【70回目のカンヌ映画祭】(下) 実力派俳優は世界が磨く

20170616 01
カンヌに来ていつも感じるのは、日本人俳優の影の薄さだ。欧米の俳優は勿論、中国や韓国の俳優に比べても存在感が無い。国内の仕事に忙しいからだ。ところが、今年は違った。カンヌの歴史の生き証人でもある日本の実力派俳優たちが、久々に戻ってきた。そして、実力派俳優は世界が磨くことを実感させた。先ず、藤竜也(75)。1976年に大島渚監督『愛のコリーダ』(東宝東和・ギャガ)で初参加。以後、同『愛の亡霊』(東宝東和)や黒沢清監督『アカルイミライ』(アップリンク)、そして今年の河瀬直美監督『光』(キノフィルムズ・木下グループ)。4度目のカンヌだ。阿部定事件を描いた『愛のコリーダ』の監督週間での上映は騒然となった。「憤然と席を蹴る人もいた。終わった後、沈黙があり、5~6人が監督に飛びかかってきた。抱擁の為だった」。再上映の要望が多く、11回も上映したという。「相反する評価は今も変わらない。それが、あの作品を生き永らえさせるエネルギーだと思う。カンヌにはうってつけの映画だった。ラジカルで前衛的なものを評価するのが、この映画祭の姿勢なんだろう」。70回の今年、映画祭の歴史を振り返る15本の上映に、『愛のコリーダ』も堂々選ばれた。

大島監督の2000年出品の『御法度』(松竹)でデビューした松田龍平(34)も来た。黒沢清監督『散歩する侵略者』(松竹・日活)の主演だ。「17年の役者人生を経て、またここに来た」という感慨を抱いた。『御法度』は、新撰組を男色の視点で描いた。「僕のスタートは、父(※優作)のようになれないということ。性格的にあんなに勇ましくなれない。だから、父がやれないことをやった」。その後も自分と役の距離が近かったが、今は「自分と役を切り離したい。父の逆なんて本当は無い」と語る。松田のこれからが楽しみだ。そして永瀬正敏(50)。1989年のジム・ジャームッシュ監督『ミステリートレイン』(フランス映画社)で初参加し、今年の『光』で3度目だ。カンヌ入りしなかったが、昨年のコンペに選ばれたジャームッシュ監督『パターソン』でも重要な役を好演した。相米慎二・ジャームッシュ・河瀬ら、強烈な作家性を持つ監督と組んできた。「唯一自慢できるのは、人との出会いに恵まれたこと」。作品が途切れても、監督と俳優の付き合いが続くのは珍しい。ジャームッシュ作品の出演は27年ぶりだが、友人関係は続いていたという。「悪戦苦闘し、悔しい思いばかりしてきた。30代くらいまでは全然ダメだった」と永瀬。それは、優れた監督や共演者に恵まれたことの裏返しだろう。藤とは、相米監督によるデビュー作『ションベンライダー』(東宝)で共演。「ずっと藤さんの背中を見ていた」。河瀬組で改めて藤の背中を見て、「ぐっときた」という。国内市場で成立するメジャーの日本映画は若者向け作品が大半で、30代半ばから役が急に減る。しかし、世界はそうではない。40代からが本番だ。今年受賞したダイアン・クルーガー(40)もニコール・キッドマン(49)もそう。カンヌの空気を知る日本の実力派俳優が増えてほしい。もっと多様な日本映画、もっと成熟した日本映画を見たい。

               ◇

編集委員 古賀重樹が担当しました。


⦿日本経済新聞 2017年6月3日付掲載⦿
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