“庶民の味方”という皮を被った守銭奴企業…書籍文化を食い荒らして自滅した『ブックオフ』の自業自得

中古本販売の『ブックオフ』が深刻な業績不振に陥っている。本やCDをはした金で買い取り、その何倍もの値段で売り付けるというボロ儲けビジネスで成長を続けた同社。本やCD市場の縮小に、インターネット通販台頭という逆境の中、果たしてこのインチキ企業に未来はあるのか? (取材・文/本誌編集部)

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“1億総貧困時代”のニーズに合致したビジネスとして快進撃を続けてきたブックオフが、苦境に喘いでいる。今年4月10日、古本・中古家電等のリサイクル販売チェーンで知られるブックオフを展開する企業『ブックオフコーポレーション』が、社長の交代を発表した。これまでの松下展千社長は代表権の無い取締役に退き、後任として堀内康隆取締役執行役員が昇格。経営体制の変更は、「業績の早期回復および企業価値の向上を図るため」だと説明されている。今回の社長交代劇は、ある意味では予想されていたことだった。このところのブックオフは業績不振に苦しんでおり、昨年3月期の決算では、上場以来初めての営業赤字に転落。今年3月期の連結営業損益も、凡そ4億円の赤字になる見通しで、2期連続のマイナスとなる。周知の通り、ブックオフが扱う商品は“中古”に特化している。主力は商号にもなる古本で、CD・DVD・ゲームソフトに加え、古着といったリサイクル商品にも手を広げている。「昨年3月期の決算で見ると、直営店の活字の書籍は前年比プラスになっていますが、コミック販売は横這い。その他の書籍はマイナスです。また、古本に代わる主力商品として力を入れている中古家電においても、買い取りが思うように進んでおらず、先行投資の回収ができなかったことも業績の足を引っ張っている。販売不振は今年も続いており、回復の見通しは不透明なままです」(経済アナリスト)。実際、最盛期には1000店を超えていた店舗数も、今年3月末時点では直営店・FC加盟店に新刊書店を加えても全849店と、明らかに減少傾向にある。「閉店している店の多くは、売れ行きが落ちた為、契約が切れて更新をしなかったFC加盟店ですが、このまま業績が回復しなければ、ブックオフ本体にも影響が出てくるでしょうね」(同)。

昨年の段階では、業績悪化の原因として、「大型店出店による人員の増加と、新規の中古家電販売が不振のため」といった理由が挙げられていた。しかし、実はこうした目先の問題以上に、現在のブックオフが置かれた状況は深刻なようだ。『Amazon.com』に代表されるインターネット通販の勢いが加速し、電子書籍のダウンロードも普及。書籍の中古市場は縮小し、一般に出回る現物も減った為、必然的に同社のベースとなってきた本の買い取りは減少している。「ブックオフが急成長したのは、二束三文で仕入れた古本を、利鞘を乗せて売るシステムを構築できたからです。しかし、今やAmazonのサイトを見れば、安い中古本はいくらでも見つかるし、ヤフオクやメルカリ等のオークションサイトを使えば、個人での売買も簡単にできてしまう。同業他社との競合も激しくなっており、これまでのように店舗展開だけで拡大路線を続けるのは限界にきている」(出版業界関係者)。ブックオフも、こうした状況は百も承知だろう。取扱い商材の多様化やインターネット店舗への進出、更に『ヤフオク!』との連携等の手を打ち、これまでの古本チェーンから、家電を中心とした総合リユース企業への転換を計っている。「その転換が上手くいっていないからこその赤字転落なのですが、不調の根本には、ブックオフという企業が抱える体質の問題があります。急成長した新興企業特有の“歪み”が至るところで噴出し、問題化しているのです」(経済誌記者)。ブックオフの創業は1990年。神奈川県相模原市内に1号店を開設し、翌1991年に会社組織になっている。そこからは破竹の勢いで、2004年には東京証券取引所市場第2部に上場を果たしている。そのアイディアは驚くほどシンプルなもの。仕入れは、従来の古本屋特有のルートからは行わず、商品である古本は客からの買い取りのみで確保する。買い取り値は基本的に定価の1割で、それを店頭に並べて定価の半額で売る。更に、店頭に並べて3ヵ月経っても売れない本は、どれだけ価値があっても100円均一のワゴンセール等で売り切ってしまう。本の価値判定等の単品管理はせず、買い取り査定の基準は“新しさ”と“綺麗さ”の2点のみという斬新さである。消費者にとっても、不要な本を買い取ってくれ、“綺麗で新しい本”を定価の半額で買えるということは大きなメリットだ。それまでの古本業界は、古本の価値に精通した人間だけが手がけることができるプロフェッショナルな世界と見られていた。店舗も挨っぽく、薄暗い店内に古本がうず高く積まれているといった具合で、特に若い女性・主婦層・子供には縁遠い場所だった。「ブックオフは、コンビニのように明るく清潔感のある店内にして、新しい客層を呼び込むことに成功しましたが、これは当時、人気になっていたマツモトキヨシのパクリです。因みに、業務のマニュアル化や社員研修はマクドナルド、フランチャイズ制はセブンイレブンのやり方を参考にしたそうです」(前出の経済アナリスト)。

