【世界同時サイバー攻撃】(01) 見えぬ兵器、不断の脅威

先月、150ヵ国以上が被害を受けたサイバー攻撃。その攻防に迫る。

20170612 17
「教育・交通・医療・エネルギー等で、数十万件のウイルス感染が報告された」――。中国内陸部の貴州省で先月25日に開かれたIT関連の国際会議。世界のIT大手関係者を前に、中国のサイバーセキュリティーの権威である沈昌祥(76)が厳しい表情で語った。同13日未明、「サイバー攻撃が世界を襲っている」という一報が中国に飛び込んだ。約30ヵ国の首脳級を招き、広域経済圏構想『一帯一路』(※海と陸の現代版シルクロード)の会議を開く直前だった。国家主席・習近平(63)の威信がかかる大舞台だ。「一帯一路を絶対に守れ」。公安省トップの郭声琨(62)は、部下らにシステムの安全確保を厳命した。中国では、公安が数万人の“サイバー警察”を擁し、インターネットの安全も担う。公安は一帯一路の会議を守った一方、自らの組織で失態を見せた。「今日は受け付けません」。出入国管理当局や免許センターが、13日から14日にかけてこんな貼り紙を出した。管理システムで感染が発覚した為だ。北京・上海・天津・江蘇省でビザの手続き等が止まり、吉林省では運転免許の試験が延期となった。河南省や四川省でも、免許等の交通管理システムに支障が出た。公安だけではない。石油大手の『中国石油天然気(ペトロチャイナ)』が北京・上海・重慶・江蘇省等で運営するガソリンスタンドの支払いシステムも使えなくなった。今回の攻撃は、『マイクロソフト』の基本ソフト『ウィンドウズ』の弱点を突いた。公安のシステムを手掛けた沈は、「中国は独自のOSを開発する必要性がある」と強調。『Google』の検索サービスを締め出した中国は、インターネットを巡る独自路線を更に強めそうだ。

イギリスでは、工場や病院の情報システムがダウンした。探偵小説『シャーロック・ホームズ』でホームズが相棒の医師・ワトソンと出会った『聖バーソロミュー病院』も、手術や診察の先送りを迫られた。『ヨーロッパ警察機関(ユーロポール)』長官のロブ・ウェインライト(49)は、「ヨーロッパの多くの国で医療部門が特に脆弱だと心配していた」と明かす。イギリスはヨーロッパ債務危機で緊縮財政を進め、公共医療を提供する国民保健サービス(NHS)は予算を減らされた。NHSのパソコンの9割が、2014年にサポートが打ち切られたOSを使い続けていた。システムを止め、元に戻す為の“身代金”を求めたサイバー攻撃。大騒ぎと同時に、研究者や企業が真相を探り始めた。あるイギリス在住の研究者(22)は、攻撃に使われたウイルスを停止させる方法に気付いた。ウイルスは暴走に備え、緊急停止指令を受け取ると活動を止める仕組みがあった。その指令を出すウェブサイトを研究者が開設し、感染が収まった。セキュリティー大手の『シマンテック』等は、犯人について「ハッカー集団のラザルスと繋がりがある」と指摘する。ラザルスは2014年に『ソニー』の映画子会社に攻撃を仕掛け、アメリカ政府は北朝鮮の関与を断定した。予てサイバー攻撃への関与を疑われ、米欧の批判を受けてきたロシアも、今回は政府のシステム等で被害を受けた。「『脅威の根源はアメリカの情報機関にある』とマイクロソフトが指摘している」。大統領のウラジーミル・プーチン(64)は15日、ここぞとばかりに矛先をアメリカ政府に向けた。マイクロソフト社長のブラッド・スミスは、「国家安全保障局(NSA)から盗まれた(ソフトの)欠陥が、世界中の顧客に影響を与えた」と、政府を公然と批判していた。NSAのソフトは、ウィンドウズの欠陥を突いて感染する。外国政府やテロ組織から機密情報を入手する為に、秘密裏に開発していた。ロシアと関係があるとされる著名ハッカー集団『シャドーブローカーズ』が今年4月、「NSAから流出した」として公開し、先月12日からの攻撃に悪用された。サイバー空間は常に、米露や中国等の主要国も北朝鮮も情報入手を競い、攻撃の機会を探る戦場。その“兵器”が市民や企業にも牙を剥いた。「我々は自分たちに相応しい敵を選ぶ」。シャドーブローカーズはブログで、アメリカに挑戦状を叩き付けた。どんな国や組織も、備えを磨くことを怠れば危機に曝される。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年6月5日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : ITニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR