【ビジネスとしての自衛隊】(09) 北朝鮮によるミサイル発射、標的は日本ではないがミサイル防衛は不可欠

20170720 09
北朝鮮のミサイル発射や核実験を巡る朝鮮手島情勢を受けて、今にも日本がミサイル攻撃されるかの議論は、若干冷静さを欠いているように見える。それは、北の挑発的行為は全てアメリカに向けたものだからだ。北朝鮮によるミサイルや核開発は、アメリカと対等な立場で対話をしたいが為だ。「休戦状態にある朝鮮戦争を終結させて、アメリカと平和条約を締結することで、自分の体制を保証してもらう。それには、核大国であるアメリカとパリティー(対等)でなければならない」と北朝鮮は考えており、そこには日本の存在感は無い。いきなり北朝鮮からミサイルが日本に向けて飛んでくる可能性は極めて低い。在日アメリカ軍や日本が攻撃対象になるのは、第2次朝鮮戦争が始まって国連軍が創設され、北朝鮮にとって国連軍基地となる在日アメリカ軍基地からの増援や、後方支援を防ぐ必要性が高まった時点と考えるのが軍事合理的な見方である。ノドンミサイル200発は、20年前から日本を照準にしている。射程1000~3000㎞の準中距離弾道ミサイル『ノドン』と『スカッドER』は、前者を200~300発、後者を100~200発ほど保有していると言われ、中東等に売られている既に戦力化された完成品だ。昨年9月、今年3月と日本海の排他的経済水域(EEZ)付近に数発纏めて着弾させたのは、この2種類で、兵士用の実務的な“発射訓練”を日米韓に対する政治的恫喝としても利用している。但し、あらゆる最悪の事態を想定するのが安全保障だ。ミサイルが日本に飛んで来ないとは言えない。アメリカに向けた開発中の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が、能力不足で日本に落ちてくる可能性もある。それに備えるのがミサイル防衛(BMD)だ。BMDの要は、海上自衛隊のイージス艦4隻と、地対空ミサイル『PAC-3』の18セット。現在、日本海には海上自衛隊のイージス艦が、市ヶ谷の防衛省内にはPAC-3が常時配備されている。

北朝鮮から飛来するミサイルは、BMDでほぼ打ち落とせる。ただ、“複数且つ同時着弾”を企図して発射されたミサイルだと、イージス艦が撃ち漏らす可能性も否定できない。北朝鮮のICBMは、前述した2種類のミサイルとは違い、未だ開発途上だ。液体燃料型と固体燃料型の2種類を開発しているとみられ、液体燃料による“エンジン試験”は成功したようだが、実際に“発射実験”をしたことはない。例えば、射程3500~4000㎞の中距離弾道ミサイル『ムスダン』は、以前からその存在が喧伝されてきたが、実際に発射が確認できたのは昨年だ。だから、8発中1発しか“発射実験”は成功しておらず、未だ開発中と言えるが、液体燃料型ICBMは、このムスダンのエンジン2基を合わせたものと言われている。また北朝鮮は、昨年8月に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の『北極星1号』発射実験を行ったが、これは将来の固体燃料型ICBM開発の為とみられる。SLBMではミサイルを装填・発射する、コールドローンチできる発射筒の開発が重要だ。北朝鮮は1990年代初頭、ロメオ級潜水艦を旧ソビエト連邦から購入したが、発射筒は売却してもらえず、最近、その技術を手に入れた。今年2月の実験は、この発射筒と同型ミサイルを車載して行った。現在、500~1000㎞を飛ばせ るようになったが、アメリカ本土を狙うなら9000~1万㎞飛翔可能な固体燃料を開発する必要がある。北朝鮮は、これまで液体燃料によるICBMの開発を進めてきたが、その基となるムスダンの信頼性が低い為、固体燃料型ICBMの開発も進めているようだ。固体燃料は燃料注入の必要がなく、常時保管も容易だ。秘匿性・残存性・即応性が高いICBMとして、アメリカに大きな脅威となるだろう。北朝鮮のミサイル対応には、前述のBMDのようにイージス艦で十分だろう。アメリカ海軍は、神奈川県横須賀市に12隻のイージス艦を配備。これに海上自衛隊の艦が現在4隻、今後、BMD対応へ改修中の2隻が加われば、6隻体制となる。有事となれば、日米合わせ18隻のイージス艦が事態に備えることになる。これに『イージスアショア』という陸上型のイージスシステムを保有すれば、護衛艦部隊の負担も軽くなる。実は、イージス艦をBMD用に1ヵ所に常時張り付けておくことは、海賊対処や東シナ海での監視行動等、他の実任務に支障を来す。実任務に従事している間は、防火や対潜戦等の“訓練”ができない為だ。護衛艦部隊の将来的な運用能力や個人練度を落とさない為にも、イージスアショアの導入が必要だ。また、自衛隊による先制攻撃や、敵地攻撃の可能性が取り沙汰されている。憲法上、先制攻撃は許されていない。飛んでくるミサイルを払い除けるだけでは「限が無い」と判断された場合、その発射基地を攻撃する敵地攻撃は「座して死を待つものではない」の範疇だ。しかし、敵地攻撃の手段を現在の自衛隊は持たない。有効な手段は射程1000㎞の巡航ミサイル『トマホーク』だが、これをアメリカはイギリスだけにしかリリースしていない。アメリカが日本にトマホークを売却するか、保有したとしても具体的にどのような場合に敵地攻撃ができるのかは、今後の課題だろう。BMD以上に今の日本に必要な議論は、国民保護の具体葉だ。2004年に成立した国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)を基に、具体的な国民避難・保護がなされるかどうかは疑問だ。今年3月、秋田県男鹿市でミサイル攻撃に備えた訓練が実施されたが、保護計画やシェルターといった施設の設置等の具体的議論が先決だと考える。 (金沢工業大学虎ノ門大学院教授 伊藤俊幸)


キャプチャ  2017年5月13日号掲載
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