【儲かる農業2017】(18) 農家が潤う農協へ原点回帰…『みっかび』と『兵庫六甲』の共通点

全国には654もの地方農協がある。金融事業に依存してきた農協の生存競争が、これから幕を開ける。生き残る為のキーワードは“原点回帰”――。農家が儲かる農協へ立ち返ることだ。

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静岡県西部の旧三ヶ日町は、高級ミカンの産地として広く知られるようになった。『JAみっかび』の後藤善一組合長は、業界きってのアイデアマンとして知られる。兎に角、話題作りが上手いのだ。2015年秋には、『三ヶ日みかん』が、果実としては第1号となる“機能性表示食品”の認定を受けた。これにより、「三ヶ日みかんは骨の健康に良い」と堂々とアピールできるようになった。「絶対に一番で認定を取りたかった」と後藤組合長が言うように、メディアによる宣伝効果も抜群だった。『サントリー』と組み、ご当地ハイボール『三ヶ日みかんハイボール』の普及にも汗をかいた。取り扱う飲食店は、静岡県を中心に1400店舗に上り、三ヶ日みかんの知名度アップに繋がっている。“ミカンの皮で作った動物などの作品”を纏めた工作絵本の企画を『小学館』に持ち込み、書籍化にこぎ着けたのも後藤組合長だ。三ヶ日の地名が表に出る訳ではないが、親子で楽しめる“皮むき工作”は、美味しく食べるだけではない蜜柑の魅力を引き出し、顧客層拡大に繋がっている。アイデアを連発する後藤組合長が目指すのは、“農家の為の稼げる農協”だ。「普段は“JA”という言葉は使っていなくて、“三ヶ日町農協”と名乗っている。私自身が一農家だし、農家の寄せ集めなんだから」(後藤組合長)という。JAみっかびの強みは、少数精鋭の農家で高収益を上げていることだ。和歌山や愛媛等の競合地域は、“産地県”がブランドになっている為、栽培農家のレベルにばらつきが出てしまう。蜜柑農家が約800戸という小規模農協だからこそ、プレミアムブランドに相応しい品質が維持できる。最上位ブランド『ミカエース』は5㎏5000円。強気な値付けに、消費者の人気が表れている。

JAみっかびの2016年度の売上高は、100億円の大台を突破する見込みだ。ラフな計算にはなるが、蜜柑農家1戸当たり、平均で1200万円以上を売り上げていることになる。全国の農協が金融事業に依存する中、JAみっかびの本業(※販売と購買の合計)の構成比は約5割。「将来的に7~8割にするのが目標。農協なのだから農業で稼ぐのは当然だ」(同)という。JAみっかびの事務所は、お世辞にも立派とは言えない。建物の老朽化が進み、玄関近くの床が剥がれているが、「お金を生まない場所の修繕は後回し」(同)なのだそう。その代わり、蜜柑の選果場等、“生きる投資”は惜しまない。選果場では、光センサー選果機が1秒間で蜜柑6個分の“身体検査”を行っていた。糖度と酸味のバランス・大きさ・見栄え等で6ランクに分類され、次々と段ボール箱に収められていく。農家にとっての“評価の公平性”と、選別・棚包作業の効率化を同時に実現した最新鋭設備だ。最近、若手の農家が剪定技術やIT設備を競うように導入し、組合員で情報共有しながら互いに切磋琢磨しているという。“農家の為の稼げる農協”という原点回帰の方針が若手にも浸透し、三ヶ日みかんのブランドを支えている。原点回帰の波は、都市型のJAへも押し寄せている。兵庫県の『JA兵庫六甲』は、宅地開発のブームに乗り、住宅ローン等の金融事業で高収益を上げてきた。だが、低金利時代の到来と農家の高齢化で状況は一変。農業へ回帰する戦略へ舵を切った。JA兵庫六甲の農業部隊である『ジェイエイファーム六甲』を訪れると、20代の若者とベトナムからの実習生らがキャベツを収穫していた。神戸市は嘗てキャベツの有力産地だったが、競争に敗れ、300haあった作付面積は100haまで激減。農家の高齢化で衰退の一途を辿っていた。そこで農地の引き受け手になったのが、『ジェイエイファーム六甲』だ。設立から未だ3年だが、経営規模は受託農地も含めると210haに上る。キャベツは『王将フードサービス』の『餃子の王将』等に出荷。スイートコーンは都市型農協の立地を生かし、畑を消費者に開放して収穫してもらう。ジェイエイファーム六甲の松井紀之総務部長は、「良質な農地ばかりではないが、農地を保全できなければJAの存在意義が無い」と話す。政府主導の農協改革やJAグループの自己改革を待つまでもなく、地域農協が“本来のあるべき農協の姿”へ回帰する取り組みが活発化している。

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■旧態依然とした殿様体質…JAに独占禁止法違反の疑い
自立経営へ舵を切るJAがある一方、JAと農家との間で独占禁止法上問題になる行為が多発している実態が、“担い手農家アンケート”で分かった。ある農家は就農する際、「JAから融資を受けたのだから、農機はJAから買え。でないと、この地域で農業をできないようにしてやる」とJA役員から脅されたという。アンケートでは、「過去5年で、JAが融資を行う立場を振り翳して、(融資で不利益を受けることを仄めかす等して)事業利用を強制してきたことがあるか?」と聞いた。すると、何と97人が「はい」と答えた。これは独禁法違反が疑われる行為で、“告発”に近い回答だが、岩手県には、この告発が4つも寄せられたJAがあった。同じ岩手県でも、利用強制を通報する仕組みがある『JA岩手ふるさと』は、告発がゼロだった。JAの役員による職員への教育等で、利用強制は減らせることの証しだろう。他県の農家は、「JAは米農家には融資しないのに、畜産には億単位で貸している。飼料を高く売れるからだ」と回答。別の養豚農家は、「融資を受ける際、競合より1~2割は高い全農系の飼料を使うように言われた」と不平を漏らした。改正農協法には、JAの理事の過半数を、担い手農家や農産物販売のプロにすることが明記された。今後、こうした役員が増え、利用の強制が無くなることが期待される。しかし、改革を志してJAの経営に参画した農家は苦戦している。ある若手農家は、JAが立ち上げた改革の為の有識者委員会のメンバーになった。だが、議論の最中、理事の過半数を担い手農家らに変えるルールに例外があり、その例外が適用できることが判明。途端にJAの改革意欲が萎んで、委員会は有名無実化したという。JAに染み付いた殿様体質を内部改革から拭い去ることの難しさを物語っている。


キャプチャ  2017年2月18日号掲載

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テーマ : 経済・社会
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