「貧困女子最後の砦が消滅すれば日本は大混乱に陥る」――中村淳彦氏(ノンフィクションライター)インタビュー

女性人権団体『ヒューマンライツナウ(HRN)』が纏めた報告書の影響で、AV業界がパニックに陥っている。AV女優や制作スタッフ等が次々に逮捕され、あらゆるプロダクション・全てのAV作品の違法性が問われかねない事態となっている。今、AV業界に何が起こっているのか? 長年に亘って業界を見続けてきたノンフィクションライターの中村淳彦氏に話を聞いた。 (聞き手・構成/フリーライター 西本頑司)

20170621 05
見ていて頭がクラクラしてきますよ。あまりにもお粗末なので。まぁ、“意識低い系”と“意識高い系”が話し合ったところで議論が噛み合う筈もない訳で、実に不毛な争いをやっている。どっちが悪いのかと言えば、間違いなくAV業界です。AVはグレービジネスですから。グレービジネスは、ブラック(=違法)に寄れば寄るほど利益が出ます。1990年代までのAV業界は、スカウトとプロダクションが結託して女の子に適当なことを言って出演させて、過酷な撮影を続けた挙げ句、悪いヤツになるとギャラを踏み倒した。それで「儲かったぞ」と手を叩いて、その行為を「凄い凄い」と持て囃していた業界なのですよ。どれほどAV業界が酷いのか。同じグレービジネスであるパチンコや性風俗産業と比較すればわかり易いでしょう。何れも業界団体がしっかりしていて、当局の指導をきちんと受けるでしょ? 何か社会問題になりそうなら直ぐに自主規制もする。産業規模がデカいのもあって、当局もできるだけホワイト(=合法)に寄せようとするからです。ところが、AV業界の産業規模は500億円程度、性風俗産業の2%ぐらい。当局にせよ、精々“わいせつ物図画”、モザイクぐらいしか指導せず、ある意味、ずっと野放しになっていた訳です。その結果、と言うべきでしょう。1990年代になると、AV業界は相当悪質になった。女優の人権問題で言えば、最悪の状態だったと言っていい。覚えている人もいるかもしれませんが、1990年代のAV業界は“鬼畜系”がブームになりました。女性を長時間に亘って監禁してレイプしまくるとか、ホームレスの集団に暴行させたり、太った女優のお腹の肉を脂肪吸引してそれを食べさせたりするような作品もあったんです。酷いのになると、本当に火を付けて女優を焼いちゃったりしていたんですから、冗談抜きで。

