【Korea Risk】(03) 韓国の民主化を阻むメディアの大罪

20170615 04
朴槿恵前大統領の罷免を受けて、半年以上も前倒しで行われた韓国大統領選挙。時期だけでなく、保守勢力が分裂する等、異例尽くめの選挙戦で注目を集めたのは、“民主化”に対する意識の高まりだ。1987年の民主化から30年を迎えた韓国だが、政府や行政に留まらず、幅広く非民主的な慣習や社会構造が今も根強く残っている。前回2012年の大統領選では、財閥による経済支配が問題視されたことから、“経済民主化”が大きな争点になったが、朴の弾劾を経た今回の大統領選挙では、経済以外の方面でも民主化が議論された。言論もその1つだ。朴に対する昨年の大規模デモをきっかけに、市民の間では“報道の民主化”の重要性に対する意識が再び高まり始めている。世論の力によって現職大統領を罷免に追い込んだ市民たちは、次期政権下でもこの流れを加速させるだろう。その中で、当の韓国メディアは、調査報道による権力の不正の追及等、本格的な“民主化”の流れに乗り遅れ、相変わらず独善的で政治的な報道を繰り返している。直近の好例が、民放テレビ局『SBS』による誤報騒ぎだ。大統領選終盤の先週、「2014年に沈没して304人の犠牲を出した客船・セウォル号の引き揚げ作業が大幅に遅れたのは、大統領就任が濃厚な左派系の文在寅候補と関係省庁が裏取引をしたからだ」と報じた。「引き揚げが早いと保守派政権の手柄となり、保守派候補に有利に働くとみられていたところ、官僚組織の拡大を目論む当局が文と取引した」という筋書きだ。ところが、「選挙戦をリードしていた文を陥れる為の報道だった」との疑惑が持ち上がり、SBSは謝罪に追い込まれた。朴が知人に国政介入させた昨年の“崔順実ゲート”では、「メディアが政権の監視役としての役割を果たした」と評する向きもある。例えば、『中央日報』系のテレビ局『JTBC』が、崔の国政関与を裏付ける物証を報じたことで、朴は謝罪に追い込まれた。ただ、実際のところ、事の発端は崔の関係者らによる内部告発だった。その報道が関心を集めたのは、崔の娘の不正入学が注目されてからのことで、メディアに大きな手柄があったとするのは過大評価だ。そんな韓国メディアの“民主化”には、未だ時間がかかるだろう。抑々、韓国メディアはジャーナリズムに求められる倫理性や公正性を欠くことが多い。証拠を基に事実を伝えるという、ごく初歩的な報道規律の遵守すら未熟だ。多数の高校生が犠牲になったセウォル号事故で、発生直後に“学生全員救助”と誤報を出したのは、その最たる例だろう。

2013年には、ソウル市庁の職員が北朝鮮のスパイ容疑で一時逮捕され、その後の裁判で無実が判明した事件があった。リベラル派だった当時の市長を追いやる為、情報機関の国家情報院が企てた陰謀だったとみられているが、ここでも事実確認することなく、政府の発表を垂れ流す怠慢報道が繰り返された。もう1つの問題は、韓国メディアと世論との乖離だ。例えば、北朝鮮は韓国の選挙前に核実験やミサイル発射を行うことで、選挙に影響を与えようとする。“北風”と呼ばれるもので、韓国の保守政権もこれを逆手に取って利用するのが常だ。保守系メディアも政府と歩調を合わせるように“北風”を利用して、半島危機を煽り、保守派候補を有利にさせようとする動きが、選挙戦ではよく見られる。だが、良し悪しは別にして、韓国の有権者は最早北風に対して不感症になっており、その影響力は限定的だ。にも拘わらず、保守派メディアは相変わらずの北風報道を続けている。メディアが認識のずれに気付いているにせよ気付いていないにせよ、古臭い報道スタイルに対する国民の不信感は増す一方だ。勿論、メディアが有権者や国民に媚びを売る必要はない。ただ、政治的な意図を含む報道が繰り返される一方で、報じられるべき社会的課題が中々伝えられないもどかしさが、国民の中に渦巻いている。例えば、若者の失業問題や非正規労働の問題は、経済が低迷する中でもっと報道されてしかるべきだが、問題の深刻さに比べて扱いが小さく、情報量も少ないと言わざるを得ない。更に韓国メディアには、未だに軍事政権時代のような非民主的な体制が残っている。政権に批判的な記者が悉く解雇されているのだ。実際、李明博元大統領や朴等の保守政権下では数十人の記者が解雇されたり、“業務妨害”の疑いで当局から起訴された。これはメディアを弾圧する政権の問題だけではなく、政権と近しい関係を続けるメディア幹部の姿勢にも問題がある。尤も、メディア関係者の中には、こうした状況を改善させようとする動きもある。半官半民の放送局『MBC』を解雇された元記者の李容馬は、朴の罷免が決定した翌日に行われた大規模集会で、「社会的害悪を清算する最初の出発点は検察とマスコミを改革すること」と訴えた。彼は嘗て、「韓国の報道現場は軍政時代より深刻だ」と筆者に語ったことがある。若手記者が報道の自由を主張すると、決まって“北のシンパ”のレッテルを貼られ、解雇される。残念ながら、彼のような改革を求める声は、韓国メディアを根本的に変えるには至っておらず、未だその兆しも無い。韓国社会が民主化に向かう中、メディアが旧態依然としたままなら、新生韓国にとって大きなリスク要因になる。そうなれば、朴を罷免に追い込んだ大規模デモの次なる矛先は、不公正な報道を続ける巨大メディアに向けられるだろう。 (朴辰娥)


キャプチャ  2017年5月16日号掲載
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