2017年も“凶作”のオンパレード! “忖度”の春ドラマをメッタ斬り!

今期も安直な設定ばかり。警視庁のエリートと所轄の刑事、初恋の男との不倫に走る新妻と狂気の夫、人造人間と少女の切ない恋…。「お偉いさんの意向を忖度しつつ、筋を考えてみました」って? 制作の皆さん、今井舞の激辛レビューを読んで勉強し直して下さい。

20170609 13
俳優・女優にソッポを向かれ、フジテレビ苦境のシンボルマークと化した月9。「社運を賭けて立て直す」。態々そう宣言して制作されたのが、今期の『貴族探偵』(フジテレビ系・月曜21時)。主人公は、『嵐』の相葉雅紀演じる謎の“貴族”。殺人現場に現れては、自らは何もせず、執事の松重豊、運転手の滝藤賢一、メイドの中山美穂ら使用人が、捜査と推理を代わりに行う。全員、『東京ディズニーランド』のキャストみたいな衣装を着て。あれ、番宣用のコスプレなのかと思いきや、本編もこれを着てずっとやるらしい。うーん。前に織田裕二で似たような設定のドラマがあったけど。“浮き世離れした貴族”を演じるのに、苦肉の策で被り物みたいなとってつけたキャラクターを演じていたが。しかし今回、相葉はキャラすら被らず。いつものあの滑舌・あの棒読みで、「私ですか、そうですねぇ、こころあるひとからは、こうよばれています、きぞくたんてい、と」(※原文ママ)と、包み隠さず大根フルスロットル! 脇には他に、武井咲・井川遙・生瀬勝久・仲間由紀恵等も揃え、“豪華”を謳うが、ただ集めただけ。仲間由紀恵なんて“スマホの音声ガイドの声役”だもんなぁ。松重豊も、どんな作品にも誠を捧げる役者の背中が、前期のドラマ『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)の劇中劇に見えてくる。「フジにはお世話になったし、ジャニーズ事務所とはこれからもやっていくし、ここは1回、皆で泣いとくか。皆でやれば責任も軽くなるし」――。“内容を面白くすること”には全く力を注がず、社運を賭けて忖度を強いる。フジテレビの悪いところが全部出ている象徴的作品。

フジのダメのバリエーションの広がりは更に。『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系・木曜22時)。女子力ゼロのモテない理系の女性研究員たちが一念発起! 服装やメイクやコミュニケーション力を磨いて、キラキラ生活を目指す…というコメディーらしいのだが。乏しい知識で服やコスメを色々試しては失敗、インターネットから得た知識で何とか修正という内容は、ドラマというより情報番組に近い気が。主人公の桐谷美玲は、眼鏡をかけて猫背にしただけで強引に“地味で冴えないブス”となり、水川あさみは“昭和のオバサン”、話題の女芸人・ブルゾンちえみは“デブ”。そして“理系女子=地味”と、人物も設定も物凄く記号的。仕事の描写は一切無く、研究室でいつも3人、インターネットを覗いては、“男は揺れるものに弱い”なんて情報に振り回され、ポニーテールにイヤリングして、頭をゆさゆさ揺らしている。こうした安直な羅列が延々と。このイージーさ、情報番組というより“まとめサイト”に近いかも。「若しもまとめサイトがドラマになったら…」。まとめサイトというものの、俗っぽく頭悪い感じも含めて、まさにこんな感じだろう。不要なジャンルが、また1つ構築されてしまった。誘拐された最愛の1人息子と奇跡の再会を果たした母・沢尻エリカを通し、「母性とは何か?」を描く『母になる』(日本テレビ系・水曜22時)。幼稚園に通う息子が失踪し、捜索が行われる緊迫したシーンからスタート。子を失う親の苦悩が描かれるのかと思いきや、そこから急に夫・藤木直人との馴れ初めに話が飛び、交際・結婚・出産と、まるで『ゼクシィ』のテレビCMみたいなホンワカ話が延々続く。予想していた展開とかなり違う上、幼稚園前で子供が拉致されたのに防犯カメラも無し、園児が行方不明になってもおゆうぎ会が行われていたり、失踪後も家の中は綺麗で、沢尻も藤木もこざっぱりした身形をしている等々、“子供失踪”を描くにはリアリティーが欠如し過ぎで、話に身が入らない。また、幼稚園時代を演じる子役の下手さたるや。今時、もっと巧い子一杯いるだろうに。「ぼくー、ママのこと、いとしいだぁよぅ、いとしいだぁよぅ」の抑揚の無さ。失踪後、「『子供のいない人生もいいな』とちょっとでも思った私のせい」と慟哭する沢尻の姿に、若い母親の心の襞が見えただけに、もう少し力のある子役で丁寧に絆を描いてほしかった。話は急に9年後となり、児童養護施設からの連絡で子供の無事を知らされる沢尻。誘拐事件の子供が9年後に発見されたというのに、何と全く警察の介入無しで話が進行。えぇーっ。「9年間、一体どうしていたの?」という当たり前の疑問もうやむやのまま、「ぼく、ゲーム欲しいな」という中学生になった息子(※ジャニーズの若手。この子も棒読み。子役はここに合わせたか?)と楽しく過ごす様子が綴られる。実は、拉致された部屋の隣に住んでいた小池栄子が、子供を横取りする形でこれまで育て、「これから、知らないおばさんがいきなりあなたの前に現れて、“お母さん”と名乗ると思うけど、優しくしてあげなさい。いい子にして待ってて。ママは必ず迎えに行きます」という手紙を秘密裏に送り、少年はその指示通り動いていたという衝撃の展開となるのだが…。リアリティーの欠如をサイコなパワーで圧倒できるか? 物語の今後は、小池栄子の狂気に託された。

「一度きりの人生、誰と結ばれるのが本当の幸せなのか?」をテーマに、既婚者同士の恋を描く『あなたのことはそれほど』(TBSテレビ系・火曜22時)。主人公の波瑠は、“2番目に好きな人”という東出昌大と結婚。平穏な生活を送っていたが、ずっと思い続けていた同級生と偶然再会。お互い既婚者だが、惹かれ合い、密会するように。こういう不倫ものの群像劇というのは、大それた事件が起こる訳でもなく、誰が善で誰が悪ということもなく、登場人物たちの日常に潜む心の動きに、「あー、わかるぅ」と感情移入できる作りにするのが何より肝要だと思うのだが…。波瑠は「兎に角、初恋の人が忘れられない」だけの、何だか掴みどころの無いキャラクターだし、東出も嫁の寝言に男の影を見た途端、突然、サイコパス化という急変に戸惑うばかり。波瑠の不倫相手の鈴木伸之も、忘れられない王子様というよりは、久々に会った女を直ぐホテルに連れ込む軽いノリが間男感強し。これから背徳行為に一緒に身を窶していかなきゃいけないところなのに、登場人物に誰一人興味が湧かず、共感するところまで到達できない。今後、不倫相手の妻・仲里依紗が加わり、話はどんどん泥沼化していくようだが。うーん。波瑠の肉感のポテンシャルの無さと、“目を見開く”というワンパターンな演技でしか狂気を紡げない東出の演技の拙さに、ハマれる予感ゼロ。用意された泥沼を前に、出港未定の状態が続きそうだ。『半沢直樹』の夢よ、もう一度。『小さな巨人』(TBSテレビ系·日曜21時)。半沢直樹だけでなく、できれば『シン・ゴジラ』(東宝)も。主演の長谷川博己のセリフ回しの滑舌や、大勢を俯瞰で捉えたカメラワーク、香川照之の敵役のデジャブ感等、兎に角、「色んな夢よ、もう一度!」の肖り精神が散見される作品である。一度のミスで道を絶たれた元エリートの警察官・長谷川が、飛ばされた現場で叩き上げの苦労を味わい、上層部の腐敗へと立ち向かっていくという筋書きなのだが…。うーむ。警察内部の軋轢って色んなドラマでよく見るし。絡む事件の発生や解決法が何だかご都合主義だし。何より長谷川のキャラクターが、エリート寄りなのか叩き上げ寄りなのか今ひとつ伝わって来ず、その言動に「いよっ、待ってました!」の爽快感が伴わない。「これ、どっかで見たな」という二番煎じに、人は食いつかない。“ノーモア肖り”。今後のTBS日曜夜の訓戒にしてもらいたい。

“アクションあり〼”の張り紙の下、小栗旬や西島秀俊がハードボイルドに暴れる『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系・火曜21時)。筋運びや暗めの映像が『MOZU』(TBSテレビ系)や『SP』(フジテレビ系)を彷彿とさせ、実際、無骨な西島の役柄もMOZUそのまんまの印象。しかし、このドラマはもっと根本的なところが、あるものとかぶっている。それは、アメリカのドラマ『ブラックリスト』(NBCテレビ系)。世界を股にかける犯罪コンシェルジュが、国家も把握していない凶悪犯罪者たちの情報を提供、『連邦捜査局(FBI)』の極秘チームと連携し、次々と予想外の犯罪を摘発していくというスリリングな人気作。こんなドラマ、スケールといい力量といい、日本では先ず無理だろう。しかし、ドラマ作りに携わる人間なら、一度見たら「こういうのやりたい!」と血が滾ること必至。日本でブラックリスト的な話をやるには、どうすれば。スポンサー・芸能事務所・BPO等々を考慮すると、犯罪者が主人公というのは×。だから、“公安の中に作られた極秘チーム”を描くという設定に。チーム本部の隠し方、情報分析の見せ方、特殊車両のバンの内装、公園のベンチや教会の礼拝堂の使い方、事件が終わった後のムーディーな時間、長塚京三の饒舌なキャラクター。あぁ…。本来ならば、本作に浮かぶ数々のブラックリストの片鱗は、誰にも気付かれない筈だった。ブラックリストみたいなドラマが好きな人は、日本の地上波、先ず見ないから。点を線にしちゃって何だか申し訳ない。タイトルは何かの比喩なのかと思いきや、本当に主人公が人造人間だった『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系・日曜22時30分)。人に触れられない孤独な人造人間という設定に、映画『シザーハンズ』(20世紀フォックス)的な切ない恋物語を想像していたのだが…。120年も人間と交わらず生きてきた綾野剛と、ヒロインの二階堂ふみが、森で出会っていきなり「僕は人間じゃないんです」「私は科学者なので貴男のことを知りたいです」。二階堂はそのままズカズカと綾野の家に上がり込み、その足で自分の家に連れ帰り、大学にも連れて行き、先輩の家に住み込みで働かせる。綾野と二階堂に接点を作る為だけのデリカシー皆無の雑過ぎる筋運びに、「人造人間さえ出しときゃ切ない恋物語になるだろう」というイージーな目論見が透けて鼻白む。この展開で視聴者が感情移入できるか、切なさを感じられるか、納得できないところはないか…。ちょっと客観視して検証すれば、こんなツルツルな話にはならないと思うのだが。ラストに流れる主題歌が切ない分、物語とリンクしないのが残念でならない。結局、視聴者のことを考えて制作された作品には巡り会えなかった今春。局と芸能事務所と広告代理店以外に、視聴者のことも偶には忖度して作ってくれや。


キャプチャ  2017年5月4日・11日号掲載




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