【誰の味方でもありません】(05) 呪いの番組、占いの検査キット

『ワイドナショー』(フジテレビ系)は“呪いの番組”だと言われている。乙武洋匡・堀潤・清原和博等、番組出演者が次々とスキャンダルに巻き込まれていくというのだ。今だから言ってもいいと思うが、去年の春、安倍首相がワイドナショーに出演した際も、まさにその話題になった。「ワイドナショーが呪いの番組と言われているが、安倍さん大丈夫ですか?」とスタジオは盛り上がり、無事、収録は終わった。4月14日夕方のことである。勘のいい人は、この日付で気付いたかも知れない。収録のあった日の夜、熊本地方で最大震度7を記録する大地震が起こってしまったのだ。その日のうちに官邸対策室が設置されたが、16日にも14日の規模を上回る本震に見舞われ、暫く安倍首相は地震対策に追われた。まさに“ワイドナショーの呪い”が実現してしまった形だ。当然、放送では“呪い”部分はカットされていた。勿論、只の偶然だろう。多くの著名人が週替わりで出演する番組だから、関係者が次々にスキャンダルに見舞われるのは、確率的に何ら不思議ではない。人は偶然に法則性を見つけ、それを勝手に“呪い”だと認識してしまうのだ。呪いは、それを信じた瞬間から発動するのである。その意味で、遺伝子検査を受けるなんて、自ら進んで呪いにかかりに行っているようなものだと思う。

病院で実施される正式な検査と違い、最近では簡易な遺伝子検査が流行している。値段は数千円から数万円くらい。唾液を郵送するだけで、癌等の病気に罹る確率、太り易さ、長寿かどうかまでが記載された検査結果が届く。しかし、市販の検査キットの結果を鵜呑みにしないほうがいい。未だ研究途上の分野の為、信頼性に乏しく、特に日本人の遺伝子サンプルは少ないからだ。また、病気や寿命は遺伝要因だけではなく、生活習慣等の環境要因も大きく影響することがわかっている。その意味で、遺伝子検査キットは医学的な診断というよりも占いに近い。“遺伝子”という尤もらしい仕掛けを用いて、「癌に確り易く長生きできない」なんて言われたら、「気にするな」というほうが無理だ。検査結果が本当かどうかは関係ない。それを気にした時点で呪いは始まっているのである。しかし、遺伝子検査キットなんて使わなくても、他人に呪いをかける方法がある。例えば、貴方が嫌いな人がいたとしよう。その人に会う度に、「大丈夫ですか? 体調悪くないですか? 顔色悪いですよ」と伝えてみよう。端から見れば、他者を気遣う心優しき人間だ。しかし、繰り返し他人から“顔色が悪い”と言われると、いらぬ心配をしてしまうもの。結果、呪いが効き、本当に体調を崩してしまうという仕組みだ。逆に、貴方の顔色を執拗に気にしてくる人がいたら、気をつけたほうがいい。その人は、貴方に呪いをかけようとしているのかもしれない。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。


キャプチャ  2017年6月8日号掲載
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