“中国の夢”に漂う世界の悪夢――本質的には失地回復主義、華人・華僑にも参画求める

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欧米が世界的リーダーシップを譲り渡す例は、毎週起きる出来事になったように思える。あとに残された空白に、欧米に取って代わる国を模索するのは自然なことであり、北京の高級官僚を含む多くの人にとって、中国が最もそれらしい存在に見える。だが、中国がなりたがっている類の世界のリーダーについて、我々はどれほど知っているのだろうか? 先ず、中国の指導者が公言している意図から見ていくのが一番だろう。2012年に中国共産党の最高指導者の座に就いた際、習近平国家主席は「“中国の夢”を実現することが自分の任務だ」と宣言した。中国政府の公式訳によれば、習主席はこれを“great rejuvenation of the Chinese nation(中華民族の偉大な復興)”と定義している。それ以来、このフレーズは嫌になるほど繰り返され、中国がやること全てを裏付け、正当化するようになった。ヨーロッパへ至る新たなシルクロードの建設、人民解放軍の急激な拡大、南シナ海の係争海域での人工島軍事化――。これら全ては、輝かしい復興任務の一環だ。英語を話す人間にとっては、“rejuvenation(若返り・活性化)”という言葉には肯定的な響きがあり、全ての国は平和的な努力によって自己を活性化する権利がある。

だが、この極めて重要なスローガンの公式訳は、著しくミスリーディングだ。中国語では“中華民族偉大復興”で、重要なのは“中華民族”の部分だ。中国共産党のプロパガンダによると、これが“Chinese nation(中国国家)”となる。完璧ではないが、それより正確な翻訳は“Chinese race(中国系人種)”だろう。中国では、まさにそう解釈されている。中華民族という概念は、形式上はチベット人・イスラム教徒のウイグル族・朝鮮民族を含め、公式に認定されている56民族全てを包括しているが、ほぼ例外なく、人口の9割以上を占める多数派の漢民族のことを意味すると理解されている。中華民族について最も興味深いことは、この言葉が非常に意図的且つ具体的に、世界中どこにいようと、先祖がどれほど遠い昔に中国本土を去っていようと関係なく、中国人の血を引く全ての人を組み込むことだ。「中華民族は1つの大家族であり、母国への愛情や祖国への情熱は、中国人を祖先に持つ全ての人の血に注ぎ込まれている」。中国の李克強首相は最近の演説で、こう断言した。この概念は香港でみられる。香港では最近、自分が少なくとも部分的には“中国人”であることを当局に説得できる訪問者は、誰でも市民権を得られる。一方で、家族が100年以上香港で暮らしているインド系や白人イギリス系住民は、決して完全な市民権を与えられない。北京の一部の理論家は、「“主権的国民国家”という現代の概念は、欧米が作り上げた不当な概念であり、『中国の皇帝が中心に位置し、紫禁城から地球の隅々まで権力が及ぶ』という伝統的な中華思想の“天下”の概念に反する」とさえ主張している。人種に基づく国家復興と、明白なる使命という考えは、20世紀の歴史や、それ以前のヨーロッパの植民地拡大を思わせる不快な響きを持つ。中国共産党の翻訳者が、“race(人種・民族)”ではなく“nation(国家・国民)”というミスリーディングな公式訳を選んだのは、この為だ。

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多くの華人・華僑にとって、この言葉の誤魔化しは不安を和らげてくれない。国籍や中国共産党に対する考えに拘わらず、彼らは次第に“偉大な復興”に貢献することを求められるようになっている。李首相は、「投資・技術開発・貿易に関する中華人民共和国の目標達成に手を貸すことは、中国人の血を引く全ての人の責務だ」と述べた。首相はまた、「中国系の人々は、世界中で伝統的な中国文化(※中国共産党が定義する文化)を促進し、台湾独立に断固反対することも求められる」と語った。順守の見返りに、中国共産党は中華民族の“偉大な家族”の仲間入りをする可能性と、中国の継続的な経済成長に参加するチャンスを与える。だが、中国共産党に対する子としての義務を拒否する人は、“民族の裏切り者”のレッテルを貼られ、在外中国人社会で中傷され、中国本土訪問を禁じられる恐れがある。中国の近隣諸国にとっては、復興のレトリックは更に明白な意味を持つ。過去の王朝・皇帝の下で、これら近隣国の現在の領土の大部分が中国によって征服・支配された。中国の偉大な復興の論理は、本質的に失地回復主義であり、中国が正当なレベルの権力・影響力、更には領土を取り戻すまでには、未だ長い道程があることを前提としている。諸外国にとって危険な課題は、「どの段階で中国が復興のピークに達したと感じるのか、そして中華民族の偉大な家族に入っていない全ての人にとって、その世界がどんな風に見えるのか?」ということだ。 (Jamil Anderlini)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年6月22日付掲載⦿
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