【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(48) 『神戸山口組』トップの微罪逮捕に見る“憲法不在”の悪しき現状

『神戸山口組』の井上邦雄組長が逮捕された。知人名義の携帯電話で機種変更契約をしたことが、詐欺罪に問われたからだ。井上組長が4代目を務める『山健組』と、筆者が所属していた2次団体は、同じ神戸市中央区に事務所を構えていた。ジョギングの途中だったのだろう。ジャージ姿の井上組長がふらりと事務所へ立ち寄られることがよくあった。お茶を差し出す若い衆にも、井上組長は丁寧に礼を言う。ただ座っているだけで、特別な空気を纏っているように感じられる。いつも物静かで温厚な人柄の井上組長を、一言で言い表すなら“質実剛健”だ。そんな井上組長が微罪で逮捕されたのである。この事件では譲が被害者なのだろうか? どこに法益侵害があるというのだろう? 現在、暴力団の構成員であれば、携帯電話の契約はおろか、銀行口座の開設や賃貸住宅への入居、ガスや電気の供給すら受けられない。これは暴力団組員の経済活動の自由を奪い、生存権さえ脅かすものである。そして、この制限の根拠となる法律が暴力団排除条例だ。「暴力団の影響力を社会から排除し、犯罪を未然に防止しよう」という趣旨で制定された法律だが、その効果は趣旨を遥かに超え、明らかな身分差別を生んでいる。「暴力団であることが悪なのだから、脱退すればよいではないか」。そう唱える声もある。当然の意見にも思えるが、暴力団排除条例では脱退後5年以内の者も規制の対象になる。つまり、“辞めれば済む”という問題ではないのだ。暴力団対策法と暴排条例によって、確実に構成員は減っている。食っていけないからだ。ところが、脱退して正業に就いたとしても、5年間もの間、身分差別を受けては生活もままならない。

抑々、この法律や条例に正当性があるのか甚だ疑問だ。暴力団という特定の団体に規制をかける法律――これは団体規制にあたり、憲法の保障する結社の自由・思想の自由を侵害するものである。暴力団構成員にのみ特別な法律を適用することも、“法の下の平等”という憲法の基本的な原則に違反しているのは明白だ。今回、井上邦雄組長は、他人名義の携帯電話であった為、詐欺罪とされた。では、自分名義で携帯電話の契約ができただろうか? 答えは否だ。それは暴力団排除条例の“暴力団排除条項”によって、実質的に不可能な仕組みができあがっている。この条項は携帯電話に限らず、あらゆる契約において契約書に導入されている。“反社条項”とも呼ばれ、暴力団関係者でないこと、反社会的勢力に関係していないことを申告・確認するものである。暴力団であることを申告すれば、当然、契約はできない。ここで若し、身分を偽って契約すれば詐欺罪に問われる。結局、暴力団構成員は契約できないという訳だ。暴力団の構成員であっても人権はある。このように、生存権・生活権を侵害するような法律が堂々と運用されていることに、疑問を抱かずにはいられない。暴力団対策法・暴力団排除と憲法の歪んだ関係は、自衛隊と憲法の構造に似ている。自衛隊は明らかな戦力(軍隊)なのに、憲法9条2項でその保持を認めていない。日本共産党は勿論、憲法学者にも自衛隊を違憲とする者もいる。自衛隊が合憲か違憲かという議論が起きること自体が異常で、これは憲法を改正して自衛隊を明記すれば解決する話だ。それと同じで、暴力団を潰したいならば、「暴力団とその構成員は差別する」と日本国憲法に明記すればよいではないか。そうした手続きを踏む覚悟も無く、現行の法律を曲解して微罪逮捕を繰り返す警察の手法は、立憲民主主義の破壊に繋がりかねない。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年6月27日・7月4日号掲載
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テーマ : 警察
ジャンル : 政治・経済

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