【東京五輪後の地方経済を読み解く】(06) 「なぜ地方中心部活性化は失敗を続けるのか」――木下斉氏(『エリアイノベーションアライアンス』代表理事)インタビュー

20170703 05
「戦後、我が国の地域政策は、長期に亘る経済成長・財政拡大を背景に、地方への再分配政策の一環として、政治的・行政的に行われてきました。その為、長期の採算性等は後回しにされてきましたが、それこそが地方の財政悪化に繋がっています。しかしながら、施設開発は毎年の維持費・大規模修繕費・解体費等合計すると、開発費の3~4倍に上ります。つまり、国が支援して、地方自治体が開発をやればやるほど、財政負担が増加してしまうのです。今後は開発費中心の議論ではなく、しっかり将来の人口減少・財政計画を基にした維持費中心の議論が必要です」

――地方都市の構造変化を促進したのは、郊外部の道路開発、大規模店舗の出店規制法である『大規模小売店鋪法」(※1974年施行)の改正です。
「戦後、日本経済が国際競争力を回復する中で、アメリカへの輸出量が増大し、貿易摩擦が生じました。1985年のプラザ合意による円高誘導で、摩擦に歯止めをかけようとしました。また、日本はアメリカから内需拡大を要請され、公共事業に重点を置いたのです。1990年代に国が財政投融資等で内需拡大を促進、地方自治体が郊外にバイパス等の道路整備をどんどん進めました。既に公共施設の郊外移転は1970年代から開始され、大学病院等も次々と郊外へと移動し、地方都市は広大な都市面積を抱えるようになります。単に道路整備しただけでなく、地方自治体は整備費を捻出する為、ロードサイドの土地を売却します。それらに次々と東京や海外資本の大手チェーン店が出店しました。そして、2000年の大店法廃止で、更にそれが加速したのです。地方が財投を活用したり、交付金と自己負担で道路を整備して維持費を抱えつつ、更に地元で回っていた消費が地元外資本のチェーンに吸い上げられていく経済構造が構築されました。更に、ロードサイドだけでなく、都市計画法(国土交通省)と農地法(農林水産省)がバラバラに存在していることからも、農地転用での出店も相次ぎました。ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に当選し、安倍首相が面談に行きましたが、1980年代の日米貿易摩擦が、地方経済構造を大きく変える大店法改正や、内需拡大の為の郊外開発等、地方衰退のトリガーの1つになりました。国対国の交渉は、実は地方経済にも大きな影響が出ることを意識しておかなければなりません」

――地方の商店街は惨憺たる状況のところが多いですが、何故このようになったのでしょうか?
「私の実家も元々、商店をやっていました。また、1990年代後半から商店街の地域活性化事業に関わってきたので、この30年ほどの変化は記憶に色濃いです。20年ほど前くらいまでは、地方都市の中心部はまだまだ残っていました。ところが今は、県庁所在地レベルではもう完全に衰退しきり、政令指定都市レベルでもままならないところが増加してきています。日本の商業は、戦後物資が不足する中で、戦地からの引き揚げ、更にベビーブーム等で人が増えて、物資の需要が高まった為、商業・流通が一時期めちゃくちゃ儲かったのです。つまり、利益をかなり上乗せして販売しても商品は売れる。商売で問われるのは『どう売るか?』ではなく、『どう仕入れるか?』にありました。売れるのは当たり前だったのです。一方で、そのように儲ける商売に対する社会的な目も厳しく向けられていた背景もあります。そして1960~1970年代には、駅前を中心に大型の百貨店やスーパーマーケットが登場し、商店街の構造が大きく変わり始めます。当時は大店法もある中で、後に日米構造協議でも問題視される法廷外の“出店前調整”が大型店と商店街とで行われるようになり、自治体側が『地元商業者の同意の判子が無いと出店許可申請が出せない』という運用になりました。これが徐々に、地域商業における利権となっていきます。『どうすれば商店街が繁栄するか?』という議論ではなく、商店主たちが連帯して利権調整をし、できれば大型店に出店させてもらったり、補償金を貰ったりするということに躍起になるという誤った構造が生まれていきます。見た目には大型スーパーとの共存の時代ですが、商店街のクオリティーもありました。戦後のものが無い時代から、ものが溢れ、消費者が選択できる時代になったにも拘わらず、設備投資や業態変更をする商店は少なかったです。私の実家も同じように、昔ながらの商売から脱却できていませんでした。そうこうしているうちに、商店街のある駅前に出てきていた大型店が、校外開発によって駅前から郊外にシフトし、規制も緩和され、商店街はその中で経営刷新もせずにきた為に、地方都市の構造は一気に変わっていきました。それでは、商店街は本当に困っているかと言えば、そんなこともありません。殆どの店主たちは良い時代に不動産を買って持っていますから、不動産収入で生活している人が沢山います。一時期は商店街にチェーン店や消費者金融をテナントと入れて儲けましたが、最近ではそれさえ入らなくなり、シャッター商店街となっている都市は多くなりました。しかし、不動産オーナーたちは元々の蓄えもある為、シャッター商店街のまま放置しても生活は十分に成立するのです。その結果、商店街は商業としては壊滅的な状況になりました。不動産所有者となった嘗ての商業者が、自らの生活に不安が無い為、郊外との競争が激しくなったにも拘わらず、経営努力を怠り、新たな事業者を排除した結果が、今の地方都市商店街とも言えます。積極的に不動産を貸し出す、売り出さないと生活が厳しくなるように、不動産を放置し難い税制、活用提案する民間事業等が求められます」

