【Global Economy】(43) ギリシャ、今こそ“反緊縮”…ユーロ圏復活、道は歳入増にあり

ユーロ圏は2013年4~6月期以降、16四半期連続でプラス成長が続く。2010年に深刻化した債務危機を克服して復活を遂げるのか? 焦点の1つは、危機の発端となったギリシャだ。 (本紙経済部次長 中沢謙介)

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ユーロ圏の1~3月期の実質域内総生産(GDP)は、前期比年率2.3%増と堅調な成長を記録した。深刻な債務危機が収束した2013年以降、堅調な個人消費が企業収益を増やし、設備投資に繋がる好循環が経済を押し上げている。4月の失業率は9.3%と、2009年3月以来8年ぶりの低水準となった。これらの経済指標は、ユーロ圏が全体としては債務危機の後遺症から脱し、復活しつつあることを示している。『ヨーロッパ中央銀行(ECB)』は、量的緩和策の縮小を視野に入れる。だが、国毎にみると、回復の度合いにはばらつきがある。端的に表れているのが失業率だ。ドイツ3.9%、フランス9.5%、イタリア11.1%、スペイン17.8%、ギリシャ23.2%。域内の経済的な南北格差は、なお歴然としている。南北格差は、2010年に本格化した債務危機において、債権国が債務国に厳しい緊縮財政を求めることを通じて、ヨーロッパに分断を生じさせ、反『ヨーロッパ連合(EU)』勢力の台頭に繋がった。その源流となった問題こそ、ギリシャの債務危機だ。ギリシャ経済はユーロ圏全体の2%弱に過ぎないが、その債務問題は何度もユーロ崩壊の危機を招き、世界の金融市場を大きく揺るがしてきた。ユーロ圏が安定的な成長を続けるには、この問題の解決に道筋を付けることが欠かせない。足元のギリシャ経済は、今年1~3月期の国内総生産(GDP)が前期比0.4%増とプラス成長を記録し、底打ちの兆しが出てきた。しかし、債務残高はGDP比179%に達し(※グラフ①)、新たな借金をする際に払う金利の目安となる長期金利は年5%台に高止まりする。将来的に債務を減らせるかを左右する財政収支は、2016年にGDP比0.7%の黒字を計上したものの、景気が下振れすれば税収が減って赤字に転じ易い。

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債務危機を受けて、ギリシャの経済規模は26%も縮んだ(※グラフ②)。これは、1930年前後の世界大恐慌でアメリカが経験した経済の収縮に匹敵する深刻さだ。失業率は、危機前に10%程度だったものが20%超に上昇し、24歳以下の若年失業率は50%に迫る(※グラフ③)。2014年の自殺者数は、2000~2007年の平均の1.6倍に増えた。職を求めて海外に移住する人が後を絶たず、人口は2011年から2016年までの間に全体の3%に相当する約34万人減った。これは、日本の人口に置き換えれば380万人に当たる規模だ。若くて優秀な頭脳の流出は、この先長きに亘ってギリシャの成長を阻む要因となる。ギリシャは金融市場の信認を失った以上、支援を受けている間に歳出削減と増税に取り組み、財政収支を改善する必要があったことは疑いようがない。ただ、ギリシャ経済がこの間受けてきた深刻な打撃を考えれば、今後の改革の進め方については、これまでのような厳しい緊縮策を続けるべきなのか、考え直す必要がある。求められるのは成長への展望だ。税収を増やし、財政が続的に安定するという信頼へ繋がる。ユーロ圏と『国際通貨基金(IMF)』が行ってきた支援は、この視点が欠けていた。ギリシャの調査研究機関『マクロポリス』によると、ユーロ圏とIMFが2010~2014年に行った2267億ユーロ(29兆円)の支援と、ギリシャが自ら調達した資金を合わせた2544億ユーロの内、全体の51%の1310億ユーロが借金の返済と利子の支払いに消え、ギリシャが国家運営に充てることができたのは270億ユーロ(3.4兆円)、全体の11%に留まる。資金を成長策へ振り向ける余地は殆ど無かった(※グラフ④)。

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抑々、ギリシャの債務問題は、歳出規模の大きさだけでなく、歳入の乏しさにも原因がある。ギリシャの歳出規模は、1995~2007年の平均でGDP比45.9%と、ユーロ圏の47.6%を1.7ポイント下回っていた。一方、歳入規模は39.2%と、ユーロ圏の44.9%より5.7ポイント低かった。これまでに年金のカット等、歳出削減策は進めてきた。今後は、経済成長を通じて歳入を底上げする改革にも、本腰を入れて取り組む必要がある。ユーロ圏は、政治の混乱をきっかけに、経済が減速するリスクをなお孕んでいる。5月のフランス大統領選で親EUを掲げるエマニュエル・マクロン氏が当選し、反EUの流れは一服しているものの、不安定な状況が続く。9月にドイツの総選挙を控え、イタリアでは来春までに総選挙が行われる。ギリシャの歴代政権の多くは“反緊縮”ではあったが、あくまで域内残留を望む“親ユーロ”だった。このことが辛うじて通貨圏の崩壊を食い止めてきたことを忘れてはならない。ユーロ圏は、債務危機で失われた結束を再構築する象徴として、ギリシャに課してきた厳しい緊縮策を緩和すると共に、債務の負担軽減に応じるべきだ。債務を安定的に減らす為には、利子のカットと返済期限の延長が必要となる。そのことが成長と財政の持続性に対する投資家の信認を高め、自立への道を開く。政治の不安定を乗り越え、ユーロ経済が復活を遂げられるかどうか。景気回復とフランス大統領選を追い風として、経済圏の結束を具体的な形で示していけるかどうかにかかっている。


⦿読売新聞 2017年6月30日付掲載⦿

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