2017年上半期No.1の大事件『てるみくらぶ』騒動で明らかになった旅行業界の腐り切った実態

格安旅行を提供する『てるみくらぶ』が先日、破産申請をし、涙の会見を行った。多くの旅行者が阿鼻叫喚した騒動だったが、旅行業界はブラック労働を始め、様々な問題を抱えているという。いつ崩壊してもおかしくない業界の裏側とは――。 (取材・文/本誌編集部)

20170606 13
「楽しみにしていたタイ旅行が無くなって愕然としました。振り込んだ5万円はもう戻ってきません。一体、何の為に頑張って節約したのか…」。こう語るのは、東京都内でOLとして働くAさん(28)だ。格安旅行会社として知られる『てるみくらぶ』でツアーを申し込んだのは、今年2月のこと。地元に住む友人と会社の休みを何とか合わせ、4月にバンコクへ行く予定だった。2泊3日の旅行代金は5万円。旅行代金を工面する為、ここ数ヵ月の間、食費や交際費を必死に節約していたという。愈々旅行が来月に迫ったある日、Aさんの元に思いもよらない通知が届く。てるみくらぶが破産を申し立てたのだ。「知らせを受けた直後は正直、信じられませんでした。私の周りにも、てるみくらぶで旅行をした人は何人もいましたし、『有名な企業だから大丈夫だ』と信頼していたんです。それがこんなことになるなんて、腸が煮えくり返る思いです」(同)。てるみくらぶは、1998年に創業したオンライン専門の格安旅行代理店。航空会社から安値で座席を仕入れ、インターネット経由でコストをかけずに座席を販売することで利益を得ていた。昨年9月期の売上高は過去最高の195億円に達し、一見、好調かのように見えた。しかし近年、航空機の小型化が進んだことで余剰座席は減少。更に、『ピーチ』や『ジェットスター』等格安航空会社のニーズが高まったことで、旅行会社を介さずに個人で安い航空チケットを買う消費者が増えた。格安パッケージツアーを想定通りに販売できなくなったてるみくらぶは、巻き返しを図るべく、新聞広告等宣伝費に多額の資金を投じるが、それが裏目に出る。資金繰りが追いつかず、業績はみるみる悪化。その結果、今回の破産に至ったとされる。

「てるみくらぶが危ないというのは去年夏の時点で聞いていたので、『遂に来たか』という感じでしたね」。そう語るのは、某旅行会社『Z』の元社員であるBさん(30)。Zは、全国に支店を持つ業界大手。大手の中でも自由度の高いツアーが多く、大学生等の若い世代から支持を集め、国内・海外の様々なツアーを提供している。「私は都内の支店に勤務していたのですが、そこに来店したお客様から、てるみくらぶの悪口を散々聞かされていたんです。特に担当者の対応が最悪だったらしく、何を聞いてもレスポンスが遅い。『渡航直前まで不安だった』と言っていました」(同)。しかし、Bさん曰く、「担当者のレスポンスが遅いのは、てるみくらぶに限った話ではない筈」という。というのも、旅行会社はどこも人手不足。その反面、上層部は売り上げに執着する為、社員1人ひとりに大きな重圧がかかっている。「私が勤めていたZは、毎日の残業は当たり前。定時は20時ですが、大体深夜0時まで残って仕事をしていました。でも、その内の42時間はみなし残業とされるので、残業代は出ません」(同)。真面目に残業を熟していたBさんだったが、ある日、上司から思いがけない言葉を告げられる。「『“残業時間が多過ぎる”と本社から指摘された。今後は、先に勤怠をつけてから残業するように』と…」(同)。度々労働問題が取り沙汰されるこのご時世に、面と向かってサービス残業を言いつけられたBさんは、唖然とする他なかった。「退職した今になって振り返ると、『あの時、文句の1つも言えばよかった』と思うのですが、当時は忙しさで思考が麻痺していたんでしょうね。『はい、わかりました』と言うしかありませんでした」(同)。更に、Zでは朝方勤務、所謂“朝残業”の習慣もあり、本来10時始業のところ、毎朝1時間早い9時に出勤することが義務付けられていた。勿論、朝であろうと残業代は出ない。「月に1~2日は休日出勤もしていましたね。繁忙期には、休日出勤が月6日なんてこともザラです。これも残業代はつきません。全部を合計すると、月に100時間以上残業している社員も少なくありませんでした。当然、皆、疲労困憊です。私自身、沢山のお客様の対応に追われて、常にパニック状態でした」(同)。だが、問題は労働時間だけではない。Bさんが何よりも恐れたのは、上層部からの圧力だった。「仕事で1つでもミスしようものなら、上司からの厳しい叱責が待っています。業務が多過ぎて手が回らないのは言い訳にはなりません。『能力が足りないからだ』と言われて終わり。業務内容が改善されないから、またミスが出て怒られるの繰り返し。本当に最悪でした」(同)。そんなある日、Bさんは客に、本来のツアー代金よりも安い金額を提示するというミスを犯してしまう。上司に報告すれば、また怒られる。悩んだBさんは、親しい先輩に相談した。すると、「足りない分は皆、自分で補填しているんだよ」と驚くべきアドバイスをされた。「私が知らなかっただけで、自腹で補填するのは皆、普通にやっているみたいな感じでした。結局、私も自腹を切って補填することに決めました」(同)。只でさえ少ない給料が更に削られたのは、言うまでもない。

20170606 14
Z同様、鉄道系の某有名旅行会社『Q』の元社員であるCさん(29)も、旅行業界のブラックな実態を語る。「私は一昨年までQで働いていましたが、当時、何よりも怖かったのは、一度成約した旅行がキャンセルになることでした。キャンセルのことを社内では“黄色”と呼んでいて、この黄色が多いと上司から物凄く怒られるんです。キャンセルするのはお客様の部合な訳だから、激怒されても…って感じでした」(Cさん)。黄色が多いことを理由に、理不尽に叱責されたことを同僚にこぼしたCさん。すると、思いがけない“裏ワザ”を伝授される。「社内のシステムを操作して、キャンセルされた旅行が然もキャンセルされていないように見せる裏ワザがあることを教えてもらったんです。この裏ワザのおかげで、上司に怒られることがすっかり無くなりました」(同)。この裏ワザは、ごく一部の社員だけが知っている極秘中の極秘。更に、社内システムを操作するのは、既に退職が決まっている社員という絶対のルールがある。会社を辞めて、社員IDが無くなると同時に、システム操作をしたという痕跡が消えるのだ。「若しバレても、操作したのは辞めた社員、若しくはもうすぐ辞める社員なので、他の社員にダメージはありません。私も、退職を申し出たタイミングで、この裏ワザを遂行する役割を引き継ぎました」(同)。その為、実際にはどのくらい旅行が成立したのかわからない。「これで会社が潰れないといいけど」と思いながらも、「日々の膨大な仕事に追われ、それどころではなかった」とCさんは振り返る。

旅行業界の闇は下請け企業にも広がっている。ツアーの添乗員の派遣会社に勤めるDさん(30)は、年間200日は海外にいるという多忙な日々を送る。「私の所属する派遣会社は、各旅行会社からの依頼を受けてツアーに同行するという形です。仕事は楽しいですよ。やり甲斐もあるし。海外に行くのが好きな人とか、接客業が好きな人は、ツアコンの仕事はぴったりだと思います」(Dさん)。その一方で、離職率も中々高い職種だという。「早い人は2ヵ月で辞めますね。ツアコンって接客業なんですよ。30人くらいの人たちとコミュニケーションを取りながら、ツアーを進行していかなきゃいけない。人件費削減の為、1つのツアーにつき、同行する添乗員は1人です。現地でのトラブルにも全て1人で対応しなきゃいけないので、過酷と言えば過酷。それを乗り越えられない人は、あっという間に辞めていきます」(同)。Dさんも、これまでに幾つものトラブルに遭遇してきた。「現地でパスポートを紛失する人は結構いますね。最近だと、中国ツアーの時です。お客様の1人がトイレにバッグを置き忘れてしまって、慌てて戻ったらもう既にバッグはありませんでした」(同)。客からは「何とか最後までツアーに同行させてほしい」とせがまれたが、パスポートを紛失したまま旅行をするのは不可能。「可哀想でしたが、他のツアー客もいる中で、添乗員がどうにかするのは無理なんです。なので、現地でアシスタントを1人雇って対応してもらいました。残念ながら、そのお客様は皆と一緒に帰国できず、後日、1人で帰ってきました」(同)。また、空港でのトラブルも多いという。「アメリカでは、乗り換える度に必ず入国審査をしないといけないのですが、場所によってはそれが物凄く混んでいることがあるんです。そのせいで、ツアー全員が乗り換えの飛行機に乗り遅れてしまったことがあります」(同)。幸運にも次の便で全員分の座席が確保できた為、何とか現地まで到着することができたが、客からは責め立てられ、散々だったと話す。更に、時間が大幅に遅れた為、ツアー行程を減らす等、更なる対応が必要になり、Dさんは通常の倍以上の業務を熟した。「添乗員付きのツアーに参加されるのは、殆どがシニア層の方です。旅慣れたお客様も多いので、『ここはこうしたほうがいいんじゃないの?』と意地悪な口出しをされることも沢山あります。洗礼みたいなものなんですけど、それに耐えられなかった新人が何人も辞めていくのを見ました」(同)。無事に現地に着いても、ゆっくりしている時間は無い。観光地ではガイドの役割を務め、ホテルに戻っても次の日の行程を最終確認。深夜でも、客に何かあれば24時間体制で応じなければならない。

20170606 15
「拘束時間は24時間です。1つのツアーで4日から1週間くらい。当然、その間にお休みはありません。これだけの業務があるにも拘わらず、日給8500円スタートとかですから、薄給もいいところですよね」(同)。更に、ツアー中はどんなに疲れていようと、ツアー客の機嫌を損ねるようなことがあってはならない。ツアー客の満足度が、Dさんたち添乗員の次の仕事の重要な足がかりとなるのだ。「ツアー終了後、旅の内容に関するアンケートをお願いするのですが、その中に添乗員への査定も含まれているんです。添乗員の満足度が95%以上ないとダメ。それを下回ると、発注元の旅行会社から即、切られます。といっても、最初のうちは営業さんが取りなしてくれて、挽回するチャンスも与えられるのですが、何度も95%を下回ると本当の本当にクビです」(同)。どの旅行会社も、リピーターの確保に必死。会社の評価を落とすような使えない添乗員は不要なのだ。「様々な旅行会社から依頼を受けてきましたが、傍から見て、どこも大変そうという印象ですね。人気の無いツアーも沢山あるので、どうにか催行最少人数を集めようと必死みたいです。蓄えのあるシニア層をターゲットにしたパンフレットや新聞広告を出す会社が増えています」(同)。しかし、件のてるみくらぶも、集客の為に広告宣伝費に大枚を叩いた結果、破産した。順調そうに見える旅行会社であっても、その裏でどんな経営問題が発生しているかはわからない。「安い旅行には、それなりの理由がある」と肝に銘じておくべきだろう。


キャプチャ  2017年6月号掲載


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

労基署は見ている。 (日経プレミアシリーズ) [ 原 論 ]
価格:918円(税込、送料無料) (2017/6/6時点)



スポンサーサイト

テーマ : ブラック企業
ジャンル : 就職・お仕事

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR