『一帯一路』が中国を衰退させる日――新経済圏構想は只の“夢物語”、経済性ゼロで物流上の意味無し

20170705 01
中国の習近平政権が国運を賭ける『一帯一路』政策が本格的に動き出した。先月中旬に北京で開いた『一帯一路サミット』には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領ら29ヵ国の首脳と約130ヵ国の代表団が参加。中国からヨーロッパに至る陸と海の新経済圏構想に、沿線国は盛り上がっている。中国の資金で鉄道・港湾・道路等インフラを構築してくれる願ってもないチャンスだからだ。だが中国では、大盤振る舞いで周辺国を手懐けた“朝貢外交の21世紀版”という批判と、巨額支出への不満が静かに広がっている。一帯一路は、盤石にみえる習体制の命取りになる恐れもあるのだ。一帯一路の“一帯”は、古代のシルクロードと同じくユーラシア大陸を貫く陸路。既に『中欧班列』と呼ばれる貨物列車の運行が始まっている。重慶-デュイスブルク、義烏(浙江省)-ロンドン等、1万㎞を超える距離を2~3週間かけて結ぶ。中国で生産された衣料品・靴・鞄から家電製品が西に向かい、ヨーロッパからワイン・ウイスキー・インテリア・自動車部品が東に向かう。2011年の試験列車から数えれば、運行回数は延べ3000回を超え、“一帯”は順調に発展しているかにみえるが、実態は逆だ。「早く上海出荷の海上輸送に戻したい」。世界の雑貨調達の中心と言われる義烏には、インターネット通販事業者や大手小売り業等のバイヤーが数万人規模で滞在し、目新しい商品を見つけては世界中に送り出している。

彼らの目下最大の不満は、ヨーロッパまで貨物列車を使わされることだ。中欧班列の輸送コストは、海上輸送の5~7倍。数ヵ月先を見込んだ買い付けで急ぐ必要もないものを、割高な列車輸送にさせられてはたまらない。貨物列車1編成の積載コンテナは50~80個だが、最大級のコンテナ船は1万数千個積み。列車輸送にコスト競争力は無い。急ぎの商品なら列車では到底間に合わず、航空貨物を使う。中欧班列に物流上の意味は無い。習近平政権は、物流センター・電炉・家電組み立て・セメント・肥料工場等の多くの中国企業が、タジキスタンやウズベキスタン等“一帯”沿線国への直接投資をするよう強く求めている。「早期に実績が出なければ、一帯一路政策への信頼感が生まれず、各国が本気を出さない」(中国の政府系シンクタンク研究者)からだ。だが、景気減速で利益が落ち込み、過剰生産能力の縮小が最大の課題となっている中国製造業に、新規の設備投資の意欲は薄い。“一帯”に膨大な新規需要が見込まれるなら投資も可能だろうが、“一帯”沿線は中央アジア5ヵ国が人口6500万人、国内総生産(GDP)合計が3600億ドル、コーカサス3ヵ国が1700万人と1000億ドル。人口・GDP共に、四川省1つにも及ばない。“一帯”への政府の投資呼びかけこそ、“羊頭狗肉の商売”だ。「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の初の成果」。昨年11月に中国政府は、「海のシルクロード“一路”の目玉プロジェクトであるパキスタン西部のグワダル港から、中国製品が初めてドバイに向けて出荷された」と大々的に発表した。新疆ウイグル自治区のカシュガルから、人民解放軍の護衛付きトラックに積まれたコメと建設機械等が2週間かけて運ばれ、グワダル港からスリランカのコロンボ経由でドバイに出荷された。物流の専門家なら“一笑に付す”あり得ない輸送だ。抑々、中国沿海部で生産されたものを態々カシュガルまで長路運んだ上に、治安の悪い地域をトラックで2週間運んだ挙げ句、定期航路に載せ替える為に逆方向のコロンボに運び、ペルシャ湾岸に輸出するという「経済性ゼロの間抜けな輸送ルート」(日本の海運関係者)だ。“一路”は、東シナ海・南シナ海からマラッカ海峡を抜け、インド洋を横断し、ペルシャ湾又は紅海を抜け、スエズ運河経由で地中海に入るというルート。言うまでもなく、半世紀以上に亘って日本や欧米企業が活用し、定着した海上輸送ルートだ。今更中国が投資しなくても、十分なインフラが出来上がっている。一帯一路は、自由貿易の拡大や産業育成といった経済効果ではなく、中国の影響圏の拡大や、南シナ海・インド洋への軍事的進出という国家戦略そのものに過ぎない。問題は、その費用の大半を中国自身が負担することにある。中国が主導する『アジアインフラ投資銀行(AIIB)』、中国の政府開発援助(ODA)、国家開発銀行等政府系銀行が出資する基金、商業銀行の融資、国有企業自身の投資で賄うからだ。

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勿論、建設プロジェクトを受注すれば中国企業に利益は落ちるが、プロジェクトからの資金回収ができなければ焦げ付き債権の山が積み上がり、中国政府が最終的に尻拭いせざるを得ない。その財源は税金だ。例えば、CPECには高速道路・鉄道・発電所・送電網の整備等で、460億ドル(約5兆1000億円)を投資する。中国向けにしか輸送需要を見込めない道路・鉄道が利益を生む筈はなく、「パキスタンでの売電事業が安定収益を生む」と考える無謀な投資家も世界にはいない。中国の銀行・国有企業は無謀な習戦略に動員され、自らの経営基盤を危うくしつつある訳だ。中国の政府系シンクタンク等が予測する一帯一路の投資額は当面、5000億ドル(約55兆円)。奇しくも、2008年に中国政府が発表し、リーマンショック後に需要不足に陥った世界景気の反転・回復のきっかけとなった4兆元(※当時のレートで57兆円)の財政出動に匹敵する。それだけインパクトは大きい筈だが、今回は中国の外での投資だけに、中国景気への刺激効果は間接的に留まる。先月の一帯一路フォーラムに、AIIB参加を拒否する日米も含め多数の国が群がったのは、決して構想の大きさや意義に賛同した訳ではなく、中国の提供する“蜜の甘さ”故である。更に、一帯一路が中国経済に齎す“悲劇”は、投資先の一帯一路の沿線国家でインフラが整い、産業が成長すれば、中国企業にとっての輸出市場が次第に減少し、下手をすれば中国企業のライバルが育ってくる可能性があることだ。中国が投資先として重視するミャンマー、バングラデシュ、スリランカは、既に中国の繊維・陶器・家電から造船まで、中国のライバルとして台頭している。この流れが更に増幅されれば、日本で1980年代に盛んに言われた“ブーメラン効果”そのものとなって、中国を襲うことになる。“中国の夢”・“偉大なる中華帝国の復興”は習政権のスローガンだが、それに自己陶酔して散財し続ければ、歴代王朝と同じ末路を辿ることになる。


キャプチャ  2017年6月号掲載

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