『創価学会』に擦り寄る安倍首相――改憲と長期政権維持への焦り、ネックは婦人部の“安倍嫌い”

20170706 04
会食中に、目の前の相手ではなく別の人のことばかり考えてしまうのは、最初から相手が好きでなかったということだろう。4月24日、総理大臣官邸で公明党代表・山口那津男と昼食を共にした首相・安倍晋三の振る舞いが、まさにそれだった。この日の会談の主眼は、『週刊新潮』による不倫報道で経済産業政務官の職と自民党の党籍を失った中川俊直の件を、連立相手に謝罪することだった。重苦しい筈の会合の最中、どちらが中座したかは定かでないが、山口が視界から消えた短い時間に、安倍は側近に電話した。「谷川さんと会えないか? 親しい自民党議員は誰?」。谷川とは、公明党の支持母体である宗教法人『創価学会』の主任副会長で、次期会長の呼び声高い谷川佳樹のことだ。現会長・原田稔(※右画像)の後任争いで、2015年まで谷川と共にトップを走っていた参議会副議長の正木正明は、多くの政治家と親しく交流していたが、谷川は永田町との付き合いは殆ど無く、表舞台に登場しない“黒子役”に徹している。第1次安倍政権(2006~2007年)発足に際し、創価学会名誉会長の池田大作と会談した安倍にとっても、谷川は遠い存在なのだ。安倍の問い合わせを受けた側近は即答に困り、事情通に問い合わせたが、結局、「自民党に谷川氏と親しい議員はいない」と報告するしかなく、「谷川氏が三菱商事に勤務していた時の人脈を当たったほうがよさそうだ」と助言するのが精一杯だった。会長レースから正木が脱落し、自民党は有力な伝手を失った。後に残された太いパイプは、内閣官房長官・菅義偉と、創価学会副会長で谷川に近い選挙参謀・佐藤浩との間に築かれたものしかなかった。

ところが、東京都議会議員選挙(※7月2日投開票)への対応を巡り、このパイプにも亀裂が入った。都議会公明党が都知事の小池百合子を支持し、小池の実動部隊である『都民ファーストの会』との選挙協力を決めたからだ。無論、この動きに佐藤は深く関わっている。“反小池”の自民党東京都連だけでなく、“小池嫌い”の菅も強い不信と不快感を抱いた。そうした状況で、安倍が創価学会の実力者に近付こうとする理由は幾つかある。第一に、公明党の山口執行部に対する不満である。安倍の返り咲き以降、山口らは安倍の進める政策にしばしば抵抗した。集団的自衛権を巡る憲法解釈の変更、新たな安全保障法制、カジノを解禁するIR(統合型リゾート)推進法、2017年通常国会で与野党が鋭く対立した共謀罪の構成要件を改めてテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案…。最終的には“下駄の雪”になるものの、山口執行部と安倍の溝は覆い隠しようがない。安倍があわよくば在任中に実現したいと考える憲法改正でも同じだ。安倍と山口のケミストリーが合わないこともあり、安倍は事ある毎に「公明党を切って維新と組む」と、改憲積極派の『日本維新の会』に連立相手を乗り換える考えを仄めかしてきた。維新の会をダシに公明党に圧力をかける思惑があるとはいえ、山口との会合の最中に“山口外し”を画策するあたり、安倍が抱いている嫌悪感は強い。ただ、国政選挙で創価学会票への依存を強めている以上、自民党にとって公明党と別れる選択肢は現実的ではない。それより、公明党の中堅・若手には自民党の保守・タカ派と考えが近い議員が多いのだから、彼らを梃子に溝を埋めていくほうが上策で、創価学会の実力者を通じて山口執行部を黙らせることが近道ではないか――。そんな計算が見え隠れする。第二の理由は、安倍自身の危機感の高まりだ。政権を永らえさせる為、菅に頼らない独自のパイプを、創価学会との間に持っておく必要が出てきたのだ。安倍の妻・昭恵の関与の実態が解明されない学校法人『森友学園』を巡る国有地売却問題や、安倍の友人が理事長を務める学校法人『加計学園』に対する国家戦略特区を抜け穴にした優遇疑惑で、政権のイメージは悪化する一方だ。在任4年半を超え、「そろそろ有権者は安倍に飽き始めている」との見方も出てきた。自民党内でも、次期衆議院議員選挙を安倍の下で戦うのが得策かどうか、自問が始まっている。経済成長や内閣支持率に陰りが見えてくれば、予て政策の方向性や理念では安倍とは対極のリベラル色が濃かった菅や自民党幹事長の二階俊博が、“ポスト安倍”の担ぎ出しに動かないとも限らない。そんな局面になった時、“抑止力”になるのが創価学会との関係だ。「菅・佐藤の関係がぎくしゃくしている今こそ、谷川に接近する絶好の機会」と見て、安倍は動いた。

20170706 03
安倍の創価学会へのすり寄りは、先月3日の憲法記念日に際し、従来の主張を変え、「憲法9条1・2項を残したまま、自衛隊の存在を書き加える」との改憲案を提唱したことからも窺える。「2020年までに施行」と期限を設けた点は頗る評判が悪いが、9条1・2項を残す方針を示すことで、安倍の改憲姿勢に警戒感を抱く創価学会を懐柔し、公明党の改憲派が動き易い環境を整える意図が読み取れる。公明党が、既存の条文は変えずに新たな条項を付加する“加憲”方式を唱えてきたのも、現行憲法の役割を高く評価する創価学会への配慮からだ。「憲法9条1・2項を維持することで、現行憲法の平和主義は守られたのだ」と説くことができる。憲法9条2項を改正又は削除し、国防軍の規定を設けるとした2012年自民党憲法改正草案とは違う方向性を安倍が示したことに、自民党内からは「党内論議の軽視」「アクロバティックな解釈を続ける気か?」等と反発する声も上がっているが、安倍が見ているのは公明党ではなく、創価学会の反応である。しかし、パイプ作りの成否は五里霧中だ。谷川にとって、“ポスト原田”から“ポスト池田”への階段を上っていくには、創価学会で影響力の大きい婦人部の支持が不可欠だが、創価学会に燻る“安倍嫌い”の温度が最も高い場所もまた、婦人部だ。安倍との会談が表沙汰になれば、谷川に傷が付きかねない。第1次政権で安倍が池田と会ったことは、官邸がどれだけ否定しても既成事実として組織内に広がったように、安倍が極秘に谷川と会おうとしても、軈て婦人部の知る所となる。そんなリスクを取ってまで、谷川は安倍に会わない――。そんな見方が専らだ。安倍の“片思い”が続けば、盤石に見えた“安倍一強”にも綻びが出る。綻びが齎す安倍と菅、創価学会と公明党が絡む愛憎劇の修羅場に、この政権はどこまで耐えられるだろうか? 《敬称略》


キャプチャ  2017年6月号掲載




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