【中外時評】 対米不信、ロシアの言い分

「彼はこの問題で、1つではなく数多くの質問をしてきた。私は可能な限り応じ、全ての疑問に答えた」――。今月7日、ハンブルクの『20ヵ国・地域(G20)』首脳会議に合わせて開かれたドナルド・トランプ大統領との初の米露首脳会談。ウラジーミル・プーチン大統領は会談後、ロシアによるアメリカ大統領選挙への干渉の有無が議題となったことを認めた。初顔合わせとあってか、会談は2時間15分に及んだ。シリア南西部の停戦合意等、一定の成果はあったものの、焦点となったのはやはり、サイバー攻撃を含めた昨年のアメリカ大統領選を巡るロシアの関与疑惑だったようだ。トランプ大統領も会談後、自身の『ツイッター』で真っ先に、「私はプーチン大統領に2度、『我々の選挙にロシアが干渉した』と強く主張したが、彼は激しく否定した」と指摘している。疑惑は抑々、「米露関係改善に前向きなトランプ氏をアメリカ大統領選で支援すべく、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けた」というものだ。当時のバラク・オバマ大統領は昨年末、在米大使館等に勤務するロシアの情報機関職員35人の国外追放等の制裁措置を発令。米露関係は一段と冷え込んだ。そのアメリカでロシアの期待通り、トランプ政権が誕生したのに、米露の初の首脳会談の主題が関与疑惑だったというのは、何とも皮肉な話だ。当然、関係改善の機運も遠退く。両首脳は「サイバー空間の安全対策で協力する」としたものの、トランプ大統領は「実際にできるとは考えていない」とツイッターに記した。アメリカ国内では大統領の娘婿、更には長男にもロシアとの共謀疑惑が浮上しており、大統領としてもロシアに甘い態度はみせられないのだろう。ロシアでも首脳会談後、「これまで見送ってきたオバマ前政権の対露制裁への対抗措置として、近く約30人のアメリカ人外交官の国外追放等に踏み切る」との情報が流布。ラブロフ外務大臣は、「具体的な対応策を検討中だ」と表明した。

嘗て、トランプ氏の当選を望むような発言をしていたプーチン大統領自身、「アメリカの基本的な政治路線は変わらない」とし、「誰がアメリカ大統領になろうがどうでもよいことだ」と語るようになっている。冷戦終結から四半世紀以上経ったというのに、米露は何故、“新冷戦”とも言える相互不信に陥ったのか? 一方的に悪者扱いされるロシアにも当然、言い分がある筈だ。その意味で参考になるのが、先月中旬にアメリカで放映された『ザ・プーチンインタビュー』だろう。映画監督のオリバー・ストーン氏が数年間に亘って重ねたプーチン大統領へのインタビューを基に制作した番組で、大統領によるアメリカ国民向けのメッセージとも言えるからだ。大統領はこの中で、「アメリカのほうがロシア大統領選に介入した」と言明。特に、自身が首相から大統領に復帰した2012年の選挙は、「激しい干渉があった」と述べた。アメリカの外交官たちが反体制派を結集して財政支援をし、様々な反体制派の集会に参加していたという。更に、対米不信の象徴として挙げたのが、ソビエト連邦崩壊後も存続し、東方へと拡大を続ける『北大西洋条約機構(NATO)』だ。「NATOはその存在を正当化する為、外部の敵を必要としている」とし、軍事的脅威には「ロシアとしても相応の措置を取らざるを得ない」と主張した。NATOを巡ってはソ連時代、米ソの政府間で「東方に拡大しない」との密約があったのは事実だと確認した。同時に、その合意を「文書で確定しておくべきだった」と語り、公式文書が存在しないことも認めた。また、プーチン大統領自身が嘗て、ビル・クリントン大統領(※当時)に「ロシアがNATOに加盟する案はどうか?」と打診したエピソードも明らかにしている。プーチン大統領の言葉の端々には、「冷戦後も一貫して敵国と見做してきたアメリカの対露観が、今の相互不信の根源にある」との認識が窺える。勿論、アメリカ大統領選へのロシアの関与が事実なら、決して容認できない。とはいえ、アメリカの対露政策の過ちを棚に上げ、一方的にロシアを非難するだけでは、関係改善の道筋は一向に見えてこない。 (上級論説委員 池田元博)


⦿日本経済新聞 2017年7月20日付掲載⦿
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