【試練の安倍外交】(中) アメリカと蜜月、潜む危うさ

20170721 02
8日の日米首脳会談でも、予測不能の“トランプ流”は相変わらずだった。安倍首相らがハンブルクの国際会議場の一室に入ると、ドナルド・トランプ大統領と共に真っ赤なジャケットに身を包んだメラニア夫人の姿があった。夫人が首脳会談に同席するのは極めて異例だが、メラニア夫人は会談終了まで席を立たなかった。日本側出席者の1人は、「外交儀礼を知らないのだろうか?」と首を捻った。日本側は会談前、北朝鮮問題について首脳同士がじっくりと語り合う腹づもりだったが、トランプ大統領が放った想定外の一言で流れが変わった。「日米の間には貿易赤字の問題がある」。トランプ大統領がこう切り出すと、同席したウィルバー・ロス商務長官がすかさず、「特に自動車貿易は不均衡だ。日本市場には非関税障壁がある」と畳みかけた。首相は、麻生太郎副総理とマイク・ペンス副大統領による『日米経済対話』を念頭に、「ウィンウィン(共存共栄)の経済関係を一層深めていく為に議論していきたい」と躱したが、アメリカは『環太平洋経済連携協定(TPP)』交渉の際も、日本独自の軽自動車の規格や車検制度等が「アメリカ車の輸出を阻む非関税障壁」と主張してきた経緯がある。首相官邸は今夏の霞が関人事で、協議を切り盛りする外務審議官に山崎和之官房長、経済産業審議官に柳瀬唯夫経済産業政策局長を充てる他、浅川雅嗣財務官を留任させた。何れも麻生氏の首相秘書官経験者で、「麻生氏が交渉に臨み易いように固めた日米経済対話シフト」(政府高官)とも言える。

トランプ政権がTPP離脱を決めたのは、「2国間の自由貿易協定(FTA)のほうが、アメリカにより有利な条件を引き出せる」と判断したからだ。日本政府内では、「日米経済対話で、日米FTAを強く求めてくることを覚悟しなければならない」と警戒感が広がっている。型破りなトランプ大統領に距離を置く各国首脳が目立つ中、首相は「トランプ大統領のようにオープンで率直に話すタイプは気が合う」と意に介さず、トランプ政権発足から半年足らずで3回の直接会談と7回の電話会談を重ねた。「ドナルド」「シンゾウ」と呼び合う首脳間の信頼関係は“過去最良”とも指摘されるが、ここに来てトランプ大統領の危うさが改めて露呈している。北朝鮮政策の迷走はその一例だ。トランプ大統領は、バラク・オバマ前政権の“戦略的忍耐”を失敗と断じ、「全ての選択肢がテーブルの上にある」として、武力攻撃を辞さない覚悟を示唆。4月に巡航ミサイルでシリアを攻撃した直後には、「トランプ大統領なら本当に北朝鮮を攻撃しかねない」(日米関係筋)との観測も広がった。しかしその後、閣僚が軍事行動に消極的な発言を繰り返し、トランプ大統領自身も「条件が整えば彼(※朝鮮労働党の金正恩委員長)に会うだろう」と述べる等、政権の姿勢は定まっていない。こうした情勢を見越してか、北朝鮮は今月4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切った。8日の米中首脳会談では、トランプ大統領が習近平国家主席に北朝鮮への経済的な締め付けを要求したが、不発に終わった模様だ。日本政府高官は、「確たる外交・安全保障政策が無く、場当たり的な対応に陥っている」と指摘する。トランプ大統領は、政権を巡るロシア疑惑等で厳しい批判に曝されている。そんな中、“アメリカ第一”を掲げ、TPPや温暖化対策の国際的枠組み『パリ協定』からの離脱を打ち出し、内向き志向を強めている。首相は、5月の『主要国首脳会議(サミット)』等国際会議の場で、孤立気味のトランプ大統領と各国首脳の“橋渡し役”を担ってきたが、トランプ大統領への冷ややかな視線が首相に向かう懸念もある。首相は、トランプ大統領との蜜月関係を梃子に、内向き志向を軌道修正させることができるかどうか? その役割は重い。


⦿読売新聞 2017年7月14日付掲載⦿
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