しない。そんな厳しい現実が、新生シャープを待ち受けている。 (取材・文/本誌 庄司容子・佐伯真也)


キャプチャ  2017年6月5日号掲載
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