【儲かる農業2017】(15) あなたはどのタイプを選ぶ? 先輩ファーマーの就農実録

ガッポリ農家か、コツコツ農家か。それとも、農家以外の道を選ぶのか――。ここでは4タイプのモデルを提示した。先輩の良いところを吸収して、就農計画の策定に役立ててほしい。

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①ガテン系農家(年収400万円・41歳)…大手外食から独立、ズブの素人が抱く年収1000万円の野望
販路開拓や農地取得に人的ネットワークを駆使したり、綿密な事業計画を立てたり…。ビジネスマン時代に培ったスキルを最大限に活用しながら、農場を経営している新米農家がいる。宮﨑康介さんは就農3年目。2014年4月、長野インターチェンジ(長野県)の近くに『信州松代みやざき農園』を立ち上げ、多様な有機野菜を栽培している。宮﨑さんは大手外食チェーンの出身。店長として主要な経営指標を定点観測しながら店舗を切り盛りしたり、広告宣伝部では商品の効果的な訴求の仕方を覚えたりと、「今の農場経営に役立つ経験を一杯させてもらった」(宮﨑さん)と振り返る。以前から農業に関心があり、「農家になろう」と決意。「ダラダラしていては時間の無駄」(同)なので、就農準備期間は2013年4月からのぴったり1年間と定めた。妻の実家の縁で、就農地は長野県に決定。平日は、長野県農業大学校でみっちり研修を受けてから、アルバイトをして、週末は東京の農業準備校(アグリイノベーション大学校)へ新幹線で通学するハードな生活を送った。この2校で、農業技術の基礎については徹底的に頭に叩き込んだ。有力農家の研修にも足繁く通い、寸暇を惜しんで準備作業に没頭した。2014年4月、有言実行でみやざき農園をオープン。「2020年に年収1000万円を達成する」という壮大な目標も掲げた。年収1000万円ともなれば、個人や家族経営では無謀な数字。大体の素人就農者は、農業生産法人に就職したり、有力農家に丁稚奉公したりすることで、経営ノウハウを習得してから独立するものだ。だが、宮﨑さんは違った。貯金は学費や交通費と化して底を突き、まさに“カネ無し・コネ無し・農地無し”からの就農生活だった。宮﨑さんの農場経営は、実にユニークだ。まるで高校生のように毎日学校へ通い、教科書通りの就農準備をしたにも拘わらず、独立後は学校では決して習わないような独自の経営方針を貫いているからだ。例えば、栽培作物の種類の多さが尋常ではない。今年度は、50品目100品種の野菜を作る予定(※左下画像)。トマトだけで17品種、大根だけで10品種もある。ハーブやイタリア野菜等、日本では馴染みの無い品目も目立つ。当然ながら、少品種を大量に作るほうが生産効率は良い。儲かる農業のセオリーから逸脱しているが、「未だ世に知られていない野菜が一杯ある。生産性ばかり気にしていたら仕事が楽しくないでしょう?」(同)と涼しい顔だ。100品種の有機野菜を手掛けていることが口コミのネタになるし、珍しい野菜はレストランからの引き合いも強い。確かに、生産性を超えたメリットも少なくない。また、販路開拓や農地の契約等重要な局面では、宮﨑さんは人的ネットワークを最大限に活用している。地元の農業大学校へ通ったのも、東京の民間学校へ通ったのも、「将来の経営の為の先行投資と割り切っていた。一番欲しかったのは人脈だ」(同)。一見、型破りの経営にも思えるが、実は、外食時代の経験を生かして、コスト管理は徹底している。「経費として使っていいのは、売上高見込みの半分の水準まで」と決めている。綿密な事業計画が練られているのだ。就農3年目にして、年収は400万円と右肩上がりに伸びているが、「目標は500万円だったので未達。作物の栽培量や夏場の生産対率に課題があった」(同)と言う。戦略は大胆に、計画は緻密に。脱サラファーマーが年収1000万円を達成する日は、案外近いのかもしれない。

