【大機小機】 トランプ氏の弱音

現実と仮想の区別がつかなくなった訳ではあるまい。アメリカのドナルド・トランプ大統領が、大統領選を巡る捜査指揮等を理由に、『連邦捜査局(FBI)』長官を突然解任した。自らが司会者だった人気テレビ番組『アプレンティス』の決め台詞は、「お前はクビだ!」だった。テレビのバラエティーを政治の世界に持ち込むかのような感覚に、世界中が唖然とした。事態を看過できないと見た司法省は、ホワイトハウスにお伺いを立てることなく、元FBI長官のロバート・モラー氏を特別検察官に任命したという。議会は近く、解任されたジェームズ・コミー前長官を召喚し、証言を求める。トランプ大統領が発した大統領令は裁判所が差し止め、議会が同意しない法案は成立の目処が立たない。アメリカが世界に誇る“三権分立”は、ギリギリのところで機能しているように見える。だが、機能すればするほど国家意思の統一は遅れ、民主主義のコストが膨らむジレンマに陥る。ミサイル発射実験を北朝鮮が繰り返す中、腰定まらぬアメリカの現状は日本にとって悩ましい。「思考停止型のアメリカ追従では最早立ちいかない」ということか、安倍晋三首相は自民党総裁として、憲法9条の改正という剛速球を投げ込んできた。歴史に名を残したい野心は当然あるだろうが、安全保障環境の激変は無視できない。野党のように条件反射的に“護憲”を叫ぶだけでいいのか、多くの国民に迷いが生じているようだ。一方で、市場関係者の間で最近目立つのは、“トランプ政権投げ出し待望論”である。先月27日の『ロイター通信』のインタビューで、トランプ大統領は「以前の生活は良かったよ」「(大統領職は)もっと簡単だと思っていた」「車の運転ができないのは寂しい。小さな繭の中で守られ、どこにも行けない」等と語っている。表向き冗舌で攻撃的な指導者が、内心に弱さと脆さを抱えることを、我々は経験的に知っている。万一、大統領退陣となれば、アメリカ法によりマイク・ペンス副大統領が職務を引き継ぐ。「そのほうがいいよね」。永田町・霞が関周辺でも公然と語られる。当初、財政支出拡大等を理由に“トランプラリー”に沸いた市場は、気紛れなリアリストだ。今度は“トランプ退陣相場”を囃し始めるかもしれない。 (三剣)


⦿日本経済新聞 2017年5月26日付掲載⦿
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