当たり前ですが、そんなことをしたら女性のほうは心身に酷い障害を受けて廃人になったり、自殺したりする子も出てくる。それでも、「撮影には合意した」という一言で済まし、当時のサブカルブームに乗って「これが究極のカルチャーだ」等と持ち上げ、今で言えば明らかに犯罪者となる監督や制作者を“文化人”扱いする風潮すらあった。意識が低いどころの話じゃなくて、本当に狂った世界だったのです。1990年代はスカウト網が異常に充実していた時代で、ちょっと意志の弱い子とか、“ワケあり”の女性をガンガン集めてくる。制作側は女優なんて消耗品ぐらいにしか思わず、平然と“使い捨て”にする。それで、鬼畜系のAVがエスカレートしていきました。AV業界の健全化、女優の人権や保護というなら、この1990年代に動くべきだった。ここで女性の人権団体がきちんと動いて、悪質な制作者をどんどん逮捕しておけば、沢山の女性が救われたと思いますよ。確かに、鬼畜系のリーダー格だった『V&Rプランニング』の『女犯2』(1992年)でAV女優を保護する団体『AV人権ネットワーク』も生まれたり、フェミニスト団体が抗議もした。でも、それだけでした。フェミニストたちは活動に飽きたのか、抗議は直ぐに終わってしまって、膨大に存在した被害に遭った女性たちは見捨てられたのです。AV業界が今も非常に悪質というのなら、今回の動きも未だ理解できます。だが、実のところ2000年代以降、AV女優の人権や権利という点ではかなり良くなっている。自浄作用が働いた訳ではなく、経済的な理由ではありますが、2000年以降になると先ず鬼畜系AVは売れなくなった。女性を虐待する行為に興奮する人なんてそう多くはないから、飽きられて当然ですよ。もう1つが貧困です。小泉純一郎政権が誕生し、金融改革や構造改革を行ったことで非正規労働者が激増。所得格差が生まれて、普通に働いても普通の生活ができないことを理由に、AV業界に入ってくる女性が増えた。彼女たちニューカマーは、OLさんをやっていけるような普通のルックスと知性があった。それ以前の“ワケあり”とは違って、質の面で優れていた。だから、プロダクションは段々と女の子を使い捨てしなくなり、会社の財産として大切に管理するようになった。理由は単純、気持ちよく長くAVに出続けてもらったほうが儲かるからです。こうして2000年以降、AV女優の契約や労働条件に関しては格段に良くなった訳です。そのAV業界の“健全化”を推し進めてきたのが、実は今回、逮捕者を出した『マークスジャパン』だったのです。おかしいと思いませんか? HRNは何を考えて、業界を健全化した当のプロダクションを批判するのか? 恐らく、何も考えていないのではと思います。HRNがマークスジャパンを狙ったのは、“最大手”だから、ただそれだけ。同業の『ムーディーズ』の代表作でもある『バコバコバスツアー』もそうです。有名女優が沢山出ていて人気シリーズだから狙われただけ。この2つの逮捕案件から、HRNがAV業界を完全壊滅をしようとしていることが伺えます。悪質なプロダクションや劣悪な作品を無視して、業界に影響力を持つプロダクションと作品を潰してきたのは、それが理由でしょう。私には、HRNはAV女優の保護とか人権と言いながら、別に彼女たちを「助けよう」とは思っていないように見えます。HRNの考えでは、AV女優はAVに出演してAV業界にカネを齎した“共犯者”という位置付け。実際、HRNの活動に一番怒っているのは、当のAV女優たちです。彼女たちの職場を奪い、犯罪者扱いしていれば当然のことですよ。

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何と言いますか…。イスラム国みたいなナントカ革命軍と一緒ですよ。「異教徒は絶対に許さない、ブルジョアは皆殺しだ」みたいなゴリゴリの狂信者。長年、AV壊滅を掲げてきたのはHRNではなく、婦人保護団体です。やっぱり、性風俗産業を渡り歩いてボロボロになった女性の保護が中心なんで、“性風俗=絶対悪”となってしまっている訳ですよ。今回、婦人保護団体とタッグを組んだHRNがAV業界を潰しにきたのは、AV業界が性産業の中で最も脆弱で産業規模も小さく、他の業種との関係が薄いからでしょう。先ずはAV業界を潰して、その手柄を持って本命である“性風俗”を潰す。こういう戦略でしょうね。「自分たちの信じる“正義”の為には、2.5兆円規模の性産業を潰し、その結果、多数の人が職を失い、路頭に迷おうが経済が低迷しようが、ごく少数の性産業で食い物にされる女性を救うべき」と思い込んでいる。あまりにも意識が高過ぎて、普通の人では理解できなくなっている。況してや、その相手は意識低い系のAV業界でしょ? 「どうしようもないな」というのが僕の立場です。仮に思惑通りにAV業界が消滅しても、社会的には大した影響は無いですが、貧困女性たちの最後の砦になっている性風俗を潰したら、日本は大混乱に陥りますよ。これだけは食い止めなければなりません。まぁ、意識が高くもなく低くもない一個人としては、他の性産業同様、当局を交えて契約や労働条件についてのガイドラインを作ればいい話だと思います。海外のポルノ産業を参考にして、違反した場合の罰則規定をどうするとかですね。今までガイドラインを作ってこなかったAV業界は意識が低過ぎますし、ガイドラインすら許さず、“焼き討ち”を計っているHRNは意識が高過ぎるんですよ。


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