【動くかトランプ税制】(中) 法人税15%、試練の道

20170607 10
「主要国で最も高い法人税率を、低税率国並みに下げる」。ドナルド・トランプ大統領は選挙戦で、「連邦法人税率を35%から15%に下げる」と公約して、番狂わせの勝利に繋げた。3%の経済成長の実現には、長年放置された企業税制の見直しが欠かせず、“法人税の国境調整”や海外資金の還流税制等、見逃せない論点がある。「数兆ドルの海外滞留資金には1回のみ課税する」。今年4月下旬、スティーブン・ムニューシン財務長官らが発表した税制改革の基本方針には、法人税率の引き下げと共に重要な制度改正案を盛り込んだ。日本やヨーロッパの企業税制では、海外子会社からの配当には原則として課税しない。一方で、アメリカは“全世界課税方式”を採用。アメリカ企業が海外子会社の資金をアメリカ本国に戻すと、35%の連邦法人税(※海外での納税分は控除)が課される。『Apple』等は、その課税を嫌って海外の低税率国に資金を貯め込んでおり、「アメリカ国内の投資や雇用を下押ししている」と指摘されてきた。Appleの海外滞留資金は2000億ドル規模とされ、アメリカ企業全体では2兆ドルを超す。トランプ政権は、企業が“納税猶予”してきたこの巨額資金に1回のみ課税する一方、“全世界課税方式”を廃止して先行きは資金還流を非課税にする考えだ。

アメリカでは、ジョージ・W・ブッシュ政権下の2005年に、時限立法で資金還流の税率を5.25%に下げたことがある。同年は海外からの資金還流が、前年比3.7倍に急増。トランプ税制が実現すれば、大量の海外資金がアメリカに戻り、IT企業を中心にM&A(合併・買収)等が再び活発になる可能性がある。市場では、「2005年のようなドル高要因になる」と意識されている。アメリカの税制は、議会に立案・決定権がある。共和党議会指導部が検討してきた“法人税の国境調整”は、トランプ政権が「消費者が打撃を受ける」(ムニューシン財務長官)と否定的で、見送りの可能性が強まっている。法人税の国境調整は、輸入原材料を費用控除することを認めず課税し、逆に輸出品は課税を免除する仕組みだ。アメリカ企業は輸出競争力が強まる一方で、日本車等は大幅な値上がりとなり、「自動車の対米輸出が半減する」との試算もあった。議会共和党が国境調整を検討してきたのは、輸出を後押しする為だけではない。輸入課税の強化によって、10年で1兆ドル超の税収増が見込めたからだ。健全財政を求めるアメリカ議会は、「税制改革は歳入中立が求められる」(上院のミッチ・マコネル院内総務)との意見が根強い。アメリカは、法人税率を1%下げれば10年で1000億ドルの税収減となる。国境調整の見送りで新たに1兆ドルの税収確保が必要になれば、法人税率の決着点は15%ではなく25%程度に留まる可能性がある。トランプ大統領の言う“低税率国並み”の税率下げは難しくなりそうだ。トランプ大統領が模す“レーガノミクス”では、1981年の税制改革で設備投資減税等を盛り込んだが、産業間の不公平感が広がって、1986年には租税特別措置(租特)を大幅に減らした。大企業からベンチャー優遇に舵を切ったことが、アメリカの起業力を高めたとされる。トランプ税制も租特の見直しが隠れた焦点だ。法人税率の引き下げはバラク・オバマ前政権も繰り返し提唱し、民主党にも一定の支持勢力がある。ただ、民主党左派は海外資金の課税強化を主張する等、各論では意見が割れる。30年ぶりに動き出した企業税制改革の成否は、細部に宿る。


⦿日本経済新聞 2017年6月2日付掲載⦿
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