政権発足から4年以上経っても改憲の芽は出ず…ポピュリスト安倍晋三の“政略的”改憲論に苛立つ読売新聞

20170608 02
官庁や企業の元トップたちが、情勢に疎くならないように現役の政界事情通からオフレコで裏話を聞く会合は、東京を中心に幾つもある。半年前、そんな集まりの1つに、ゲストスピーカーとして招かれた『読売新聞』の某編集幹部が、こんな話をした。「安倍首相とはほぼ定期的に会食してきて、もう10回以上になると思いますが、実はこの間、一度も総理から憲法の話を聞いたことがありません。水を向けても一向に話は弾まない。直ぐ別の話題に移ってしまう。世間では、『総理と頻繁に会食するマスコミ人は権力に取り込まれている。一体何を話しているのか、自分の媒体できちんと報道しろ』という意見がよくありますね。尤もなようだが、本当は報道に値する実のある話はあまりしていないんで(笑)、難しい。それでも、やっぱり知りたい方は少なくないから、今日は本当のことを言っちゃいますが、総理が夢中で話すのは、半分以上が野党議員の悪口。国会で時々キレることがありますね。あれを延々喋っている。だから報道できないんですね(笑)」。新聞として初めて独自の本格的な改憲草案を纏め、渡邉恒雄代表取締役主筆を先頭に、全社一丸となって改憲の世論作りをリードしてきた同紙幹部にしては砕けた内幕話だが、当然、こうして噂が広まるのを見込んだ放談だったに違いない。“安倍応援団”と見られている読売だが、本音では安倍政治に一杯不満がある。それでも目を瞑り、「史上稀な長期1強時代を活かすに如くはない」と我慢するのは、究極の目標に改憲があるからだ。しかし、期待の政権も4年が過ぎ、“予定”任期の折り返し点を迎え、政権のエネルギーや先の政治日程を見通すと、果たして改憲まで辿り着けるのか怪しくなってきた。

「“静かな環境での合意形成”だか“熟柿戦術”だか知らないが、安倍首相は『何が何でも自分の手で改憲を成し遂げよう』という執念が本当にあるのか? 野党の悪口なんか言っている暇があったら、政治生命を賭けて勝負に出てみたらどうなんだ?」――そうハッパをかけたい苛立ちは、安倍首相にもしっかり伝わっていただろう。憲法施行70年の先月3日、安倍首相が読売の単独インタビューと『日本会議』系改憲集会へのビデオメッセージで、2020年の改憲施行という“期限”を唐突に宣言した。改憲派メディアが「待ってました」とばかりに囃し立てたのは心情的にわからなくもないが、内輪で勝手に盛り上がっているように見えて、改憲を支持する者でもシラケて遠巻きにする気分は拭い難い。安倍首相の改憲宣言には、発表のサプライズだけでなく、内容にも色々驚かされる。安倍首相は、「改憲が悲願」と精神論はぶっても、憲法のどこを、何故、どう変えたいのか説明したことは殆ど無い。初めは改正手続きの96条について、「改憲発議の要件を衆参各院の3分の2以上から2分の1以上に緩めよう」と言い出し、“裏口改憲”と呆れられて引っ込めた。本丸の9条については、安保法制を正攻法の改憲ではなく、強引な解釈変更で押し切り、首相自身、昨年の今頃に「9条改正は難しい」と認めていた。ところが今回、自民党内でも議論したことのないという“9条3項新設案”を持ち出し、年内の取り纏めを指示した。こうした変遷を、普通は“迷走”という。気を取り直して中身を知ると、更に拍子抜けする。9条の構成は、1項の“戦争放棄”に2項の“戦力不保持・交戦権否認”。だが、以上をそのまま残し、3項“自衛隊設置を妨げない”とか何とか書くというのだ。正統的な自主憲法制定論は、「一人前の国家たるもの、自前の軍隊を持つのが当然。侵略はしないが、軍を軍と認めないのは誤魔化しだ。寧ろ、正規軍と位置付けてこそ、文民統制も緊張感をもって機能する」という主張である。だから、2項削除や自民党草案のように、“国防軍”創設を目指す。然るに、“安倍改憲”は「そんな堅苦しいこと言わなくてもいいじゃない」という“お手軽論”である。1項・2項は国民に定着しているから手を付けない。あとは、国際貢献と災害救助で国民に認知されるに至った自衛隊の存在を書き加えれば、それでお終い――。戦後憲法論議の文脈に当て嵌めると、護憲派が9条を死守しながら現実追認で自衛隊合憲に宗旨替えしたようなもの。これが“安倍改憲”の正体だったのか? 原則論者の石破茂元幹事長が憤慨するのも無理はない。

20170608 03
それにしても、読売や産経は本当にこれで構わないのだろうか? 中曽根康弘元首相は心底賛成しているのか? 岸信介元首相が存命だったら、これで満足するだろうか? 何の関係もない東京オリンピック・パラリンピックの開催年を目指すノリといい、「教育費全面無償化(※バラマキ政策)も書き込んでしまおう」という臆面の無さといい、ポピュリズム(※俗受け最優先)政治の面目躍如だが、憲法すら「新商品のキャンペーンセールかアイドルグループの人気投票擬きの徹底したマーケティング感覚でやっつけてしまおう」という割り切りは、安倍政治の手法が行き着くところへ行き着いた究極形と言えるかもしれない。確かに、この提言は政局向けにはよく練られている。9条“加憲”は、古くは公明党、近年は民進党の保守派が検討した案に近い。連立与党を抱き込み、野党第一党へ楔を打ち込む一石二鳥の技だ。教育無償化は日本維新の会へのシグナルなので、こちらも改憲派勢力を広げ、野党連携を分断する効果を期待できる。自民党総裁選睨みでは、国防軍を主張する石破氏を右へ、9条不変を明言する岸田文雄外務大臣を左へ其々押しやり、安倍首相は柄にもなく真ん中の多数派を押さえる強かさだ。憲法論としては下作、政略論としては上策――。如何にもあざとい。それにしても、この使い分けは何を意味しているか? 提言は政局の求心力維持が狙いで、「改憲まで辿り着けば幸運、実現しないならそれも良し」という開き直りであろう。安倍政治、恐るべし。


キャプチャ  2017年6月号掲載




スポンサーサイト

テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR