【Korea Risk】(05) 国際力学の変化が試す日本の覚悟

20170623 06
この1ヵ月、北朝鮮に対する国際的圧力は尋常ではなかった。それでも北朝鮮は、真珠湾を攻撃した日本と違って、向こう見ずな攻撃は仕掛けてこない。国際力学が当時の日本とは違うからだ。北朝鮮の命運を握るのは、攻撃したくとも金正恩国務委員長の所在すらつかめないアメリカではない。原油供給をほぼ一手に握る中国だ。嘗て、アメリカが日本を敵視したのと違って、今の中国は北朝鮮と敵対していない。それどころか、朝鮮戦争で自国の兵の血を流してアメリカ軍の攻勢をはね返した絆は、中国の軍と共産党に強く残る。社会主義諸国との外交を担当する中国共産党にとって、北朝鮮は冷戦終了後も残された数少ない外交利権の相手でもある。だから中国にとり、北朝鮮の核は容認できる。隣のロシアにある多数の戦術核兵器同様、友好国の核は不問に付す。中国がどうしても防ぎたいのは、北朝鮮の崩壊。それは別に、金正恩を守る為ではない。北朝鮮が混乱すれば、難民が中国に多数押し寄せる。国境地方の延辺朝鮮族自治州に80万人ほどいる朝鮮系住民と合流して、騒ぎを起こすかもしれない。金政権崩壊に乗じて、米韓主導で朝鮮半島が統一されると、中国は在韓アメリカ軍と直接対峙してしまう。アメリカは、北朝鮮の核ミサイルが自国に届き得る危険性に憤り始めた。だが、軍事制裁に踏み切れば日韓両国が煽りを食うので、中国に核問題の処理を押し付けている。その期待に応えないと、中国はアメリカから貿易制裁をされてしまう。北朝鮮を生かさず殺さず、且つ米中双方の面目も保てる落としどころを見つけないといけない。

この中・米・北という“三つ巴”の外で、日本は韓国やロシアと共に、北朝鮮問題における存在の耐えられない軽さを噛み締めている。ミサイルが飛んできてもおかしくないのに、日本の風景は平和そのもので、野党が安倍政権の安保政策を批判するビラ配りをしている。韓国は、「ソウルを火の海にしてやる」と脅されてもどこ吹く風。大統領選に国が混乱する兆しもない。ロシアはウラジーミル・プーチン大統領の1期目初期、北朝鮮との関係を不釣り合いなほど良くして、自分の数少ない外交カードとしたが、その後、関係は停滞している。「万景峰号のウラジオストク航路就航は、北朝鮮に外貨収入を齎し、ロシアの対北カードになる」とみる向きもある。だが、これは北朝鮮経由で中国人を大挙して極東のカジノに運ぼうと、ウラジオストクの実業家が金儲けを狙っているだけだ。ロシア政府が圧力をかけるまでもなく、中国政府が中国人観光客を乗船させないだろう。客がつかない以上、暫く就航するまい。北朝鮮問題では、中国が一時抜け駆けをして、ロシアが鼻白む場面があった。先月中旬、国連安全保障理事会が北朝鮮非難の声明を検討した際、中国は声明容認に回り、ロシアだけが反対して浮いてしまった。そこで先月下旬、習近平国家主席の腹心である党中央弁公庁の栗戦書主任が、クレムリンでプーチンと会談。「中露関係は不変」という習のメッセージを伝えて、この局面を取り繕った。しかし、プーチンは今月初め、アメリカのドナルド・トランプ大統領に電話して、シリア・北朝鮮問題の話し合い解決促進を持ち掛けることで、米露関係を修復。こうやって、自力で米中とのバランスを維持してみせた。周辺がバランスゲームを展開する中で、近日中には戦争は起きるまい。米・中・北朝鮮が合意に達し、日韓露を交えた6ヵ国協議で追認されるだろう。落としどころは金体制という現状維持、そして北朝鮮の核兵器も現状のまま凍結というところだろうか。今回の危機が日本に残した課題は大きい。日米同盟は抑止力として有用だが、アメリカ軍空母派遣の二転三転で、日本の安全をアメリカの胸三寸に依存することの限界が露わになった。日本独自の核抑止力の議論はタブーだが、自衛隊の存在を明記する形での憲法改正は政治日程に上ろうとしている。国際力学の変化が、日本の政局をも動かそうとしているのかもしれない。 (本誌コラムニスト・外交アナリスト 河東哲夫) =おわり

               ◇

朝鮮半島情勢の緊張が解け切らない中、韓国の大統領選で対北朝鮮政策は主要な争点ではありませんでした。周辺国からすれば意外かもしれませんが、今回に限ったことではありません。「自分たちの問題ではあるが、米中の頭越しに韓国が半島問題を主導できる余地は無い」と、知人の韓国人は諦めムードでその理由を語ります。ただ、そうした環境に慣れてしまったせいなのか、外交政策全体が他国任せになっている感は否めません。 (本誌 前川祐補)


キャプチャ  2017年5月16日号掲載
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テーマ : 北朝鮮問題
ジャンル : 政治・経済

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