【JR・栄光と苦悩の30年】(11) 引き金は新幹線投資と人件費…監査報告書が暴く国鉄破綻

投資や人件費抑制といった、民間企業なら当たり前にやることを国鉄はできなかった。毎年度公表されていた監査報告書にある財務情報を基に、巨艦が沈没していくさまを分析してみた。

20170626 16
資産を大きく上回る債務超過額、25兆円強に上る長期債務(※潜在債務は37兆円)――。分割民営化直前の1987年3月末の旧日本国有鉄道(以下“国鉄”)のバランスシートは、惨憺たるものだ。民間企業なら、これほど悪化する前に倒産している。今回、1957年度以降の国鉄の監査報告書にあるバランスシート等を基に、財務面から破綻の構図を紐解いてみる。国鉄破綻の要因は、大きく分けて3つある。それは、①財政状態を無視した新幹線建設等の過大な設備投資②高齢化した職員の退職金・年金負担の増加③その結果としての債務増大による利払い費の膨張だ。先ずは、過大な設備投資。国鉄は1964年度に、最終損益で赤字に転落した。その原因は、自動車輸送の進展で貨物収入が伸び悩み始めていたのに対し、ベースアップ等による人件費の増加、東海道新幹線開通に伴う減価償却費増加等で経費が増えたことにあった。民間企業なら、損益が悪化すれば設備投資を抑制する。しかし、国鉄は違った。設備投資を1960年代後半以降拡大し、1978年度から1981年度までは毎年度1兆円を超えた。その3割から4割を占めたのが、山陽・東北等新幹線の建設費だ。国や地方自治体の公共事業であれば予算から支出されるが、国鉄は自らの資金で投資資金を賄った。

赤字であるから、投資資金に加え、通常経費の支払いに充てる資金も借りなければ資金繰りがつかない。結果として、右図の長期債務のグラフに見るように、借入金は雪だるま式に膨らんだ。次に、何故退職金・年金の負担が膨張したのか? 戦後、多数の復員兵を職員として受け入れたこともあり、国鉄の人員構成は歪みが大きかった。1975年度当時、40~49歳の職員数が15.9万人と、全職員約43万人の約3分の1強を占めていた。10年後の1985年度には、50歳以上の職員は僅か2.7万人にまで減少している。希望退職を募る等して人員削減を進めてきた為だが、その副作用として退職金の支払額が増大した。1975年度には、50歳以上の職員が9万3000人いた。この世代の退職に伴って、共済組合の年金の支払いも急増し、国鉄の共済組合への追加拠出額が拡大した。1970年代後半以降の人件費増加の大半は、退職金と共済組合への交付金(年金)増大によるものだった。1975年度から1985年度までの人件費総額20兆円の約3分の1が、退職金と共済組合への交付金だ。人件費の膨張が損益を悪化させ、債務が増える。債務増大で利払い費が増えて損益が悪化し、更に債務が増えるという悪循環から、国鉄は抜け出せなくなった。右上グラフを見てほしい。1980年代前半には、人件費と利払い費の合計で、ほぼ売上高(営業収入)を食い潰す状態になってしまった。1985年度には最終赤字額が1兆8477億円にも上った。国鉄の監査報告書においては、損益悪化が顕著になった1970年代以降、設備投資資金を借り入れに頼ることで、収益が圧迫されることや、人員構成の歪みによる退職金・年金の負担増による人件費膨張が何度も指摘されていた。にも拘わらず、設備投資が抑制されたのは、東北・上越新幹線が開通した1982年度になってから。1970年代後半以降、職員数削減も進めはしたが、焼け石に水。終ぞ退職金・年金制度の改定は行われることはなかった。こうして“巨艦”国鉄は沈没し、分割民営化の日を迎えることとなった。


キャプチャ  2017年3月25日号掲載
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