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“新古書店”と呼ばれるようになったこのシステムのメリットは絶大だった。マニュアル化された簡単なノウハウさえ理解すれば、極端な話、素人やアルバイトだけでも店舗経営を行えるようになる。必要な店舗代や人件費を差し引いても、粗利75%という高収益ビジネスを看板にしたFC制には、それまで出版業界とは関わりの無かった有象無象が続々と引き寄せられていった。実は、古本販売以上にブックオフ成長のベースとなったのが、ブックオフが採用したFC戦略だったと言われている。出版評論家の小田光雄氏が著書『ブックオフと出版業界』(ぱる出版)の中で指摘しているように、FC店舗を1軒出す度に、ブックオフ本部には約1300万円が入っていたという。「殆ど情報商材ビジネスのようなもので、FC店が潰れても本体にダメージは無い。こんな確実な商売はありません」(前出の経済誌記者)。古本というニッチな業界に目をつけ、新しい市場を作り上げたブックオフは、確かにビジネスとしては先駆者であり、革新者であった。しかし、評価された反面、その商法は各方面から猛反発を受けることになる。折からの出版不況もあり、出版社からは「価格破壊」「ブックオフのせいで新刊本が売れなくなった」と批判され、既存の古本屋業界からも総スカン。売れ筋の新刊本を逸早く半額で店頭に並べるブックオフの出店攻勢によって、街角の書店も次々と閉店に追い込まれていった。また、著作権の問題も浮上し、2001年にはさいとう・たかお、藤子不二雄A、弘兼憲史、猪瀬直樹といっ た作家らが所属する『21世紀の著作権を考える作家の会』が会見を開き、「読者が新古書店で本を買っても作家には1銭も入らない」と、ブックオフ商法を厳しく批判した。

「本が売れなくなったのは、決してブックオフだけのせいではありませんが、ブックオフが旧態依然とした再販制度を続けていた出版業界の矛盾につけ込み、本をとことん“商品”として扱うことで成功したのは事実。謂わば、出版業界に寄生して巨大化してきた訳です。音楽産業もレンタルで似たような問題を抱えていましたが、著作権の整理等で新しい時代に対応しました。その意味では、出版業界にも大いに問題があったと言えるし、その課題は現在も解決していません」(前出の出版業界関係者)。ブックオフを語る上で外せないのが、創業社長・坂本孝氏の存在だ。経済誌等で“異能の経営者”と賞賛された坂本氏の経営哲学は、急成長したブックオフのビジネスの根幹を成している。前出のブックオフビジネスのシステムの殆どは坂本氏が考え、作り上げたものである。「坂本氏は50歳でブックオフを立ち上げるまで、様々な事業に手を出してきました。投資家の山本一郎氏は、坂本氏を『立上げ屋として高名で、出資金を巻き上げては色んな事業を立上げ、全部失敗するという偉大な山師』と皮肉っていましたが、漸くブックオフで一山当てたという訳です」(週刊誌記者)。事業の成功によって、マイナス面を指摘する声はかき消された。それどころか、出版業界からの批判にも、「自分たちの経営努力の賜物」「(利益は)出版社ではなく、お客さんが下さるもの」と挑発を繰り返したことで、一部からは“古い体制を破壊する改革者”と賞賛を浴び、カリスマ視されていく。2004年に悲願の上場を果たした坂本は、2006年に創業時のアルバイトから叩き上げた橋本真由美氏を社長に抜擢し、自身は会長となった。「主婦のアルバイトから社長となった橋本氏は、マスコミでも話題になりましたが、その実態は完全な坂本氏のコピー。橋本氏自身、『たとえ犬と言われても私は坂本さんを信じる』と公言して憚らなかった」(前出の経済誌記者)。橋本氏に限らず、坂本氏のワンマン体制の下で成長してきたブックオフでは、坂本氏の言葉は絶対的なものだったという。「社内イベントでは、坂本氏の好きな“ヤングマン”を社員全員が踊らされたそうです。『社員は馬鹿でいい』と公言していた坂本氏は、飲み会等で洗脳に近い“説教”を頻繁に行い、逆鱗に触れた社員は丸坊主にさせられたという逸話もあります。現在のブックオフの幹部たちは、そんな坂本のイエスマ ンになることで出世してきました」(同)。しかし、上場化したこともあって、ブックオフと坂本氏の本性が表面化するのに時間はかからなかった。2007年5月、『週刊文春』が『“デタラメ上場”ブックオフに巨額リベート発覚!』『躍進の裏の“架空売上げ”をスッパ抜く』と連続して、坂本氏のスキャンダルを報じたのだ。「端的に言えば、直営店での架空売上げ工作による“粉飾決算”と、坂本氏が本棚等の備品納入先から総額凡そ7億4000万円のリベートを受け取っていたことが明らかになっています」(前出の週刊誌記者)。これによって、坂本氏は会長辞任に追い込まれ、橋本氏も代表権を返上して会長となっている。

