【誰の味方でもありません】(10) 都バスにまつわるエッセイ本の宣伝です

『大田舎・東京』という本を出版した。雑誌『BRUTUS』で連載していた『地上2.3メートルからの東京。』というエッセイを纏めたものだ。高さ2.3mというのは、都バスの車窓の高さ。子供の頃から好きだった都バスに乗って、車窓から見下ろす東京論を書いてきたのだ。地味極まりない連載だったが、数年続けているうちに約80のエッセイが溜まっていた。「そろそろ1冊の本になるか」と思って作業を始めたのだが、ここからが大変だった。通常、本には2種類の作り方がある。全て未発表の文章を載せる書き下ろしと、雑誌等に掲載された作品を纏めるタイプ。どう考えても後者のほうが圧倒的に作業量は少ない。「今回は簡単に本ができちゃうなぁ」と油断していたら、先ず分量が足りなかった。このままだと、岸政彦さんの『ビニール傘』(新潮社)のようなスカスカの本になってしまう。そこで、都バスの乗り下ろしをして、100路線分のエッセイを用意した。できるだけ効率的にバスに乗る為に、タクシーで始発の停留所まで行き、都バスに乗って、終点からまたタクシーで違うバスの始発を目指すということを繰り返していた。本末転倒も甚だしい気もしたが、背に腹は代えられない。だが、いざ全エッセイを読み返してみたら重複が気になる。そりゃ、都バスに纏わるエッセイを100も書いたら、内容も似てしまう。結局、殆ど全路線分、加筆修正をすることになった。

最も難しかったのは、タイトルと、本を貫くテーマである。連載タイトルの『地上2.3メートルからの東京。』では意味が通り難い。“都バス”を全面的に押し出そうと思ったが、過去のバス関連本の売上を調べたところ、いまいち振るっていないことがわかった。そこで、テーマを“東京”に寄せたほうがいいのだろうと、手当たり次第に東京に関する本を読んでみる。様々な気付きはあった。最近の日本論は、「日本は凄い」「兎に角凄い」「本当に凄い」みたいな印象論が多いが、東京論は、きちんと統計等のデータ・歴史・地形に基づいて議論を進めているとかね。ただ、1冊の本を貫通するテーマとしては弱い。そんな相談を友人にしていた時、ふと窓の外を見てみた。場所は青山近辺の路地。高層ビルではなく、民家や低層の雑居ビルが並ぶ景観は、足立区や練馬区と大して変わらないように見えた。そういえば、100のエッセイの中でも繰り返し、「超高層ビルが建ち並ぶ“大都会・東京”は、実際の東京のほんの一部でしかない」という話を書いていた。ここまできて漸く、“大田舎”というキーワードが浮かんでくる。後は速かった。東京を“大田舎”だと考えてみると、色々と腑に落ちることがある。景観に限らず、外国人の少なさや規制の多さ等、東京は排他的な“田舎”そのものだ。『大田舎・東京』は、『新潮社』ではなく『文藝春秋』から絶賛発売中です。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。


キャプチャ  2017年7月13日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR