【ビジネスとしての自衛隊】(04) 指揮官たちの出世競争…最終ゴールは3人の幕僚長

20170608 08
自衛隊の幹部は、外部の人が想像するより遥かに忙しい。巨大な組織を動かす為の事務作業が沢山あるからだ。その度合いは、陸・海・空の幕僚監部等中枢に近付くほど増す。厳格な階級社会の階段を上る為には、軍人としての素養に加えて、行政能力が必要となる。また、高級幹部や指揮官には国際法等の知識や語学力も求められる。厳しい競争を勝ち抜いて将になるのは、どんな人材か。人数が一番多い陸自を例に説明しよう。出世双六の出発点は『防衛大学校』。学生は大まかにいって、文系2割・理系8割である。艦船や航空機を扱う海自・空自は勿論、陸自でも特科(砲兵)・施設科(工兵)等、理系の職場は多いからだ。「その割に、将官には文系が多い。偉くなるほど書類の作成能力が問われるからではないか?」(陸自佐官)。防大生は、教官によって2年次で陸・海・空に振り分けられ、卒業後は其々の幹部候補生学校に進む。3尉(少尉)に任官する時に専門を決めるが、陸自の場合は普通科(歩兵)が最大勢力。同期の3割程度を占め、将になる比率は高い。陸自で人気があるのは航空科(ヘリコプターパイロット)だが、ここから将が出る比率は低いという。「普通科では、小隊長時代から部下のマネジメントに当たる。航空科だと、自分の技量を上げるのに精一杯。そうした経験の差が出ている」(同)。

初級幹部としての実力がつくと、次は幹部学校の指揮幕僚課程(CCS)という関門が待っている。旧軍の陸軍大学校に相当する。ここでは、連隊規模の部隊指揮官や、司令部の幕僚(参謀)となる為の教育を受ける。受験回数は4回に制限されており、入校できるのは幹部候補生学校同期の3割前後という狭き門だ。陸自の場合は、指揮幕僚課程出身者には1佐までの昇任が保証される。これは、他の官庁で言えば課長の一歩手前で、それ故に「CGS修了は国家公務員Ⅰ種に準じる」という評価もある。幹部学校での成績は公表されないが、その後の昇進スピードで凡その見当がつく。因みに、海自ではCGSに当たる課程を出ることが然程重視されない。「ペーパーワークが如何に優秀な幹部でも、操艦や艦隊指揮の能力は海に出れば歴然としてしまうから。空自は陸自以上に学校の成績重視かもしれない」(別の陸自佐官)。その後もエリート街道を歩むには、何をおいても市ヶ谷の陸幕に行くことだ。積極的な若手は、CGS在学中から「“幕”に行きたい」とアピールする。その後は1~2年程度の間隔で、部隊勤務と陸幕を往復しながら昇進していく。特に、陸幕では深夜まで激務が続くので、メンタル失調者も珍しくない。その間も、1年に一度は3000m走等の体力検定をクリアせねばならず、心身ともタフでないと勤まらない仕事だ。そうした競争を勝ち抜いた人材は、幹部高級課程や防衛研究所一般課程で学ぶ。これらは将官への登竜門だ。アメリカ軍の教育機関への留学や、防衛駐在官(駐在武官)として海外で働く機会もある。ここまで行けば将補が見えてくる。旧軍で言えば少将。“閣下”と呼ばれる身分だ。会社で言えば執行役員か。だが、将補になってしまうと不利な面もある。1佐で定年(※56歳)を迎えた場合、若年定年退職者給付金が1000万円出る。ところが、若し将補に昇進していて、同じ56歳で勇退を迫られた場合は、これが出ない。出世を目指すなら将にならないと報われないかもしれない。抑々、市ヶ谷で深夜まで酷使される人は、幹部の中でも少数派。殆どの幹部は、地方の駐屯地で定時動務をしている。敢えて将を目指す過酷なレースに加わらず、2佐止まりの“現場派”を選ぶ向きも多い。


キャプチャ  2017年5月13日号掲載
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