【占領50年・遠のく和平】(上) パレスチナ、“宿敵”に同化

第3次中東戦争の開戦から50年が過ぎた。和平の展望が描けないイスラエルとパレスチナの分断の現実を報告する。

20170613 02
午前3時。高さ8mの壁に取り囲まれたヨルダン川西岸のパレスチナ自治区べツレへムに住むユニス・アブサルハンさん(27)が、隣で眠る臨月の妻のふっくらとしたお腹を撫でて家を出た。乗り合いタクシーでイスラエルに通じる検問所に着くと、長蛇の列に並んだ。手荷物検査や指紋照合等を受け、約2時間後、イスラエル側に抜けた。アブサルハンさんはイスラエルの就労許可を持ち、同国の建築会社で働く。行列に並び、越境通勤する理由は、給与の高さにある。4000シェケル(約12万円)の月収は、ベツレへムの約4倍だ。アブサルハンさんは、「イスラエルで働かなければ結婚も出来なかったろう」と話す。パレスチナ自治政府等によると、自治区の失業率は26%と高く、イスラエルへ働きに出るパレスチナ人は約14万人と、過去5年で1.7倍に増えた。自治区は社会基盤が十分に整わず、電力供給さえイスラエルに頼る。経済的な自立に繋がる産業は育たず、海外を含む自治区外への農産物等の販売もイスラエルを仲介する形でしか行えない。政治的には自治区でも、経済的にはイスラエルの支配下にあるのが実情だ。

東エルサレムに住むパレスチナ人のイード・グルーフさん(30)は、2014年にイスラエル国籍の取得を申請し、3年近く審査結果を待っている。「イスラエル国民になれば、好待遇の仕事に就く機会が増え、ビザ無しで行ける国も増える。イスラエル国籍は可能性を広げてくれる」。国籍を求める動機を、グルーフさんはこう説明した。第3次中東戦争でイスラエルが占領した東エルサレムには、約32万人のパレスチナ人と約20万人のユダヤ人が暮らす。パレスチナ人に居住権はあるが、国籍は無い。税金はイスラエルに納め、イスラエル国民と同じ教育や医療サービス等は享受できる。但し、旅券も参政権も無い“2級市民”の扱いだ。この為、より良い境遇を求め、宿敵であるイスラエルへの“同化”を選ぶパレスチナ人が増えている。国籍申請に際し、ユダヤ教への改宗は不要だ。地元メディアによると、2003年以降、約1万5000人が国籍を申請し、約6000人が取得した。パレスチナは、イスラエルが占領した東エルサレムを首都とする国家の樹立を目指す。パレスチナとイスラエルの“2国家共存”が国際社会も認める和平の目標で、アメリカのドナルド・トランプ大統領も先月、イスラエルとパレスチナを訪問し、和平実現への仲介に意欲を示した。だが、第3次中東戦争でイスラエルが引いた分断線は、この50年で固定化した。ベンヤミン・ネタニヤフ政権は、東エルサレムやヨルダン川西岸への入植を進める強硬姿勢を崩さず、和平交渉は2014年に決裂したままだ。一方で、双方の経済格差は広がり、『国際通貨基金(IMF)』等によると、自治区の1人当たり国内総生産(GDP)はイスラエルの約12分の1に留まる。反目・依存・同化――。国家樹立という政治的な大義と経済的な窮状の狭間で、パレスチナ人のイスラエルへの意識は変わりつつある。


⦿読売新聞 2017年6月7日付掲載⦿
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