原発事業失敗に半導体事業売却…崩壊まで秒読み段階に入った『東芝』の落日

最大赤字1兆100億円――。『東芝』の崩壊までのカウントダウンが始まった。粉飾決算から原発事業の失敗まで、日本を代表する巨大企業の無様な実態とは? (取材・文/本誌編集部)

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「名門の東芝が破綻しているのに説明が足りない。納得できない!」「責任は誰にあるんだ」「全員頭を丸めろ! 全員辞めろ!」――。あの東芝が、“企業解体”という未曾有の危機に瀕している。今年3月31日に開かれた臨時株主総会は、この事態を招いた経営陣に対し、怒りに燃える株主の怒号が飛び交う大荒れの展開となった。それも当然で、東芝の今年3月期の連結最終損益は、最大で1兆100億円の赤字となる見通し。日本屈指の名門企業は、まさに瀕死の状態に追い込まれているのだ。日本に暮らしていて、東芝の名前を聞いたことがない人は殆どいない筈だ。そのビジネスは驚くほど多岐に亘っており、冷蔵庫・洗濯機・掃除機といった身近な白物家電から、液晶テレビ・パソコン・半導体といった電子機器はお馴染みの筈。他にも、医療用機器・エレベーター・放送機材・通信・上下水道・鉄道といった社会インフラ、更には火力・水力・原子力という重電事業、地対ミサイルやレーダー等の軍事機器の開発・製造まで展開している。大小様々な子会社を傘下に持ち、連結総資産は5兆4333億円。グループ関連の従業員総数は約19万人という、まさに日本を代表する一大企業である。その東芝が何故、ここまで追い込まれてしまったのか? 直接の引き金となったのは、2015年に発覚した粉飾決算事件だ。東芝は2009年3月期以降の決算で利益を水増ししていたのだが、その不正はインフラ事業の工事進行基準、映像事業の経費計上、半導体事業の在庫評価、パソコン事業の部品取引と、4つの事業で行われていたことが明らかになっている。

「単なる一部門の不祥事ではなく、会社ぐるみ、或いは会社の体質の問題だったと言えます。一説には、経営幹部の対立によって業績競争がエスカレートした結果とも言われていますが、何れにしてもコーポレートガバナンスが叫ばれる今の時代において、最早時代遅れともいえる不祥事です。時代の流れに対応できなかった“大企業病”の一種とも言えるでしょう」(経営コンサルタント)。この不祥事を受けた東芝は、社長を交代した上で第三者委員会を設置し、粉飾決算問題の解明を進めた。その結果、2008年から2014年度の7年間で、凡そ1562億円もの粉飾決算が行われていたことが判明。当期の純損失は4600億円にも上ることになった。それでも、ここで過去の濃を出し切り、経営を立て直すことができていれば、企業として持ち直す可能性は十分にあった。東芝は粉飾決算の不祥事を受けて、重電部門・半導体フラッシュメモリー・社会インフラの3部門を中心にした“新生東芝アクションプラン”なる事業の大幅な構造改革を発表。数万人規模の大リストラを実施し、社員を切り捨てることで生き残りを図ろうとした。事業再編の目玉となったのは、好調だったヘルスケア事業からの完全撤退で、事業の中核企業だった『東芝メディカルシステムズ』は6655億円で『キヤノン』に売却されている。「テレビ事業では、全体の8割に当たる3700人を削減して、事業からも全面撤退。会社の顔である家電事業も、レグザ等のブランド名だけは辛うじて残ったものの、子会社の東芝ライフスタイルは中国の美的集団に売却されました。パソコン事業も1300人をリストラした上で、国内での個人向けの製造・販売を大幅に縮小して、法人向けに集中する方向に舵を切っている。末端の社員を犠牲にして経営陣の失態の尻拭いをするのは、大企業のいつものやり方です。今後は人員削減だけでなく、賃金カットにも手が付けられるでしょう」(経済誌記者)。他にも、保有株式・工場設備・不動産といった資産が切り売りされており、これまで売却した資産の総額は凡そ1兆円。リストラされた人員は3万人に上っている。しかし、この計画は1年も経たず水泡に帰してしまう。経営危機の回避どころか、更なる問題が発覚したからだ。昨年12月27日、東芝は緊急の記者会見を開き、アメリカに持つ原子力事業の子会社『ウェスティングハウス(WH)』が行った企業買収において、数千億円の損失が出る可能性があることを公表した。「具体的な損害額は最後まで明らかにされず、これだけの重大な発表にも拘わらず、会見は僅か1時間ちょっとで打ち切られています。東芝の幹部も現状を正確に把握し切れていなかったのでしょうが、それ以上に、マスコミに触れられたくない問題があったということでしょう」(同)。

