【すれ違う米中】(上) ほころぶ“ディール”

米中関係が俄かに軋み始めた。核・ミサイル開発を止めない北朝鮮への対応を巡り、其々の思惑がすれ違う。安全保障と経済が絡み合う両大国の結束が乱れれば、世界は一層不安定になる。

20170720 07
アメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談を翌日に控えた今月7日、アメリカは敢えて中国を刺激する行動に出た。「航行の自由を確保する」。アメリカ軍は、中国が主権を主張する南シナ海の上空に、2機の『B1B』爆撃機を派遣した。中国が直ぐに「我が国の主権と安全を損なう行為に断固反対する」と反発したのは、言うまでもない。4月にトランプ大統領がフロリダ州の別荘に習主席を招き、「我々の相性は凄くいい」と結束を誇ってから僅か3ヵ月。翌8日に再会したトランプ大統領と習主席は、北朝鮮への対応を巡る溝を埋められず、ぎこちない笑顔を見せるだけだった。中国が北朝鮮への圧力を強める代わりに、アメリカは中国に経済面で手心を加える――。4月のトランプ大統領と習主席の会談では、こんなディール(取引)が交わされたとされる。アメリカは約束通り、中国を為替操作国に指定するのを見送った。しかし中国は、アメリカが期待していた石油供給の停止といった厳しい措置に踏み込まない。北朝鮮は4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の成功を宣言した。

「中国と北朝鮮の貿易は、今年の第1四半期に40%も増えた。米中の連携なんてこんなもんさ!」。翌5日、トランプ大統領は自身のツイッター上で、中国に矛先を向けた。中国は国連決議に基づいて、2月に北朝鮮から石炭の輸入を禁じる一方、4月には鉄鉱石の輸入を前年同月比で4.4倍の約2000万ドルに増やした。北朝鮮が喉から手が出るほど欲しい外貨を、今も供給している。アメリカは先月、「北朝鮮の核・ミサイル開発に関わった企業と取引した」として、中国の『丹東銀行』を制裁対象にした。「北朝鮮の取引を助ける中国の銀行は他にもある」と疑いの目を向ける。アメリカには苦い記憶がある。習氏が国家主席に就いたばかりの2013年春、国有の『中国銀行』は北朝鮮の貿易決済を一手に担う『朝鮮貿易銀行』との取引を停止した。だが、抜け穴だらけで、北朝鮮に流れる外貨が止まった形跡は無い。北朝鮮がその後も核・ミサイル開発を続けられたのは事実だ。国際金融筋は、「中国の銀行は、アメリカの市場から締め出されないように、北朝鮮との取引を隠している」と話す。「アメリカは軍事行動に踏み込めない」と見透かす中国は、北朝鮮との対話路線を掲げてロシアに接近する。在韓アメリカ軍への『地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)』の導入で関係が冷え込んだ韓国との連携も探る。アメリカに打つ手は無いのか? 「貴男がしてくれたことに感謝する」。トランプ大統領は8日、習主席に対北朝鮮での協力を改めて求め、中国への不満は口にしなかった。だが、いつまでも我慢し続ける保証は無い。安全保障と経済をディールするという嘗てない賭けに出たトランプ大統領が、中国から北朝鮮問題で何も得られなかった時の対抗手段は残されている。経済だ。世界1、2位の経済大国がいがみ合えば、グローバルに広がる影響は計り知れない。 (中国総局長 高橋哲史)


⦿日本経済新聞 2017年7月11日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR