香港でくすぶるアグネス・チャン氏政府起用説――教育関連ポストの可能性が浮上、“中国政府寄り”と民主派に警戒論も

20170628 01
香港出身で日本で活躍したタレントのアグネス・チャン(陳美齢)氏(61・左画像)を、香港政府が教育局長(閣僚)等教育関連のポストに起用するという観測が燻っている。行政長官に当選した親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏(59)と面会し、教育改革に関する提言をしていたことが明らかになった為だ。アグネス氏登用への賛否両論は、教育システムを巡る香港の分断も浮き彫りにしている。アグネス氏は8日、香港のラジオ局のインタビューで、林鄭氏から教育局長への就任を要請されたかについて、「仮定の質問には答えられない」とした上で、林鄭氏と共通の知人を交えて複数回会ったことを認めた。提言に関心を示した林鄭氏に「香港への思いはありますか?」と尋ねられ、「勿論あります」と答えたという。少女時代に広東語ポップスの歌手としてデビューし、日本に活躍の場を移したアグネス氏。テレビ局への子連れ出勤の是非を巡り、日本で議論を巻き起こした1987~1988年の所謂“アグネス論争”を機に、教育問題への関心を強め、スタンフォード大学大学院で教育学の博士号を取得した。家庭教育にも熱心で、2016年に出版した『スタンフォード大に3人の息子を合格させた50の教育法』は、中華圏でもベストセラーとなった。アグネス氏の動静が香港で関心を集めるのは、教育改革が政治的な争点になっている為だ。議論の中心は、小学3年生・6年生・中学3年生の全生徒が強制的に受けさせられる共通試験『TSA』の存廃だ。TSAは、中国語・英語・数学の3科目で生徒の学力を測定し、教育内容を改善する狙いで、2004年に導入された。

だが、現実には小中学校をランク付けする手段と化しており、どの学校も上位に入ろうと試験対策に血道を上げている。公立小で働く女性教師(32)は、「教師は補習に追われ、成績の悪い生徒の親は家庭教師を探さなければならない。関係者全員に重荷になっている」とこぼす。特に、小3段階での実施には、「幼い子供に過度のプレッシャーを与えている」との批判が強い。保護者団体からは廃止を求める声が広がるが、現職の梁振英行政長官は要求を突っぱねてきた。アグネス氏は、4月に新刊『香港の学生に幸せを取り戻す40の教育提案』を発売。「香港の教育制度はペーパー試験偏重で、富裕層だけがエリート教育を受けられる等、社会階層の固定化を招いている」と批判した。TSAについても、強制参加を止めて選択制にする等、抜本的な見直しを提言している。“社会の亀裂の修復”を最優先課題に掲げる林鄭氏も、長官選の公約で小3のTSAの廃止に前向きな姿勢を示していた。「アグネス氏の登用は、教育政策を転換するシグナルになる」との見方もある。一方、民主派の間では、アグネス氏の起用を警戒する声が強い。2014年秋に長官選の民主化を求める学生らが道路を占拠した『雨傘運動』に対し、アグネス氏は「香港の民主主義を破壊する」と批判する等、中国政府寄りの発言を繰り返してきた為だ。中国政府には、「民主化運動や香港独立論が若者に広がるのは、香港の教育システムに問題があるからだ」として、「中国人としての愛国心を養う“国民教育”を義務化すべきだ」との意見が燻る。アグネス氏も「独立を志向する本土派の若者が、立法会(議会)議員の就任宣誓で中国を“支那”と発言したのは教育の失敗だ」と主張し、「抗日戦争等歴史教育を強化すべきだ」と訴えた。国民教育を“洗脳教育”と批判し、義務化に反対してきた民主派との溝は深い。香港政府の閣僚に就任するには、中国政府の承認が必要だ。日本やアメリカでの生活が長く、イギリスのパスポートを保持しているとされるアグネス氏の閣僚就任を北京が容認するかは、不透明感も強い。アグネス氏も「教育局長にはならないだろう」と語る一方、顧問等他のポストで次期政権に協力する可能性は否定していない。香港返還20周年にあたる7月1日に発足する新政権の陣容が固まるまで、アグネス氏の処遇を巡る論争は続きそうだ。 (香港支局 粟井康夫)


⦿日本経済新聞電子版 2017年5月12日付掲載⦿
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