国債投資し難く運用の壁に…公的年金、新型運用を始めた“ひそかな”理由

20170718 16
厚生年金や国民年金等、公的年金の積立金約145兆円を運用する『年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)』が、“ESG投資”と呼ばれる新たな手法に取り組み始めた。ESG投資は、環境(E)への配慮、社会(S)的な課題への取り組み、企業統治(G)に優れた企業を選び出して運用をするもの。GPIFはこれに基づいて、先月末までに既に1兆円を日本株に投資しており、今後数年で3兆円程度まで増やしていくという。ESG投資は欧米で先行しているが、日本ではこれから。GPIFの高橋則広理事長は、「ESGは長期的に価値を増大する企業への投資。収益も期待しているし、相場全体が下がった時に歯止めになるとも考えている」と、長期的な収益拡大が見込める点を強調する。しかし、GPIFの運用を別の側面から見ると、ESG投資には高橋理事長の説明とは異なる役割が透けて見える。背景にあるのは、GPIFの運用が今、曲がり角を迎えていることだ。2012年末に第2次安倍政権が誕生して以後、GPIFは運用方針を大きく見直した。

それまでは資産の内、60%を国内債券、11%を外国債券、国内株と外国株に12%ずつを投じていたのを、2014年10月以降は一転。国内株と外国株に其々25%ずつ、国内債に35%、外国債に15%と、リスクを取る運用に大きく舵を切ったのである。株式の比率を高めたことで、運用成績の変動幅は大きくなった。全資産の総合収益率は、2014年度に12.27%と大幅プラスになったが、翌2015年度は3.81%のマイナスに転落。2016年度は5.86%のプラスだった。また、“成長企業でなくても株価が上昇する”という歪みが、一部銘柄に目立つようになってきた。国内株に投じる資金の約9割を株価指数等に連動するよう、広く薄く投じる方法を採っている為だ。運用方針の転換から2年半以上が経過し、環境は大きく変わった。2016年度末時点で、日本株比率は23.28%に達し、基本ポートフォリオの上限である25%に近付いてきた。一方、嘗て運用の中心だった国内債は31.68%。基本とする35%を割り込んでいる。日銀のゼロ金利政策で「国債投資がし難い」(高橋理事長)為だ。適当な運用先が限られるようになった結果、総資産に占める現金比率が上がっている。運用は1つの壁にぶつかったのである。ESG投資は、GPIFの試算でも、TOPIX(東証株価指数)連動型の運用より0.39ポイント上回る程度と見込まれ、実際には然程高くはない。ただ、“優良企業への選別投資”という名目で、運用の壁を越える“口実”にはできる。GPIFには、状況に応じて国内株の比率を基本の25%から9%分増減できるルールもある。ESG投資で国内株を拡大できれば、増やせない国債投資の“代替”になるし、「市場に歪みを齎している」との批判も躱せるという訳だ。新型投資には、こんな側面も窺える。 (取材・文/本誌主任編集委員 田村賢司)


キャプチャ  2017年7月17日号掲載
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