【試練の安倍外交】(上) 日中、対北で隔たり

安倍首相は、今月7~8日の『主要20ヵ国・地域(G20)』首脳会議に合わせて訪問したドイツのハンブルクで、各国首脳と会談を重ねた。学校法人『加計学園』を巡る問題や閣僚の失言等、政府・自民党への世論の風当たりが強まる中、「外交に活路を見い出したい」との思いは強い。試練に立つ安倍外交を検証する。

20170721 01
今月8日に行われた日中首脳会議で、中国の習近平国家主席は安倍首相にこう提案した。「政治的な課題は1つひとつ解決していかなければならないが、両国の経済関係発展の妨げになってはならない。過去を直視しつつ、経済関係を発展させていこう」。習主席の狙いは、沖縄県の尖閣諸島を巡る対立等、難題を抱える政治から経済を切り離そうとするもので、“政経分離”とも言える提案だ。日中両国は、政治と経済を両輪として、課題解決に向けて協力する“戦略的互恵関係”の推進で一致している。第1次内閣当時の安倍首相が、2006年に胡錦濤国家主席(※当時)に提案した考え方で、2008年の日中共同声明に盛り込まれた。しかし日中両国は、日本政府による2012年の尖閣諸島国有化をきっかけに関係が悪化。その後も関係改善には至っていない。首相は8日の首脳会談で、習主席肝煎りの巨大経済圏構想『一帯一路』に協力する意向を直接伝え、習主席は歓迎した。日本政府高官は、「先ずは経済関係を強化し、日中関係全体の改善に繋げる」と意気込む。だが、経済先行で政治面が置き去りにされることへの懸念もある。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応では、“圧力”を唱える首相と“対話”を重視する習主席の隔たりは大きいままだ。北朝鮮の核・ミサイル開発が着々と進み、核弾頭を搭載した弾道ミサイルを朝鮮労働党の金正恩委員長が手中にする悪夢とも言えるシナリオが現実味を帯びている。だが、北朝鮮経済に強い影響力を持つ中国の動きは鈍い。「アメリカも韓国も、挑発するような行為は抑制しないといけない。北朝鮮との対話のポイントを探るべきだ」(習主席)、「いつか対話に持って行くべきだと思っている。しかし、今は圧力を強化すべき時だ。中国も協力してほしい」(安倍首相)。8日にハンブルクで行われた日中首脳会議。習主席は米韓合同軍事演習を槍玉に挙げつつ、北朝鮮との“対話”に固執し、圧力強化を訴える首相との溝は埋まらなかった。

その後の米中首脳会談でも北朝鮮問題が重点的に話し合われたが、ドナルド・トランプ大統領が一層の圧力を求めたのに対し、習主席は対話重視の姿勢を崩さなかった。外務省幹部は、「在韓アメリカ軍と直接対峙したくない中国にとって、北朝鮮の持つ地政学上の意味は大きい。現体制の崩壊は避けたいというのが本音だろう」と解説する。それでも、日本政府は「北朝鮮の核・ミサイル開発阻止には中国の協力が不可欠」とみており、対中関係改善を図る考えだ。「北朝鮮の脅威に曝される中、沖縄県の尖閣諸島周辺等、東シナ海で睨み合う中国からの圧力を軽減したい」との思惑もある。日中首脳会談自体は、関係改善に向けた双方の意欲が滲み出るものとなった。冒頭、握手を交わす両首脳の背後には、日中の国旗があった。過去の2人の会談では、国旗が記念撮影に写る場所に配置されたことは無く、「会場を準備した中国側の関係改善へのメッセージ」(日本政府高官)だった。ただ中国は、習指導部が2期目に入る中国共産党大会を今秋に控え、急激な対日融和に舵を切ることは容易ではない。日本にとって、対北朝鮮包囲網に中国を積極的に関与させることが喫緊の課題だが、中国との関係改善に努めること以上の手だてが見つかっていない。「北朝鮮とは、対話の為の対話では全く意味がない」。安倍首相は6日の日米韓首脳会談で、韓国の文在寅大統領に言い聞かせるように語った。文大統領が模索する対話路線が日米韓の結束を乱し、北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねないことへの危機感からだった。文大統領は「韓米日の足並みを乱すようなことはしない。圧力強化に賛成する」と同意したが、「条件が整えば、北朝鮮が暴発しないよう、対話に入るべきだ」と付け加えることも忘れなかった。北朝鮮問題での連携維持に向け、首相は文大統領との信頼関係構築を試みている。7日の日韓首脳会談では、首相が「早いうちに日本に来てほしい。そうすれば文大統領のファンも増える」と呼びかけ、文大統領は「(来年2月の)平昌冬季オリンピックに合わせて韓国に来てほしい。韓国国民が熱烈に歓迎する」と応じた。玄界灘を隔てて向かい合う山口県下関市と韓国南東部・釜山市という互いの地元の交流にも話題が及んだ。だが、日韓関係には慰安婦問題が棘としてなお刺さり、ソウルと釜山に設置された慰安婦を象徴する少女像は、撤去の見通しが全く立っていない。首相が2015年の慰安婦問題を巡る日韓合意の履行を重ねて求めたのに対し、文大統領は韓国の厳しい国民感情に触れたものの、「この問題には時間が必要だ。焦点を当てないでほしい」と要望し、持論である“日韓合意の再交渉”も持ち出さなかった。日本政府内には、文大統領が慰安婦問題を蒸し返すことへの懸念も燻るが、外務省幹部はこう語る。「南北融和に傾きがちな文政権を、日米韓の枠組みに繋ぎ止めておく為、当面は慰安婦問題で衝突する訳にはいかない」。


⦿読売新聞 2017年7月13日付掲載⦿
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