中国市場で“落伍者”になった『トヨタ自動車』――新エネルギー車規制の衝撃、“EV世界大戦”で広がる差

20170714 10
最近、香港の道路で電気自動車(EV)の『テスラ』が目につくという。『テスラモーターズ』が生産・販売し、日本価格で900万円からの高級EVだが、富豪の贅沢消費とばかりも言えないようだ。大気汚染が激しい香港は、最大で自動車価格の2倍を超える重税を新車登録時に課しているが、今年3月までEVは免税されていた。免税措置が打ち切られてもEVの道路税や年間登録費が安いことや、ガソリン価格が割高で走行距離当たりのコストは電気のほうが低いこと、更には札幌市とほぼ同じ面積の香港全土に1300ヵ所もの公共充電施設があるといったインフラの充実も背景にある。だが、これを“香港だけの特殊事例”と考えるのは間違いだ。「北京や上海といった大都市では、大気汚染対策としてガソリン車の登録を制限しており、手っ取り早く新車に乗るならEVを選ぶしかない」(中国在住の日本人ビジネスマン)という。中国政府は、2018年に更に厳しい新エネルギー車(NEV)規制を導入し、メーカーにEV・プラグインハイブリッド車(PHV)・燃料電池車(FCV)といった新エネルギー車の生産目標を課す。昨年9月に発表した中国政府の規制案では、2018年に中国販売台数の8%、2019年に10%、2020年には12%に当たる台数のEV・PHV販売クレジットの獲得を義務付ける方針だ。PHVを1台販売すれば2クレジット、EVならば航続距離に応じて2~5クレジットを獲得できる。『トヨタ自動車』の2016年中国新車販売は約121万4000台で、同社がEVの量産を始める2020年に同程度の販売を維持する為には、約14万6000クレジットのEV・PHVを売らなくてはいけなくなる計算だ。

トヨタの2016年ハイブリッド車(HV)販売台数は前年の約8倍で、過去最高を記録した。それでも漸く7万1676台で、仮に同台数のPHVが売れても2020年規制には達しないことになる。しかも、「中国の見解では、プリウス等のHVはガソリン車扱い」(トヨタ自動車専務役員中国本部の大西弘致部長)であり、中国のNEV規制に対しては全く手付かずの状態だ。「FCVは、水素ステーションという新たな燃料インフラが必須で、実現可能性が薄い。トヨタが世界市場を制したHVが新エネルギー車から外れたように、PHVもガソリンエンジンを使っている以上、いつまでも安泰ではない。自動車メーカーの選択肢はEVだけだ」と、中国の環境車規制に詳しいシンクタンク研究員は指摘する。流石に“HV一本足戦略”で20年間突き進んできたトヨタも、方向転換した。今年4月の『上海モーターショー』でトヨタ幹部は、「中国でEVを開発し、生産・販売していく」と表明したのだ。トヨタのライバルたちは、その先に進んでいる。同モーターショーの記者発表会では、2025年までに年間100万台のEV世界販売を目指す『フォルクスワーゲン(VW)』のハーバート・ディエス乗用車部門CEOが、「その60%に当たる60万台が中国市場でのセールスになる」と踏み込んだ。『ゼネラルモーターズ(GM)』も2025年までに50万台のEV・PHV販売を掲げている。『日産自動車』や『ホンダ』も2018年に中国でEVを販売する。NEV規制を導入する中国の本当の狙いは、国産メーカーの育成にある。中国政府は、国内で販売するEVに、基幹の充電池を含めて中国製部品の採用を義務付ける。「EVに関連する全ての技術を中国に集めることで、中国車メーカーに主導権を握らせようとしている」と、前出のシンクタンク研究員は明かす。中国は、2016年の販売が40万9000台という世界最大のEV市場。成長率では総自動車販売の13.7%増に対し、EVは65.1%増と5倍近い伸びだ。中国国内には200社ものEVメーカーが乱立し、「これから政府主導でEVメーカーの再編を進め、最終的に比亜迪汽車(BYD)始め数社の大手メーカーが、本格的なEVを量産することになるだろう」と、前出のシンクタンク研究員は予想する。これまでトヨタは、「HVからPHVを経てFCVへ移行する」次世代エコカーモデルを提唱してきたが、あくまで建前。「トヨタにとってFCVは、EVを『実用的ではない』と攻撃する為の当て馬。来る筈もないFCV時代をちらつかせて、HVの延命を画策してきた」と、自動車業界の環境対応に詳しい専門紙記者は指摘する。ところが、NEV規制を前に、「FCVこそ究極の次世代エコカー」という建前をかなぐり捨て、昨年12月に社内ベンチャー“EV事業企画室”を立ち上げたばかり。量産開始は2020年だ。

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前出のトヨタ幹部は、「グループのダイハツ工業は、2000年以前からEV開発に取り組んでおり、トヨタでも小型シティーコミューターEVを生産している。他社に比べてEV開発が遅れているとは考えていない」と強調する。が、トヨタの開発担当者は、「HV中心のエコカー戦略に取り組んできたトヨタにとって、EV量産は苦渋に満ちた決断だった」と明かす。これから中国でのEV量産を始めても、既に先行するライバルや、政府から優遇される中国メーカーを相手に、後発のトヨタが販売台数を伸ばすのは至難の業。仮に、2020年に中国でEVが5万台しか売れなかったとしたら、最悪の場合、トヨタの中国販売は2016年実績の凡そ3分の2となる83万台に制限される。トヨタとしては、「EV化が遅れているアメリカからの外交的な圧力で、NEV規制が緩和、又は先送りされることに期待をかけるしかない」(前出の専門紙記者)状況に追い込まれている。しかし、こうなることはとうの昔にわかっていた。VWや『BMW』等のドイツ車メーカーがEVのラインナップ充実に熱心だったのは、中国市場を睨んでのこと。「地元のヨーロッパは省燃費ディーゼル車、中国ではEV」と棲み分けを図ろうとしていたのだ。一方のトヨタは、「日本も中国もHVだけで乗り切れる」と高を括っていた。NEV規制が愈々現実味を帯びてきたことで、漸くEV開発に重い腰を上げた格好だ。だが、章男社長は未だに「今後の自動車産業の重要な鍵を握るのは自動運転や人工知能(AI)」と、EVには言及していない。「社内には今も『HVで十分戦える』と考える社員も多く、この期に及んでも未だEV参入反対の声も聞かれる」(前出のトヨタ開発担当者)状況で、EV戦略が予定通り進むか不透明だ。中国でスタートの号砲が鳴った“EV世界大戦”。準備万端なライバル勢とトヨタとの差は広がるばかりだ。このままでは、“トヨタが土俵に上がる前に勝負がついている”状態になりかねない。


キャプチャ  2017年6月号掲載




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