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東芝が粉飾決算スキャンダルの後始末に必死に取り組んでいたまさにその時期である2015年10月、WHはアメリカの建設会社『ストーン&ウェブスター(S&W)』の買収合意を発表。S&Wは、アメリカの大手エンジニアリング会社『CB&I』の建設子会社で、WHが2008年に受注した2つの原発建設プロジェクトにおいて、WHが原子力発電所の設計、S&Wが建設を担当するという事業パートナーだった。「ところが、東日本大震災の影響でアメリカの規制が強化され、設計変更や工事遅延といったコストが発生。追加費用の負担を巡って訴訟合戦になっており、買収はこのトラブルを決着させる為のスキームだった。更に言えば、当時のS&Wは他にも2基の原発建設を受注しており、買収によって自動的にこれらの事業も手に入る算段でした。原発建設費は1基凡そ5000億円で、4基の建設費を合計すれば2兆円規模の工事となる予定だったんです」(同)。当時のWHの社長が「今後15年で64基の原発を受注する」とブチあげたように、東芝が原子力事業を次世代の柱としたのも頷けるほどの巨大事業である。ところが、買収完了後にとんでもない事実が発覚する。WHが乗り込んでみると、S&Wには想定していた運転資金は残っておらず、そのマイナス額は凡そ1173億。更に、S&Wが抱えていた2基の原発建設でも、数千億円の損失があることがわかったのだ。今年3月、ウェスティングハウスはアメリカにおいて、日本の民事再生法に当たるアメリカ連邦破産法11条の適用を中請。東芝は海外の原子力事業からの撤退・縮小を決断している。この申請によって、WHは東芝の連結対象から外れることになるが、それでも今年3月期の連結最終損益は、最大で1兆100億円の赤字となる見通しだ。

「昨年末の会見以降、東芝は正確な損失額を中々公表せず、今年3月の会見でも、債務超過額の見通しを1500億円としていました。それが、ここにきていきなり何倍にも膨らんだ訳ですから、ステークスホルダーが『ふざけるな!』と怒ったのも当然でしょう」(経済専門紙記者)。原発事業では、今後も巨額の違約金や損失リスク対応金が生じる可能性がある。この窮地を乗り切る為、東芝はグループの営業利益の半分近くを稼ぎ出している“虎の子”の半導体メモリ事業を売却することを決定。既に1次入札は締め切られており、アメリカの『ウェスタンデジタル』、韓国の『SKハイニックス』、台湾の『鴻海精密工業』といった大手メーカーを始め、複数のファンド等10社が候補になっているという。今後は出資企業との個別交渉に入り、売却先が決定するのは夏以降になる見通しだが、こちらもすんなりとはいきそうにない。「東芝の半導体メモリ事業は世界屈指の技術力で、軍事転用も可能な代物ですからね。安全保障上の問題もあって、日本政府も売却先には重大な関心を持っている。若し売却先に中国系企業が関係していた場合、政府が強権を発動して売却が頓挫する可能性もある」(全国紙経済部記者)。資産を切り売りして生き残りを図る東芝だが、事態は未だ流動的で、第3四半期の正式な業績開示が3度も延期される等、混乱が続いている。また、2015年の粉飾決算事件もあって、現在の東芝は東証から“特設注意市場銘柄”に指定されており、内部管理体制を改善したと認められなければ、最悪の場合、“上場廃止”の危機も抱えている。この判断が出るのは早くても今年7月頃と言われており、「市場第2部に指定替え」との報道も飛び出している。何れにしても、日本有数の優良企業だった東芝は、僅か2年ほどの間に“粉飾決算”と“原発事業による巨額損失”のダブルパンチによって、一気に壊滅状態に追い込まれてしまったのだ。東芝の崩壊は、単に一企業の問題というだけに留まらない。その歴史を紐解くと、東芝が日本人の生活にどれだけ深く密着してきたかがわかる筈だ。東芝の創業は明治8(1875)年。この年は、明治維新で知られる大久保利通・伊藤博文・木戸孝允・板垣退助らが参加した『大阪会議』によって、『元老院』の設置が合意されており、未だ大日本帝国憲法(※1889年公布)も生まれていない時代である。創業者の田中久重は、からくり人形や和時計の製作で、“からくり儀衣文”の異名を取った発明家。この田中が作った電信機工場から始まり、芝浦に設立した『芝浦製作所』と、当時の白熱電球のシェアを独占していた『東京電気』が合併(※1939年)することによって、『東京芝浦電気(=東芝)』が誕生している(※正式な社名変更は1984年)。

こうした“ものづくりの技術力”によって成長してきた東芝は、戦後日本を象徴する存在と言えるだろう。また、日本3大財閥の1つである『三井財閥』の流れを汲む企業体連合『三井グループ』の一員でもある東芝は、伝統的に財界活動にも力を入れてきた。これまで、石坂泰三と土光敏夫の2人の社長が『日本経済団体連合会(経団連)』の会長を務め、“財界総理”と呼ばれるほどの存在感を見せてきた。「経団連は、財界から政府の経済政策に提言をする為の団体ですが、それだけ国とのパイプが太いということでもある。東芝が社会インフラ事業・原子力・軍事機器といった国策とも言える事業を展開してきたことと無縁ではありません」(前出の経済誌記者)。こうして様々な分野に進出した東芝は、家電中心の電機メーカーから一大企業グループとなっていく。まさに、キャッチコピーにもなった“電球から原子力まで電気の総合メーカー”である。市民生活への影響力は、その製品だけに留まらない。東芝は、家電やオーディオ・映像機器といった製品の販売促進・宣伝の為、数え切れないほどのテレビ&ラジオ番組・スポーツイベントといったエンターテインメントのスポンサーとなり、日本の文化にも多大な影響を与えてきた。最も有名なのが、東芝の1社提供によって1969年から放送され続けてきた国民的アニメ番組『サザエさん』(フジテレビ系)だろう。1998年以降は東芝以外にも複数のスポンサーが付くようになっているが、“サザエさん=東芝”のイメージは、日本人の心性に深く刷り込まれてきた。「サザエさんの磯野家にある冷蔵庫・掃除機・テレビといった家電は、明らかに東芝が販売している製品をイメージさせるもので、時代に合わせてテレビはBSデジタル対応の薄型液晶になり、冷蔵庫も適宜新型に変えられていました。東芝製品はサザエさんを通じて、古き良き日本の家庭のスタンダード家電として、サブリミナル的に浸透してきたと言えるでしょう」(広告代理店関係者)。また、音楽界での存在感も特別で、2006年まで所有していたレコード会社『東芝EMI』は、50年以上の歴史を持ち、『ビートルズ』・『ローリングストーンズ』・『クイーン』といった海外アーティストから、矢沢永吉・宇多田ヒカル・松任谷由実といった大物アーティストの権利を保有していた老舗である。「1988年当時、東芝EMIに所属していたRCサクセションが作ったアルバム“COVERS”が、東芝からの圧力によって発売中止となる事件がありました。核や原子力を批判する楽曲が含まれていた為でしたが、その原子力事業によって東芝が窮地に追い込まれてしまったというのは皮肉ですね」(レコード会社関係者)。東芝の崩壊は、経済大国に成長した日本が、成長と引き換えに抱え込んできた問題を象徴しているのかもしれない。


キャプチャ  2017年6月号掲載


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