【試練の安倍外交】(下) 北方領土の進展、依然遠く

20170721 03
先月30日早朝、色丹島に船で到着した日露両国による北方領土の“共同経済活動”に向けた官民調査団一行の目に飛び込んできたのは、桟橋の建設現場に書かれたハングルだった。桟橋建設には韓国企業が参加していた。日本政府関係者は、「『日本が北方領土に投資しないなら他国に頼めばいい』というロシアのメッセージだ」と感じ取った。共同経済活動は、昨年12月の日露首脳会談で協議開始を合意した。戦後70年以上進展の無かった領土交渉の扉をこじ開けようと、安倍首相が昨年5月に打ち出した“新しいアプローチ”の柱だ。対象事業の候補には観光や漁業等が挙がっているが、ロシア側は“ロシア法の下での実施”を基本に協議を進める方針とみられ、日露双方の法的立場を害さない“特別な制度”の設計は容易ではない。ハンブルクでの日露首脳会談前日の今月6日、極東開発担当のユーリ・トルトネフ副首相が、「北方領土をロシアの経済特区に指定する」と表明し、日本に揺さぶりをかけた。進出企業は税制面等で優遇される為、外国企業を誘致し易くなる。「共同経済活動を巡る協議が長引けば、日本抜きで開発を進める」という“脅し”とも取れた。翌7日に行われた18回目となる首相とウラジーミル・プーチン大統領との会談では、特区指定問題も議題に上った。共同経済活動の支障になりかねない為、首相は「それは受け入れられない」と言い切った。プーチン大統領は回答を避けたが、両首脳のズレが浮き彫りになった。

領土問題解決に向けた機運は、一時期の高まりを見せていない。首相は昨年5月の首脳会談で、領土問題解決に向けた交渉の呼び水として、エネルギーや極東開発等“8項目の経済協力プラン”を提案。“戦後外交の総決算”として意欲を燃やしたが、昨年12月に山口県にプーチン大統領を招いた首脳会談では、領土返還に繋がる成果は得られなかった。これは、国際情勢も大きく影響していると言えそうだ。2014年のクリミア併合により、国際社会から孤立したロシアは、「日本を取り込み、アメリカ主導の包囲網に穴を開けたい」との思惑があったとされる。だが、昨年11月のアメリカ大統領選で、対露関係改善に意欲的なトランプ氏が当選し、風向きは変わった。日露関係節は、「プーチン大統領の日本に対する熱が冷めた」と指摘する。トランプ大統領就任後も米露関係は好転していないが、プーチン大統領の領土問題解決への意欲は盛り上がっていない。北方領土が返還された場合、日米安全保障条約に基づいてアメリカ軍が展開することへの懸念を、繰り返し発信している。外務省幹部は、「北朝鮮情勢の緊迫で、朝鮮半島周辺でアメリカ軍が活発に活動していることに神経を尖らせているのだろう」と推察する。それでも日本側は、「来年3月のロシア大統領選でプーチン大統領が再選を果たせば、大胆な決断は可能」と期待をかける。プーチン大統領は9日、ロシアを訪問した旧知の森喜朗元首相と会談し、北方領土問題を含む平和条約締結交渉について、「『安倍首相と2人で解決したい』という気持ちが強まっている」と語った。首相は第2次内閣発足以降、最大の危機に直面している。東京都議選で歴史的な惨敗を喫し、学校法人『加計学園』問題等で批判を浴び、内閣支持率は大きく落ち込んだ。外交を梃子に立て直しを図りたい考えだが、その道は険しい。首相は8日、自らを鼓舞するように『Facebook』に書き込んだ。「戦後70年以上の懸案である(日露)平和条約交渉を前進させていく。首脳同士の深い信頼関係のもとに、1つひとつ結果を出していく決意だ」。

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宮井寿光・仲川高志・向井ゆう子・比嘉清太が担当しました。


⦿読売新聞 2017年7月15日付掲載⦿
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