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②コツコツ農家(就農準備中・34歳)…ITメーカーから転身、理系センスを生かした“石橋叩き”計画
東京電機大学の大学院を経て、ナースコールメーカーに就職していた星裕之さんが農業に目覚めたきっかけは、東日本大震災だった。コンビニの棚から品物が消え、都市機能の麻痺をまざまざと見せつけられた時に、自給自足で生きる農家という職業に強く惹かれたのだ。それまで農業で生計を立てるなど考えたこともなかったが、母方の祖父が農家をしていることが影響しているのかもしれない。現在、年齢が一回りほど違う若い学生に交じって、日本農業経営大学校へ通っている(※受験資格は入学時の年齢が40歳以下)。2年間の全寮制で、1期当たりの学生数は僅か20人だ。星さんの朝は早い。5時には起床し、寮の掃除。講義は9時から17時過ぎまで。体力作りも兼ねて、通学手段は自転車。夕食前に10㎞ほどジョギングをしている。日本農業経営大学校の強みは、経営者養成を狙いにしているところ。大手食品メーカー首脳や農業ベンチャー社長等、講師陣も豪華で、2年の集中講義で腰を落ち着けて就農準備ができる。在学中に2度の外部実習があるのも魅力だ。農業生産法人や農業以外の企業等の実習先は、学生が自分で見つけることになっている。星さんの就農プランは、小松菜やパクチー等、早期に収穫できて現金化できる葉物野菜と、高収益のアスパラガスを組み合わせて栽培し、経営を軌道に乗せるというもの。理系出身らしく慎重な計画である一方、得意のITを農場経営にも導入する予定だ。「将来的には、信州上田周辺で健康と観光を組み合わせた“へルスツーリズム”にも挑戦してみたい」(星さん)と将来構想について語るように、既に独立に向けた準備は万全のようだ。

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③ガッポリ農家(年収800万円以上が目標)…先ずは法人に就職、凄腕経営者からノウハウを盗め
年収800万円以上を稼ぐガッポリ農家と、年収300万円そこそこ止まりのコツコツ農家の差は、「プロ野球チームに入団するのか、草野球でプレーするのかの違いぐらい大きい」と言い切るのは、農業生産法人『トップリバー』の島崎秀樹社長。年収800万円以上のガッポリ農家を目指すならば、将来的には(従業員を雇う)組織経営をする手腕を備えていなければならない。個人経営に毛の生えた程度ではボロが出てしまうだろう。ガッポリ農家になる為の最短ルートは、有力な農業生産法人へ就職することである。右図は、人材の受け入れに熱心な農業生産法人の一部を抜粋したものだ。どの法人も優良法人ばかりで、経営ノウハウを伝授してもらえることは間違いない。但し、各法人によって経営方針やカルチャーは全く異なる。経営層の育成に力を入れるトップリバー、高学歴者が殺到している『サラダボウル』、“来る者は拒まず”で誰でも受け入れる『ワールドファーム』といった具合だ。丁度トップリバーでは、『富士見みらいプロジェクト』と銘打ち、「2020年までに農場100haで累計285人の雇用を生む」という壮大なプロジェクトを実施している。トップリバーが経営ノウハウを就農者たちに伝授し、独立支援をサポートしていく仕組みだ。このように、独立支援に積極的な法人がある一方で、「じっくり社内で幹部候補生を育成したい」と考える法人もある。『イオンアグリ創造』等大手資本系の企業は大体後者のタイプで、“雇われの身”でも待遇は良いのが特徴だ。

④“非”農家のお仕事(年収1000万円が目標)…ビジネスエリートがこっそり通う“農業版MBA”
セカンドキャリアは農業で――。『マイファーム』が運営する農業スクール『アグリイノベーション大学校(AIC)』が、中高年のビジネスマンの間で人気を集めている。通常コースの授業料は1年で約52万円と安くはないが、働きながら週末に通える手軽さが受けている。また、技術一辺倒の全国の農業大学校とは違い、経営・技術・農業環境について総合的に学べることから、“農業版MBA”とも言えるスクールだ。2011年のスクール創立から6年。「最近は、(農家志望ではなく)農業関連ビジネスを立ち上げたいという受講者が増える傾向にある」(マイファームの木本一花執行役員)のだとか。嘗ての農業ブームには、不景気で職にあぶれた人が農業へ流れてきた側面もあった。だが、今は「農業にチャンスがある」と判断して、能動的にビジネスマンが参入している。1月末の晴れた週末、AICの課外研修に同行させてもらった。会場は、東京都田無市で150種類以上のハーブを栽培している『ニイクラファーム』。代表の新倉大次郎さんが、就農初心者にもわかり易く、“都市型農業”のイロハや歴史について丁寧に教えてくれる。研修に参加していた50代のビジネスマンは、「農家には定年が無く、一生続けられる仕事。年収は下がるけれど、『今の会社にしがみ付くよりもよっぽど楽しくなる』と思って。新倉さんのように都市型の農家を目指したい」と言う。当日の受講者は約20人。ITメーカーや行政関係者等、現役バリバリの人が多く、彼らと交流できるのも農業志望者にとっては有益だと言えるだろう。


キャプチャ  2017年2月18日号掲載




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