尤も、この時点でのブックオフは、絶対的な権力を持っていた坂本氏や橋本氏の責任をはっきり認めた訳ではなく、大株主である坂本氏の院政が続くと見られていた。しかし、その後も文春の追求は続き、坂本氏の社内セクハラや愛人への不透明な金銭の流れが明らかになる。株主からの反発もあり、最終的に坂本氏は完全に経営から離れ、自身の持ち株も売却するのだが、その株を買い取ったのは、ブックオフを敵対視してきた『小学館』・『集英社』・『講談社』と『大日本印刷』のグループだった。「『他に買われるくらいなら自分たちで…』という防衛的な意図が強かったようです。この同時期、坂本氏は週刊文春に、当時、会長職にいた橋本氏のスキャンダルを売り込んでいます。ブックオフから“追放”されたことが余程悔しかったのでしょう」(同)。因みに、ブックオフを追われた坂本氏はその後、飲食ビジネスに進出。高級料理を低価格で提供する『俺の株式会社』の躍進は、マスコミでも話題となった。「但し、昨年には同チェーンの看板シェフや、システムを考えた幹部が続々と退社しています。坂本氏のワンマンぶりと、過酷な労働が原因だったようです。彼らの下で働く若いシェフたちは、それ以上に厳しい条件でコキ使われており、このシステムが崩壊するのは目に見えていました」(飲食店関係者)。既に1号店である新橋本店は閉店する等、人気は下降線を辿っている。確かに、いいものを安く提供できれば消費者にはアピールできる。だが、坂本氏のビジネスは、“消費者の為”というお題目を隠れ蓑に、従業員や商品の製作者を搾取することで成り立ってきたと言えるだろう。坂本氏が去った後、ブックオフの社長は、『マッキンゼー』出身の佐藤弘志氏、旧『日本興業銀行』出身の松下展千氏、そして今回の新社長と変わっているが、実質的には橋本氏に依存する体制が続いてきた。橋本氏は2013年に取締役相談役に退いているが、現在も社内で大きな影響力を保持している。「袂を分かったとはいえ、橋本氏の経営哲学は坂本氏のDNAを色濃く受け継いでいます。抑々、ブックオフ商法自体が坂本イズムによって育てられたもので、そのモラル無き利益至上主義の手法は限界に来ています」(前出の経済誌記者)。皮肉なことに、モラルの崩壊はブックオフ自身をも追い詰めている。創業時から問題視されていた万引き等の盗品がブックオフに持ち込まれているという問題に加え、近年はブックオフで本を安く仕入れ、インターネット上で適正な市場価格で売って利鞘を稼ぐ“せどり”も盛んになっている。ブックオフ側も、実勢価格に従った買い取りや定価の設定を変更する取り組みを始めており、『ヤフー』との資本提携によって、店舗とヤフオクで併売するシステムも導入。更に、書籍をベースにしつつ、中古家電等の総合リユース事業へのシフトを開始している。社会の格差が広がり、貧困層の拡大が進む中、2兆円規模と言われる中古品の市場自体は、今後も拡大・成長が見込まれている。しかし、ブックオフが市場のトップランナーでいられるかどうかは、これからの舵取りにかかっている。


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