【胎動・5Gの世界】(下) 波乱の規格策定

20170622 02
アドリア海に面した観光地、クロアチアのドブロブニク。5Gの国際規格を協議する会合が終わった今年3月上旬、『NTTドコモ』先進技術研究所主任研究員の永田聡氏は、ほっと一息吐いた。5Gの最初の規格を作る時期を今年末に6ヵ月前倒しすることが決まり、規格作りの枠組みを維持できたからだ。世界の通信規格の標準化は、ヨーロッパや日本勢が主導する嘗ての形から様変わりした。今回の会議も、携帯電話契約数が13億件と世界最大の中国等、アジアからの参加者が4割を超す。交渉も、「中国の要求項目を入れることで何とか協調を保てた」(関係者)のが実情だ。「世界一流のスマートシティーを作れ」。習近平国家主席の指示の下、中国は北京近郊の新都市・雄安新区を環境に優しく効率的な都市にしようと躍起だ。カギを握るのが、あらゆるモノを繋ぐ5Gの通信網だ。10年前の3Gの標準化で、中国は自国の市場を守ろうと独自仕様に拘った。通信機器大手の『華為技術(ファーウェイ)』等、中国企業が力を付けた今、寧ろ国際規格を有利に導き先進国の市場を切り崩したい――。5Gで国際協調に転じた中国には、そんな計算が働く。逸早く5Gのインフラを整え、新しいサービスを確立できれば、世界競争を有利に導ける。中国以外の国も動き始めた。

ニュージャージー州の閑静な住宅街。アメリカの通信大手『ベライゾンコミュニケーションズ』は、昨年から家庭向け5Gの実験に着手した。ケーブルテレビと競う家庭市場で顧客を獲得しようと、「5Gでの高速通信を提供する」(同社のロジャー・ガーナニ副社長)。ベライゾンは国際協議の決着を待たず、見切り発車した。「2019年に全国で5Gを商用化する」。こう宣言するのは、『KT』(韓国)の黄昌圭CEO。来年2月の平昌冬季オリンピックで独自仕様の5Gを始め、全国展開に踏み切る考えだ。NTTドコモは、「先ずは標準を纏めよう」との立場だ。東京オリンピックのある2020年までの商用化で、『KDDI』も足並みを揃える。だが、事業展開を急ぐ世界の潮流に乗り遅れると、日本は5Gの果実を取り損ねる恐れがある。尤も、巨大投資は事業者にとり、重い負担だ。イギリスの調査会社『IHSマークイット』は、「アメリカ・中国・日本等主要国の5Gの研究開発と設備投資の合計が、2020年から2035年まで年2000億ドル(約22兆円)規模になる」と推計する。投資と収益のバランスが崩れれば、事業者の将来を左右しかねない。インド2位で『ボーダフォングループ』(イギリス)のインド法人と3位の『アイデアセルラー』は今年3月、5Gの早期展開を目的に事業統合を決めた。負担を軽減しながら5Gを導入する為の苦肉の策だ。先進国では、ベライゾンが今年1~3月期に携帯電話の契約件数が初めて減少し、純利益は34億5000万ドルと前年同期比で2割減った。格安スマホが台頭する日本でも、携帯電話大手にとって将来の業績に不安が強い。4Gまでの世界では、技術でもサービスでも欧米勢がリードしてきた。だが、桁違いの利用者を抱える中国の台頭で、主導権争いは混沌としてきた。巨大市場を巡る攻防は、これからヤマ場を迎える。

               ◇

堀越功・大西綾が担当しました。


⦿日本経済新聞 2017年6月20日付掲載⦿
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