【ここがヘンだよ日本の薬局】(05) 福井県は危機状態? 薬局・薬剤師の地域格差

“1票の格差”とはよく耳にするが、調剤薬局の世界にも格差が存在する。都道府県によって、人口10万人あたりの薬局数・薬剤師数に差が生じているのだ。また、薬剤師の年収にも格差が判明。意外にも、都市部の薬剤師は年収が低めだという。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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今、薬局を巡る世界には、大きなパラダイムシフトが起きている。厚生労働省が発表した統計によれば、2014年度時点で全国の薬局数は5万7784店舗で、前年度より713店舗増えている。また、5年前と比べると、日本中で4000店舗以上の薬局が増加した計算になる。全体として小規模店舗が乱立している状態にあり、大手調剤チェーンや大手ドラッグストアのシェアはトップ企業で僅か2.3%である。上位10社でもシェアは14%程度で、全体の70%を個人経営等の中小薬局が占めている。全国的に薬局店舗数が増えているということは、医薬分業が進んでいる証左の1つだ。日本全体の医薬分業率は、2014年時点で68.7%に達したとされている。しかし、80%を超えている地域がある一方で、30~40%台というところも未だある。分業率が低い地域を中心に、新たな薬局が進出しているというのが現況と言える。都道府県別に人口10万人あたりの薬局数を見てみると、最も多い佐賀県が63.8店舗、次いで山口県の58.5店舗、広島県の57.4店舗という順位になっている。逆に、全国で最も薬局数の割合が少ないのは、福井県の35.7店舗、奈良県の37.5店鋪、埼玉県・千葉県・京都府の37.7店舗。地域によって、薬局数にはかなりの偏りがある。次に、薬剤師の人数を見てみよう。厚労省のデータによれば、2014年度時点の薬剤師数は全国で28万8151人。これは薬剤師としての届出があった人数だけなので、届出をしていない“隠れ薬剤師”まで含めれば、恐らく実数は30万人をゆうに超えると推測されている。その内、薬局で働く薬剤師は半数の15万人ほど。

また、人口10万人あたりの薬剤師数を都道府県別に見ると、最も多い東京都が162.5人、次いで神奈川県の152.2人、兵庫県の150.4人となっている。逆に、最も少ないのは福井県の91.5人で、次いで沖縄県の93.1人、奈良県の96.1人等が、他県と比較すると薬剤師が少なめの自治体ということになる。首都圏や関西圏等では薬剤師が充足しているが、地方では不足気味という傾向が見て取れる。ただ、このデータはあくまでも人口10万人に対する薬剤師人数を示したものであり、仕事内容を反映している訳ではない。地域によって住人の年齢構成も異なるし、疾患を抱えている患者の数も違う。地方の過疎地域等では、都市部と比べて高齢者比率が高い為、人口10万人に対する薬剤師数が他県と比べて多くても、薬剤師1人が1日に扱う処方箋枚数が多いところもある。年収面はどうだろう。2015年に厚労省が『平成26年賃金構造基本統計調査』として、職種・性別・都道府県毎の“決まって支給する現金給与額、所定内給与額、年間賞与その他の特別給与額”を公表したが、それを見ると、薬剤師の全国平均年収は530万円。2013年に国税局が発表したサラリーマンの平均年収は409万円だから、100万円以上の開きがある。また、薬剤師の年収は地方によって大きな格差があり、以前から「都市部よりも地方のほうが年収が高い」と言われていたが、都道府県別では最も高い静岡県が660万円。以下、群馬県が613万円、広島県の609万円と続いている。逆に、最も低いのは岡山県の427万円だ。薬剤師の給与が首都圏よりも地方のほうが高い理由は、薬局数と患者数の需給バランスによる。ある転職サイトの調査によれば、薬剤師の年収600万円以上の求人割合は、大都市圏では33%程度だったが、地方では60%近かったという。特に高齢者が多く、薬剤師が少ない地域では、慢性的に薬剤師が足りていない。人手不足を補う為、高条件で求人を出しているのだ。ただ、単純に地方に就職さえすれば高収入が保証されるという訳でもないらしい。高年収を打ち出している薬局の殆どは、その地方にのみ店舗を展開している薬局である。全国一律にチェーン展開している薬局なら、年収は基本的に一律だからだ。では、このような薬局・薬剤師の地域による偏りは今後、是正されていく可能性はあるのだろうか? 先に述べたように、薬局そのものの数は増えているが、薬局を経営する企業数そのものは減少傾向にある。『日本M&Aセンター』によれば、他社へ譲渡された薬局数は2012年に42店だったのが、2014年には251店へと急増したという。ある中堅薬局チェーンでM&Aを担当する責任者は、次のように語る。「全国にある薬局の内、約2万店は後継者がいない為に廃業か身売りかの選択を迫られています。恐らく、今後は1万店ほどの薬局がM&Aの対象になるでしょうね」。中小薬局の身売りは、これまでも珍しいことではなかった。そういった身売りの理由の多くは、「近接していた病院が移転か廃業した」というものだった。ところが最近は、経営体力のある中堅クラスの薬局やドラッグストアに経営を委ねるスタイルのM&Aが目立ってきている。

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2016年10月には、調剤薬局経営の草分け的存在である『水野薬局』が『日本調剤』に買収された。老舗でありながらITにも強く、直近3年間の経常利益は毎年黒字を計上していた為、「経営体力に不安は少ない」と考えられていた。その矢先の身売り劇は、業界で話題を呼んだ。買収対象になるのは、年商が数億円で店舗数が5~10店ほど、従業員が40人程度の地場チェーンが多いそうで、そのような薬局は全国に2000社ほどあると言われている。薬局業界は元々、零細企業の集まり。これも、他業種からの参入を招き易くしている一因だろう。調剤偏重の経営方針も、今後の薬局湖淘汰に拍車をかけそうだ。厚労省が毎年6月に実施している『医療経済実態調査』によれば、薬局の収益の内、99.8%が保険調剤によって占められている。薬局の大多数が収益の殆どを調剤報酬に依存していることがわかる。だが、処方箋枚数の減少や超高齢社会の到来によって、患者自身が自分の足で通院することが難しくなれば、調剤重視の門前薬局は次第に廃れていく筈だ。只でさえ、薬局の調剤医療費には国民の厳しい視線が向けられている昨今である。費用対効果が今以上に問われることになるだろう。同時に、地域医療への貢献も問われることになれば、今後の薬局は調剤一辺倒ではやっていけなくなる。OTC薬やサプリメントの取り扱い、更には在宅医療や介護、予防や未病対策としての健康管理機能がより強く求められる筈である。軈ては昔ながらの街の薬局が姿を消し、多くは大手チェーンに変貌していくことだろう。全国の薬局は大淘汰の渦中にある。


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