【労基署ショックが日本を襲う】第2部(03) “働き方地獄”がやって来る! 生産性無き正社員の淘汰

労働時間の規制強化に、職能制から職務制へのシフト――。薔薇色に見える働き方改革も、一皮剥けば労働者を選別する残酷な世界の入り口に過ぎない。会社に胡坐をかく日々は終焉を迎えた。

20170710 06
今春、『ホンダ』の研究開発子会社である『本田技術研究所』では、ある異変が起きていた。突然、管理職にもタイムカードを押すよう人事部から指示が飛んできたのだ。「要するに、ICカードでの出退勤管理ですよね。去年半ばから試験導入して、今年度から完全に義務付け。『あくまで、管理職の労働時間の実態把握が目的だ』と会社は言っているのですが…」(ホンダのあるエンジニア)。勿論、原則として会社は、管理職であってもきちんと労働時間を管理することになっている。しかし、唐突なタイミングでの導入で、社員らには驚きが広がった。「不思議なことに、管理職にも残業代が出るようになりました。といっても雀の涙ほどです。一方で、給料の一部のようになっていた出張手当が削られたのは非常に手痛い。潤沢に付いていた手当がばっさりと切られました」(同)。ホンダの事例は何を意味するか? それは、働き方改革の加速によって、企業だけでなく労働者にも皺寄せが行くという現実だ。“同一労働同一賃金”や“労働時間の上限規制”の法制化を前に、企業が防衛策を講じつつある。従来、時間の縛りなく働いてきた管理職は制限を設けられるようになるし、正社員を優遇してきた手当が見直されつつある。しかし、こうした小手先の企業の反応は、働き方改革の本来の目的である労働者の多様な働き方を置き去りにしたものだ。その為、却って労働者の首を絞めるような事態に陥りかねない。仕事の質や業務量が変わらなければ、いくら労働時間の規制をかけたところで対応など到底不可能だからだ。「決算前の繁忙期なんて、とてもじゃないけど手が足りない。残業時間の規制だけじゃなくて、決算の仕組みを変えるとか、環境からもっと変えていかないと」。ある大企業の経理担当者は頭を抱える。

限られた時間の中で、今まで通りの業務を熟す。働き方改革最大の問題は、生産性向上を謳うものの、その仕掛けが無いまま労働時間を縛り付けることだ。「働き方改革の方向性は正しくても、労働時間の短縮を機械的に行えば、皺寄せは労働者に行ってしまう。本来であれば、雇用の仕組みを変えるところから議論しないといけない」(『日本総合研究所』チーフエコノミストの山田久氏)。それだけではない。今回の働き方改革の目玉となる同一労働同一賃金。その根本にある職能制から職務制への雇用システムのシフトは、労働者にとって大きな逆境になる。抑々職能制とは、会社其々の価値観に基づき、人そのものを焦点として評価する制度のことだ。つまり、年功によって属人的に評価される日本型の雇用システムだ。例えば、同一人物であれば、営業部だろうが総務だろうが、配置転換によって賃金が変わることはない。一方で職務制は、仕事そのものに値段が付けられるヨーロッパ型の雇用システムだ。同じ仕事であれば、基本的には誰しもに同じ賃金が支払われる。例えば、同じ営業部で同じ仕事をしていれば、新入社員であっても年配のベテラン社員であっても、基本的には同じ賃金になるということだ。日本型職能制の基本には、「勤続年数に能力が比例する筈だ」という考え方がある。確かに、長期雇用を前提とした“社内スペシャリスト”を育成する正社員制度は、経済の拡大期には上手く機能した。しかし、今や女性や高齢者等、多様な社員が労働市場に参加するようになった。経済成長が頭打ちとなり、社員の高齢化による人件費の高止まりが企業の経営を圧迫している。職能制の限界が見え始める中、職務制への転換は急務と言われているのだ。扨て、この職能制から職務制へのシフトで何が起こるのだろうか? 端的に言えば、社員の二極分化だ。職務制へのシフトによって、社員は自身の持つ本当の業務遂行能力によって“時価評価”されるようになる。年功序列によって守られていた人事体系は崩壊し、その枠組みにぶら下がっていた社員は淘汰されていくのだ。そこには、高い成果を挙げられる人がより評価される成果主義も紐付いてくる。勿論、生産性が頗る高く、スキルのある社員であれば心配せずともよい。しかし、大方のそうではない社員にとっては厳しい現実が待ち受けている。ミドル層の社員は消え、勝ち組と負け組のどちらかに選別されるからだ。働き方改革の行き着く先、それは生産性向上を目指すことに他ならない。「人手不足と労働時間規制のダブルパンチで、賃金は上げざるを得ない。しかし、本来であれば生産性の向上があって初めて賃金が上昇するのが正常な流れ。その逆である矛盾した現状を解消する為にも、更なる生産性向上は欠かせない」(政府関係者)。働き方改革によって過重な労働が取り払われ、ゆとりある社会になる――。そう思うのは大間違いだ。政府の目指す“1億総活躍社会”は、言ってしまえば労働者に更なる生産性向上と競争を強いる“1億総勉強社会”。自身のスキルを磨き、能力を高めることでしか、最早生き残ることはできない。労働者は、この生々しい現実を受け入れるより他ない。


キャプチャ  2017年5月27日号掲載
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テーマ : 働き方
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