【熱狂!アニメビジネス最前線】(10) “好き”が財布を開かせる…“アニメ×消費”の最前線

20170620 05
アニメ作品所縁の場所をファンが訪問することが近年、宗教行為に擬えられ、“聖地巡礼”と呼ばれている。作品に登場する実在の土地だけでなく、架空の都市が舞台だが、実在の場所をモデルに背景を精緻に描いた結果、モデルとなった場所が聖地になることもある。後者の例が、映画『君の名は。』(東宝)。舞台とされる岐阜県飛騨市に、ファンが大挙して押し寄せたことが話題となった。この聖地巡礼を喚起する今最もホットなアニメが『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日ほか)。昨年10~12月に放送された深夜アニメだ。グランプリファイナルを戦う男子フィギュアスケーターたちの物語。時折目につくボーイズラブ的な描写から、主な視聴者は女性と思われるが、完成度の高いストーリーと手に汗握るスケート演技の描写は、男性が見てもハマる。舞台は九州の“長谷津”。架空の街だが、山と海、高台の城といった風景にファンはピンときた。「これ、佐賀県の唐津市でしょ」。唐津は唐津焼や唐津くんちの祭りで知られるが、観光目的の訪問率は全国210位(※市調べ)に留まる。祭りの時期を除けば、比較的静かな街だ。ところが、インターネットで“長谷津=唐津”という情報が広がり出した11月頃から、街に女性ファンの姿が目立って増えた。遠くに唐津城が見える橋、商店街のアーケード。地元住民には日常の風景を、ファンは愛おしそうにカメラに収める。そして市内の温泉施設を訪れ、併設の食事処で“お約束”のカツ丼を食べる。作品中に、この施設をモデルにした旅館で主人公が、好物のカツ丼を食べる場面があるのだ。この場面が放映された途端、1日に6~7杯程度しか売れていなかったカツ丼の注文が、いきなり10倍に。150杯出る日もある。唐津名物でもない普通のカツ丼がここまで人気を集めるのが、聖地の力なのだ。「佐賀なら絶対やってくれると思った」。放送終了後に佐賀県がユーリとのコラボレーションを発表するや否や、ファンが沸いた。過去にも自治体として初めて『おそ松さん』(テレビ東京系)とコラボする等、知名度向上に一際熱心な県なのだ。県広報広聴課の担当者は、「第1話を見た瞬間、『これだ』と思った」と話す。担当者が早速、製作会社にコラボを持ちかけたところ、あっさりOKが出た。製作側にとっても、パッケージソフト販売や続編製作への土壌作りを狙い、放映終了後も人気を維持する必要があるからだ。

佐賀が当初提案したのは、佐賀県産のブランド米をPRする“サーガ・オン・ライス”という企画。スケーターを回転寿司に見立てて、カウンターの上で登場人物がくるくると回転するアイデアだ。だが、「アニメの世界観が損なわれる」という理由で却下。この案は、明治神宮外苑アイススケート場を作品中のスケート場に見立て、県産米のおにぎりを販売する内容に変更された。今年3月6日からは県と市の協業で、アニメに登場した場所を紹介する聖地巡礼マップの配布を開始。初日はJR唐津駅に早朝から、100人もの女性ファンがマップ入手目的で列を作った。東京や新潟と、遠方から足を運んだ人も多数。元々予定していた九州旅行にイベントを組み込んだ人が大半だったが、イベントの為に態々来たファンもいた。同日から、市内各所の飲食店でもコラボメニューがスタート。商店街近くのカフェ『hanaはな家』の店主は、「若い女性を見掛けるようになり、『当店にも来てくれないかな?』と期待していたが、勝手にユーリで商売する訳にもいかないし…」と思っていたという。そんな中、市の担当者からコラボメニューの販売を打診された。売り出したのは、登場人物ゆかりのボルシチ。「ロシア料理ですが、肉や野菜等、具材は県産です」(店主)。コラボメニューを注文すると、県が作成した限定グッズが貰える。タクシー各社も、聖地を案内するサービスを展開している。ある運転手は、「娘に教わり全話見た。単に聖地に連れていくのではなく、どの所に立つとアニメと同じアングルで写真が撮れるのか、何度もロケハンした」という。「放映開始前からコラボし、観光名所や特産品をアニメにどんどん登場させれば、観光収入が飛躍的に増えるのではないか?」――県の担当者にそう質問したところ、「ファンはPR臭に直ぐに気付くので、簡単には乗ってこない」と言下に否定された。そして、更に強烈な一撃。「抑々、作品に魅力が無いと、ファンは聖地巡礼をしようとは思わない」。確かに、企画段階から自治体が関与したにも拘わらず、聖地ブームが起きなかったアニメ作品も過去にあった。聖地巡礼ブームを受け、これをビジネス化しようとする動きが活発だ。昨年9月には、大手出版社・旅行会社・航空会社等が中心となって、聖地巡礼を支援する『アニメツーリズム協会』を設立した。聖地を8ヵ所選んで公式指定し、それらを繋ぐ広域周遊観光ルートを作るのが目的だ。更に、聖地のコンテンツを活用したサービスや商品で新たな経済効果を創出したいという。だが、自身がアニメ愛好家でもある本誌記者は、聖地を公式指定する発想にはやや疑問を感じる。アニメの好みが多様化している時代に、全ての聖地を訪問したい人がどれだけいるか? また、聖地に精力的に赴いて盛んに消費するファンでも、過剰なビジネス化には白けてしまう筈だ。抑々、聖地は観光名所ではなく、ファン以外にはごく普通の場所に過ぎない。だからこそ、知る人ぞ知る聖地の魅力があることも忘れてはならない。 (取材・文/本誌 大坂直樹)


キャプチャ  2017年4月1日号掲載
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