【占領50年・遠のく和平】(下) 入植・闘争、信仰が支え

20170613 03
「我々はユダヤの地に帰っただけ。神が与えると約束した土地をパレスチナ人から解放することは、私たちの使命」――。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地であるオフラで暮らす女性のタマール・ニズリさん(38)は、ユダヤ教の聖典である『旧約聖書』を論拠に、パレスチナ人の私有地の占拠を正当化した。大半の入植者は熱心なユダヤ教徒で、信仰を支えに、ヨルダン川西岸に点在するフェンスや壁に囲まれた入植地の“孤塁”を守る。西岸は赤茶けた大地の丘陵地帯で、所々にオリーブや葡萄等の畑が広がる。入植者は農業を営んだり、会社勤めの為にイスラエルに通ったりしている。イスラエルは、50年前の第3次中東戦争でヨルダン川西岸と東エルサレム国を占領し、住んでいたパレスチナ人から土地を奪い、入植地を建設した。政府は低利の住宅ローン等の優遇策で、入植を奨励してきた。現在、約240ヵ所の入植地に約62万人が暮らす。イスラエルの人権団体『べツェレム』によると、ヨルダン川西岸約5700㎢の36.6%を入植地が占める。ベンヤミン・ネタニヤフ政権は今春、20年ぶりに入植地の新規建設を決定する等、入植政策に積極的だ。

これに対し、土地を奪われたパレスチナ側は憎悪を募らせる。「イスラエルの兵士を刺すのは何と甘美なことか。降伏よりも死を」。ヨルダン川西岸のラマッラ近郊で、先月下旬に行われた16歳少女の葬儀で、数百人の参列者の間に狂信的な叫びが響いた。少女は、イスラエルの警察官を刃物で刺そうとして射殺された。少女は自身の『Facebook』に、「アラー(神)の為に殉教者になりたい」と投稿していた。東エルサレムの旧市街には、イスラム教の聖地『岩のドーム』がある。この為、パレスチナにとってイスラエルとの闘争には、異教徒から聖地を解放する宗教的な意義がある。2015年9月以降、パレスチナ人によるユダヤ人襲撃が相次ぎ、イスラエル外務省によると約500件に上る。「襲撃をパレスチナ自治政府が扇動している」と、イスラエルは非難する。少女のように死亡すれば、殉教者に祭り上げられる。ユダヤ人に危害を加え、服役する者には、自治政府が拠出した基金を通じ、給付金が与えられる。昨年9月からパレスチナの学校で使われている小学4年生の算数の教科書には、「第1次インティファーダ(反イスラエル蜂起)の殉教者は2026人。第2次の殉教者は5050人。殉教者は合計で何人か?」といった例題まで出てくる。双方の交渉は2014年4月に頓挫した。その再開に意欲を示すアメリカのドナルド・トランプ大統領は、入植について「少し自制してほしい」とネタニヤフ首相に促した。自治政府のマフムード・アッバス議長には、「暴力に見返りが与えられる環境に平和は根付かない」と対策を求めた。入植地の取り扱い、土地を奪われた難民の問題、東エルサレムの帰属等、双方の対立は根深い。対話の軌道に戻すことさえ簡単ではない。

               ◇

エルサレム支局 上地洋実が担当しました。


⦿読売新聞 2017年6月9日付掲載⦿
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