20170703 04
――木下さんの『地方創生大全』(東洋経済新報社)を読むと、現在も地方政策が失敗したケースが目立ちます。
「地方政策を改善する方策は結構、もうクリアなんですよね。失敗は山ほどしてきているので、改善措置はいくらでもあるのですが、後は改善されると都合が悪くて反対する人たちとどう折り合いつけるかにあります。例えば、失敗する1つは、47都道府県・約1700の自治体の皆が“同じネタ”を選んで、横並びで同じことに取り組む。多くの地域は自分でネタを考える力が無い為、他の地域の成功事例を探して、その中から選択する。同じネタを選択して皆で同じことやるから、コモディティーとなり、特段そこの地域である必要性を消費者や利用者は感じない。当然、特別ではないものに大した対価は支払わない。ゆるキャラ・特産品開発・地域ブランド開発・プレミアム商品券等といったものは、このようなどこでもやっている取り組みとして有名ですね。これらについても、成功事例を基にして“全国で真似する為の予算”を国が用意し、自治体は自ら『よくわからない』と言って結局はコンサルタントに外注し、更にコンサルタントも自分でやったことはないから、先行事例を調べて、見よう見まねで自治体業務を設計する。当然、そんな程度のやり方では殆ど失敗する訳です。“成功事例を全国に広げる”という政策のやり方を止め、自治体の外注に関しても制限をかける必要があります。外注するよりは、研修費を出して職員が自ら考えるようにしないと、地域の実情にあった政策等は出てきません。その地域の資源で特化できる事業を考えることなく、単に『補助金が出るから』等という理由で地域活性化事業を選択すれば失敗し、その負債が地方に積み上がっていくことを止める必要があります」

――地方都市の商業等が復活する道は無いのでしょうか?
「いえいえ、そんなことはありません。近年では、地方都市でも新たな事業は続々と立ち上がっています。しかし、昔のような“商店街”ではありません。新潟県魚沼郡の里山十帖のように、地域食文化をテコにした独自の宿泊・飲食サービスによって、海外からも人を呼び込む事業があります。瀬戸内海でも、せとうちホールディングスという会社が、戦後初の水上飛行機による遊覧飛行等を開始して、こちらも国内外から人を集めています。ものが無い時代にものを売るという地方商業から、ものはあり余るけど“この時・この場所”でなければならないサービスを作り出し、ものではないもので外貨さえ獲得する地方の新たな商売の在り方が生まれてきています。都市中心部でも、行政主導の再開発は失敗しているものの、一方で路地裏等では既存物件を活用したリノべーション事業により、ゲストハウスや飲食店が多数集積して、民間主導で成果を納めているエリアが続々と誕生しています。人口縮小社会において重要なのは、拡大社会を引きずって失敗している政策や事業を止めて、人口縮小局面でも新たな成長を期待できる政策や事業にシフトすることです。既にその芽が続々と出てきています。過去の失敗を活かし、行政主導型から民間主導行政参加へと転換し、成果を上げる事業を基にして、政策変更していくことが期待されます」 (聞き手/『週刊ダイヤモンド』嘱託記者 大根田康介)


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