【誰の味方でもありません】(07) デブに不思議のデブなし

ダイエット情報に目がない。友人と会うと、大抵は他人の悪口かダイエットの話をしている。「ガセリ菌SP株ヨーグルトで痩せた」とか「ミドリムシやチアシードがいい」とか、要は林真理子さんが毎週エッセイで書いているような話だ。僕はそれほど太っている訳ではないが、いつ親方体型にならないとも限らない。この数年、よく話題に上がるのは腸内細菌。一般的に言われるのは、「消化を良くして代謝を上げれば、太らなくなる上に、肌も綺麗になるし、花粉症も怖くない。だから、乳酸菌と食物繊維の摂取が大事だ」ということだ。中には、「『○○を食べたい』といった欲望や“我慢強い”といった性格まで、人間の行動自体が、かなりの部分、腸に支配されている」と考える研究者もいる。事実、世の中は乳酸菌ブームだ。ヤクルトの価値が見直され、チョコレートにまで乳酸菌が入っている。その乳酸菌界隈で最もラディカルな施術が糞便移植である。健康な人の便を患者の腸に注入するのだ。本来は腸疾患の為の治療法で、日本では潰瘍性大腸炎の患者に対して臨床例があるくらい。だが、海外では「肥満や糖尿病に効果がある」という研究もあり、ダイエット目的で興味を持つ人も多い。そのうち林真理子さんあたりが試しそうだが、冷静に考えたら凄い時代になったものだ。ダイエットの為に便移植を考えるなんて。

何故、ここまで腸内細菌が話題になっているのだろうか? それは、兎に角わかり易いから。「腸が重要だ」というのは何となく納得し易いし、「兎に角、乳酸菌や食物繊維を摂ればいい」という解決策も単純明快だ。昔から流行したダイエット法や健康法というのも、兎に角シンプルだった。りんごダイエット・紅茶きのこ・ダイエットスリッパ・レコーディングダイエット・糖質制限等、要は一点突破主義である。良心的なお医者さんは、ダイエットについて聞かれたら、規則正しい生活と運動、腹八分目を心がけるといったことを指示すると思う。だが、一般的に言って、肥満に悩むのは、自制心が弱く、我慢できない人たちだ。今更、そんな優等生のような生活はできない。そこで縋るのが、「これさえすればいい」というシンプルなダイエットなのである。だが、毎年のように新しいダイエット法が流行するのは、太っている人たちの自制心の弱さを証明している。いくら「これさえすればいい」と言われても、続かないものは続かないのだ。「デブに不思議のデブなし、痩せに不思議の痩せなし」という名言があるように、デブは兎に角自己責任だと考えられがちである。しかし、行動経済学にとても残酷な研究がある。子供の頃、夏休みの宿題を後回しにしていた人ほど、大人になってからの肥満率が高いのだという。要は、子供の頃に自制心が身に付かなかったら、大人になってからはもう手遅れだというのだ。その話を聞いてから、太っている人に優しくしようと思った。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。


キャプチャ  2017年6月22日号掲載
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