【霞が関2017夏】(07) 財務省、崩れた“順送り”人事

財務省が今月4日に発表した幹部人事は、主要ポストが入省年次順に順送りで決まる慣例が崩れた。所謂“サプライズ”の象徴が、主税局審議官の矢野康治氏が“将来の次官ポスト”と言われる官房長に就いたこと。昼も夜も人事を話題にする財務官僚たちは、思わぬサプライズに自分のキャリアを見つめ直している。一番の“サプライズ”と受け止められた官房長とは、霞が関の役所では他省庁との折衝や省内の人事の責任者となる重要なポストだ。財務省では佐藤慎一前次官や、新たに次官になった福田淳一氏も務めている。財務省の官房長経験者は、1999年に就いた林正和氏以降、11代連続で次官になっている。新たに官房長になった矢野氏は、菅義偉官房長官の秘書官を務めた。直言も辞さぬ熱血漢で、菅長官の信頼は厚い。2年間の主税局審議官時代は、消費税の軽減税率や、所得税の配偶者控除の見直し等の難局で局内を纏め、佐藤氏が高い評価を下したとされる。先月27日には、財務省のホームページで「どうやって社会の会費を集めていくか、これは誰が政権を担っても、誰が悪い訳でもなく、避けて通ることのできない重苦しい日本の課題」と思いを吐露した。予算を統括する主計局畑から次官を輩出するのが基本の財務省で、2016年に佐藤氏が35年ぶりに主税局長から次官になった。福田氏の次の次官は岡本薫明主計局長が有力だ。ただ、今回の人事でその次が読み難くなったとされる。本命は、総括審議官から理財局長に就いた太田充氏。今春に官房長就任との見方が多かったが、「森友学園の問題や国債管理政策等を抱える理財局の体制を強化する為に局長に就いた」との解説もある。来春に太田氏が理財局長から主計局長に就任すれば、岡本氏から太田氏、その後に矢野氏という流れができる。一方、来年春には、首相秘書官を務める中江元哉氏(※1984年入省)が財務省に戻ってくる可能性が高い。安倍晋三首相の信頼が厚い中江氏は、「主計局長や主税局長等の有力ポストに就く」との見方がある。仮に、中江氏が主計局長に来春就任すると、岡本氏の次は中江氏の流れになる。

審議官級でもサプライズが相次いだ。1つが、主計局次長に、金融庁に出向していた神田真人氏が就く人事だ。神田氏は、『経済協力開発機構(OECD)』コーポレートガバナンス委員会の議長も務める国際派。主計局での経験もあるが、国際局が長い。“将来の財務官候補”とまで言われるが、昨日から教育無償化等で揺れる教育分野の予算等を担当する。財務省では、内政派と国際派の間で、人事ルートが事実上分かれているのが伝統的だった。今春は、神田氏以外でも伝統を崩す人事が多発。主計局で予算全体の企画を担う企画主計官も務めた阪田渉文書課長が、国際局審議官に就く。一方、国会対応等を担う文書課長には、国際局開発政策課長の三村淳氏を抜擢する。ある幹部は、今回の人事の狙いについて、「ポストで人を評価するのではなく、仕事の中身で評価するというメッセージだ」と語る。財務省は、ある主要ポストに就くと、次の主要ポストを歴任する“順送り人事”で、順当に次官候補者を作ってきた。順送りを敢えて崩し、競争を活性化する狙いが透けて見える。内政と外政の人事統合にも狙いが見える。財務省の麻生太郎大臣は外務大臣も経験し、常日頃から「これからは国際局の時代」と語ることが多いとされる。日米経済対話等、内政と外政に跨る重要案件もあり、“オール財務省”での体制作りを進める。本流の主計局では、嘗ては自民党の族議員とのパイプが強まる農林や公共事業の予算担当が、次官への登竜門と言われた。最近は、予算規模が膨らむ社会保障予算が重要視されている。その社会保障の予算が絡み、「消費増税以外に財政再建の道は無い」とも言われる財務省では、税制を担う主税局の存在感が相対的に高まりつつある。財務省の人事は、世の中の状況も表しているとも言える。2度の消費増税の先送りで、省内は沈滞ムードも漂う。更に、安倍首相の経済ブレーンから財政出動への積極論が飛び出し、財政再建の道は荒波が押し寄せる。只でさえ激しい官僚の出世競争に、更に競争を持ち込んだ財務省の取り組みは、吉と出るか。 (飛田臨太郎)


⦿日本経済新聞電子版 2017年7月8日付掲載⦿
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