【平成の天皇・象徴の歩み】(07) 森づくり、3代の願い

20170719 01
「校庭の一隅に、1坪でもいいから、種を蒔き、苗を植え、樹木を育てるようにしたらいいのでは?」――1997年5月、宮城県白石市で『全国植樹祭』に臨まれた天皇・皇后両陛下と関係者との昼食会。天皇陛下は、植樹行事で一緒になった子供たちが、苗木を植えたり、種を蒔いたりした経験が無いことを耳にされた。「学校の授業が忙しく、森に連れて行く時間が無い」という説明に対し、自身の考えを示された。陛下が提案されたような試みが、全国で広がっている。2006年に植樹祭が開かれた岐阜県では、学校教育の中で森や緑の大切さを体験させようと取り組んできた。陛下は式典のお言葉で、「若い力が森林づくりの活動に加わっていくことは、非常に心強いことです」と、この試みを歓迎された。森が国土の3分の2を占める日本。大戦中の資材確保や、戦後復興による木材需要の高まりで、戦後、過度な伐採が繰り返された。“荒れた国土に縁の晴れ着を”をスローガンに、植樹祭の前身である『植樹行事ならびに国土緑化大会』が始まったのは1950年のことだ。植樹祭の60年記念写真集には、帽子に背広姿で鍬を手にした昭和天皇が、荒れた山肌にヒノキを植える姿が残されている。

昭和天皇は、国体と共に大切な行事として、植樹祭への出席を重ねた。緑化運動が高まり、日本の森が甦ると、森を守り育てる必要が生じ、1977年に全国育樹祭が誕生した。昭和天皇が植えた木々を手入れする役目は、当時、皇太子だった陛下が担われることに。育樹祭で斧で枝打ちしたり、鋸で間伐したりする行事が定着した。そして、昭和天皇の崩御後、植樹察は陛下、育樹祭は皇太子さまに受け継がれた。毎年5月、緑化運動の功績者を表彰する『みどりの感謝祭』は、秋篠宮さまが出席されている。「森や木は1世代では育たない。祖父が植え、父が育て、また子供が植えていくものだ。昭和天皇から今の陛下、そのお子さまと受け継がれてきた行事は、緑を育もうとする日本の姿勢を象徴している」。植樹察を主催する『国土緑化推進機構』専務理事の梶谷辰哉さん(65)は、そう語る。植樹祭には近年、新たな視点も加わってきている。今年5月の富山県での式典で、林業と漁業を体験した中学生が、「森と海を一緒に保全していくことの大切さに気付いた」と発表した。科学者でもあり、海と森の環境が一体であることをよく知る陛下は、県知事らとの昼食会で、「森を守ることと海づくりを一体的にやるのは良いことです」と喜ばれたという。来年の開催地・福島県へのリレーセレモニーでは、皇居で採取した種から育てた落葉高木・エノキの苗が、福島県知事に渡された。東日本大震災で津波に呑まれた沿岸部に植えて、海岸防災林を甦らせるという試みだ。陛下にとって最後になるかもしれない次回の式典は、お見舞いや視察を通じ、心を寄せられてきた被災地が会場になる。「両陛下がお手植えされる姿は、大震災からの復興の新たなシンボルになるに違いない」と関係者は話している。


⦿読売新聞 2017年6月21日付掲載⦿
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