【解を探しに】第2部・引き算の世界(04) 公務員、ハコモノ削減説く

20170607 09
神奈川県秦野市役所に、ハコモノ削減の“伝道師”がいる。「“やらない理由”を挙げさせたら、公務員の右に出る職業はありません」。今年2月、愛知県内であった公共施設削減に関する研修会。講師の志村高志さん(51・右画像)が集まった自治体職員を前に言い放つと、戸惑い交じりの乾いた笑いが広がった。会場の微妙な空気を気にも留めず、志村さんの口調は熱を帯びる。「図書館が1冊貸すのにかかる税金は1500円」「全ての施設を維持すれば破綻する」――。志村さんの肩書は“公共施設改革担当課長”。秦野市は新たな施設を造らず、2050年までに3割削る方針を打ち出した。その旗振り役を担う。施設の適正な配置を考え、具体的な削減策を考える。志村さんが役所に入った1987年は、バブル経済のピーク。ハコモノ行政が幅を利かせていた。如何に多くの予算を獲得し、豪華な施設を建てるかが、行政マンの腕の見せどころだった。志村さん自身、「嘗ては『施設を増やすことが市民サービスだ』と思っていた」。30年近く経った現在、そんな行動原理は通用しなくなっている。高度成長期以降に自治体が競って建てた市民ホールや公民館等が今、一斉に朽ち始めた。

総務省の調査では、築30年を過ぎた老朽公共施設は全国で4割を超す。一方、日本の人口は下降線を辿り始めた。負の遺産が人々の生活を直撃する。青森県黒石市のある市立中学校は、学内の合唱コンクールの為、約400人の生徒が隣町のホールまでバスで出向く。元々、市内の市民文化会館で開いていたが、財政難で休館している。バス代数十万円はPTA持ち。「保護者も諦めムードだ」と学校関係者は溜め息を吐く。黒石市は過大な公共投資で借金が積もり、“第2の夕張”と言われた。「バブル期のハコモノ投資さえなければ…」。財政課長の鈴木正人さん(54)は天を仰ぐ。公共政策に詳しい東洋大学の根本祐二教授は、「省インフラは社会の前提条件だ。子供や孫までの持続可能性を考えて、行政も市民も取り組むべきだ」と訴える。志村さんの下には、危機感を持ち始めた各地の自治体からの講演依頼が相次ぎ、“秦野詣で”も盛んだ。静岡県浜松市や千葉県習志野市等が同じような取り組みを進めている。その秦野市。1日の利用者が3人という小さな児童館を巡り、志村さんと児童福祉の担当者が対立した。統廃合を主張する志村さんに対し、担当者は強く反発した。担当者曰く、「3人にはかけがえのない居場所だ」。志村さんも、相手が子供たちのことを真剣に考えていることを知っている。「だいぶ敵が増えたなぁ…」。ぼやく言葉に疲れが滲んだ。


⦿日本経済新聞 2016年4月15日付掲載⦿
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