【崩壊する物流業界】(15) ライバルとも手を組め! 加速する“共同物流”

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「トラックドライバーが足りなくなる恐れがある。物流コストも上昇傾向にあり、我々を取り巻く環境は非常に厳しい」――。『味の素』物流企画部の堀尾仁部長は、危機感を露わにする。ドライバー不足にどう対応するかは、企業にとって喫緊の課題になっている。各社が知恵を絞る中、1つの答えとして動き始めたのが“共同物流”だ。味の素・『カゴメ』・『日清オイリオグループ』・『日清フーズ』・『ハウス食品グループ本社』・『ミツカン』の食品メーカー6社は、『F-LINE』と称したプロジェクトを始動。昨年4月から、北海道で共同物流を展開している(※左図)。其々の生産拠点から、北海道にある味の素の物流子会社が管理する拠点に在庫を集約し、そこから納品先に同じトラックで届ける仕組みだ。日清フーズ・ミツカン・ハウス食品・味の素は、生産拠点から北海道への輸送も共同で行っている。効果は覿面だ。昨年5~7月の3ヵ月で、配送件数は16%減った。10トン以上の大型車を使う比率が上がり、中型の4トン車の台数を約1000台減らせたという。共同物流の実現は簡単なものではなかった。実際、構想から開始まで約2年の歳月を要している。其々の会社が個別に物流網を構築してきた為、独自のやり方を持つ。最たるものが納品書で、サイズや複写校数等各社バラバラだった。F-LINEでは、荷受者が発注番号・品番・品名等の情報を確認し易いように納品書を共通化したが、当初は自分たちのやり方を変えることに反発する会社があった。他にも、共同配送のルールや納品手順等の共有化、営業部門と連携した顧客との納品時間の調整等、1つひとつの細かい作業を、大企案6社の足並みが揃うように実行していかなければならない。空中分解する恐れもあったが、各社が粘り強く取り組んだのは「トップダウンの指示で行われていたことが非常に大きい」(堀尾部長)。このままでは物が運べない――。そんな緊急事態に、各社とも直面した経験がある。2014年4月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の影響で、2013年末と増税直前の2014年3月にトラックの手配が困難を極めた。それ以前から各社首脳は物流に対する問題意識を共有しており、2014年春から本腰を入れて検討を始めた。F-LINEは食品業界全体を巻き込もうと動いている。昨年5月には『食品物流未来推進(SBM)会議』を発足させた。

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メンバーには、F-LINE6社に『キッコーマン』と『キユーピー』が加わり、製造・配送・販売の連携に向けた課題や、F-LINEの活動内容の共有等を進める。「食品企業物流プラットフォームを構築する」というのがF-LINEの目的だ。味の素・カゴメ・日清フーズ・ハウス食品の4社は今年3月、F-LINEが策定した物流戦略を実現する為の合弁会社を発足させる。九州にも合弁会社を作って、2018年に共同物流を始める予定だ。全国への展開も検討しており、2019年には物流子会社の統合も視野に入れる。F-LINEが台風の目になって、食品業界の物流再編が一気に動き出すかもしれない。「ビール業界はアンハイザーブッシュインベブ(ベルギー)が世界シェア3割を握る等、グローバルでの競争が激しい。国内で無益な消耗戦をしている場合ではない」。そう語るのは、『アサヒビール』物流システム部の児玉徹夫部長だ。ビール業界では、シェア1位のアサヒと2位の『キリンビール』が物流で協業する。今年1月から石川への共同配送を開始し、秋には富山でも始める予定だ。2社は北陸に工場を持たず、石川と富山へはアサヒが名古屋の工場から、キリンは滋賀と名古屋の工場から其々直送していた。ただ、配送距離が凡そ200~300㎞と長く、「将来的にドライバー不足で運べなくなる懸念が生じていた」と『キリングループロジスティクス』の戸叶弘常務執行役員は話す。そこで、両社でタッグを組み、鉄道輸送に切り替える決断をしたのだ(※右図)。実は、両社は2011年から首都圏での小口配送を共同で行っている。ただ、「その時は現場からの要請だった。今回はトップ同士の協議からスタートした」(戸叶常務)。“競争と協調”が両社の掲げるキーワードだ。今回の取り組みには画期的な点がある。中距離の輸送で鉄道を使うことだ。鉄道輸送は500㎞以上運ばないと採算が悪いとされる。両社は元々、名古屋工場から北陸への鉄道輸送を考えていたが、既存の便には空きが無く、新たに自分たちでコンテナ等を準備する必要があり、採算が合わなかった。『JR貨物』と『日本通運』の協力を得て検討した結果、関西発北陸行きの鉄道コンテナに空きがあった。驚くのは、それに合わせてアサヒは吹田工場に、キリンは神戸工場に北陸向け製品の供給拠点を切り替えたこと。製品はそこからJR貨物の『吹田貨物ターミナル』に持ち込まれ、『金沢貨物ターミナル』まで輸送。日本通運の『専光寺物流センター』で一旦保管される。専光寺で在庫を持つことで、鉄道のダイヤが乱れて納入先へ製品が届かないリスクを抑えているのだ。

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もう1つのポイントは、「今回の取り組みで言えば、(目先の)物流コストは若干上がっている」(アサヒの児玉部長)こと。コスト削減に繋がらなければ意味が無いように見えるが、「今後、トラック輸送のコストは間違いなく上がる。将来を見据えて先に手を打ったことに意義がある」(同)。物流分野での協業の動きは、アサヒとキリンに限った話ではない。前述した2011年からの首都圏での小口配送には、『サッポロビール』も参加している。ドライバー不足、国内ビール市場の縮小が叫ばれる中、競争と協調の動きが加速するのは間違いない。同業だけでなく、異業種の共同物流も動き出している。流通大手の『イオン』とトイレタリー大手の『花王』は、昨年からトラックの中継輸送を始めた。イオンの物流拠点である『関東RDC』を出発したトラックは、静岡県牧之原市の中継地点で花王の豊橋工場を出たトラックと荷物を交換する。受け取った花王の荷物を神奈川の『川崎LC(ロジスティクスセンター)』に届け、そこでイオン向けの荷物を積み、関東RDCに戻る。一方、静岡でイオンの荷物を受け取ったトラックは、三重の『中部RDC』に運んだ後、花王の原料供給元に立ち寄って荷物を積み、豊橋工場に届ける(※左図)。従来、イオンのドライバーは関東RDCから中部RDCまで、花王のドライバーは豊橋工場から川崎の物流拠点まで1泊2日で往復していた。中継輸送に切り替えることで日帰りできるようになった。「両社合計で5%のコスト削減を見込んでいたが、実際は25%減った。実は、単に中継するだけではあまり削減にならない。原材料や商品の輸送を組み合わせて、全体で削減を図っている」(花王ロジスティクスセンターの山口裕人部長)。ただ、中継輸送には難しさもある。当初は東京-大阪間での実施を検討していた。「計算上は可能だが、荷積みや荷下ろし等も考えると時間に余裕が無い。途中で遅れが出ると、ドライバーが帰ってこられない」(同)、「拠点がある程度近くにある、十分な物量が確保できる等の条件をクリアする必要があり、簡単ではない」(『イオングローバルSCM』事業本部運営管理部の坪井康彦部長)。イオンは、メーカーとの共同物流に逸早く取り組んできた。2010年に『鉄道輸送研究会』を発足させ、現在は花王・『ネスレ日本』・『サントリーホールディングス』等と連携して貨物列車を運行している。異業種の共同物流は今後も広がるだろう。 (取材・文/本誌 中島順一郎)


キャプチャ  2017年3月4日号掲載




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